〜第17話 勇者の思惑〜

「ほ、本当にこれで大丈夫なんですか?」


そう疑問を聞いてきたのは先ほどまで戦っていた吸血鬼の少女だった


「あぁ、大丈夫だーーー多分」


「本当に大丈夫ですか?!」


なぜこうも言われているか

まず依頼報告はどうするか、から言うと凶悪な吸血鬼は居なかったと言うことにするつもりだ

結果的に天位魔法の使い手を放任してしまうことになるのだが、それには理由がある

決してこの少女が可愛いからではない....いや、1割.....5割くらいあるかもしれない


「ーーこの動きずらい服で私が悪ではないと証明できるんですか?」


そう、今彼女が来ているのは一見どこかの貴族の令嬢かと思う服装である

ユニクッコロにて買ったものだが買う際に「おや、お客さんもう二人目ですか最近の若者は凄いですね〜」とニヤニヤしながら言われてしまった....まだ一人目も居ないよ、ちくしょう


「あいつは....昔のことだがちょっと特殊な趣向しゅこうがあってな、その方がいいんだ」


「特殊な趣向ーーー?」


こう見ると吸血鬼の少女ではなくただの美少女に見える

それもかなり少女系の.....うん、ロリだ


「よし....部屋に入るからそろそろ降りてくれませんか?シアさん」


俺はそう先ほどからコアラの様にくっ付いているシアに懇願した


「ーーーイヤです」


「えぇ....」


なんでこうなったか、あの後シアに声をかけたら抱きつかれて泣かれた

心配してくれたのだろう、実際死にかけたし俺に非があるのだろう

でもさ、吸血鬼の少女と話していたらコアラ化したんだよ?ドウイウコト?


「嫉妬だろ」と思った君!嫉妬とは好意を抱いている相手にするものだ、

そもそも好意を抱く場面がない、第三者から見たら分かる通り今の所俺が単にプロポーズしている図になってしまっているーーーあれ?俺やばいやつじゃない?


「ま、まあいいか....それでは入るぞ」


どうせサキに「おや?さすが勇者サマ、次々と侍らせてますね」と言われるだけだろう



「ーーおぉ!帰ってきたかカルストール......」


最初は無事か?と言う顔をしていたサキだが、だんだんニヤニヤしてそう聞いて来た


「勇者サマ、結婚式はどこで行うんです?」


「ぶっ飛ばすぞ?」


それともなんだ、ここでエルフ式の挙式ができるのか?


「まぁ冗談...ではないが」


冗談じゃないのかよ、え?


「んで、その子は?まさか討伐目的の吸血鬼じゃないだろうな?」


ーーそうサキは殺気を放った


「....もちろん違うぞ?まず始祖魔法の使い手と言っていたがあれが始祖魔法は見当違いだし、そもそもこの吸血鬼は元魔王軍最高幹部ではなかった」


「ーーーそうか」


そういうと、腕を組み吸血鬼を観察し始めた

おそらく危険がないか診てるのだろうが....1割くらい下心がある気がする


「一応聞くが、野放しにしていいことがあるのか?」


「....この子はとあるエルフに復讐心を抱いているようなんだが、そのエルフが厄介でな」


「ーーーなるほど」


説明が足りない気がするが俺が成り行きで助けたわけではないとわかったのだろう、頷いてくれた


「そもそもこちらのミスだったな...てっきり始祖魔法かと思っていたのだが、それほど強くないようだ....その仇のエルフも好きにするといい」


「?!つ、つまり復讐していいと言うことか?」


「あぁ」


「相手はシンイ魔法を使えるのだぞ?もしかしたら戦いの途中で国が滅ぶ可能性が」


「神位魔法ーー?あぁ、そういうことか....お主も悪のよう、勇者!!」


「....」


つまりこういうことだ、神位魔法の使い手のエルフはとても危険分子であるが探している暇はない、そのためこの少女に捜索と討伐をして貰おうと言う算段だ。

クズのように見えるが彼女も復讐を望んでいるのでこれが最善だろう


「まぁ、一応依頼は達成できたことだし報酬は渡しておく」


「ーー討伐していないんだし別にいらないぞ?」


「受け取っとけって....結婚するなら資金はいくらあっても困らないし....どうせあと何人かと結婚するんだろうしな」


「ーーなんて言った?」


「け、け、結婚?!」


小声で聞き取れなかったがそれほど重要でもなさそうなのでいいか



「別に強制するわけじゃないんだしそんなに驚かなくてもいいぞシア」


そう、夕日のように赤くなったシアに言った....が


「黙れ鈍感勇者」


「ひどくない?!」


なぜかサキからそう言われてしまった


「ほれ、5白金貨だ」


「ーーありがたく受け取っておくよ」


報酬ももらったし、もしかしたらシアは眠いのでは?と言う仮説が立ったので部屋を出ようとしたところでふと疑問に思った


「ーーーお前、幼女趣向はどうした?」


「.....あの時はまだ若かったのさ」


やっぱり治ってたか....どうやら不治の病ではなかったらしい


「今も若いくせによく言うよ」


そう言い捨てて部屋を出るのだったーーーーーーーーーーーー

いや、作戦が上手くいって良かった、吸血鬼に令嬢の格好をさせなくても良かったのだが........




―――――――――――――――――


A 次回で第一章終了です!


Q あれ?シアとの関係進んでなくないですか?


A 第二章一話にて進みますから


Q 次はヒロイン2人出るんですよね、わかります()

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