〜第13話 吸血鬼を討伐せよ!!〜

「ここがその吸血鬼が確認されたところですか?」


「そうみたいだな...町跡地、確かにここなら潜伏せんぷくしやすい」


サキから依頼を受けた翌日俺は吸血鬼討伐、シアは途中まで着いてきて良いという約束をして町跡地に来ていた


え?気絶していた時に何も起きなかったのかって?

何も起きてませんよ?

ーーこれで良いはずなのに名残惜しい様な....なんだろうこの気持ちは....恋かな?


という冗談はさておき約束の途中まで来た


「さてここまでだな...シアはここで待機して何かあったら伯爵邸まで戻ってサキに伝えといてくれ、あいつはあれでもしっかりとした領主だからな」


そういうと、シアは細い目で見てきた


「何言っているんですか、必ず無事に戻ってきてください」


「そ、そうだな...ごめん....絶対に帰ってくるから待っていてくれ」


「ーーはい」


こうしてみると夫婦みたいだな....そう考えると頬がゆるんでしまう

それを見られるのは恥ずかしいため早足で歩き出した



「ーーAh Gott, das heilige Schwert in meiner Handーー{聖剣召喚}」


そう詠唱し空間から出てくるのは白と黒を基調とした美しい聖剣

それを手に持ち走り出す


実はもう気配察知により大体の場所は把握しているが、サキの情報通り人間に危害を加えない吸血鬼か見極める必要がある


「そこにいるんだろ?出てこいよ」


そう声をかけると少しした後に何もない空間から一人の少女が出てきた

始祖魔法の一種だろうか?

一見可愛らしい少女に見えるが赤い瞳に鮮血の様な髪色、まぎれもなく吸血鬼だ


「ーーーあなた、その魔法は何?」


「ーーーさぁな、それよりお得意の始祖魔法は使わないのか?」


「.....あなた200年前にも居た?」


そう言われてドキリとしてしまう


「ーーーだとしたらなんだ?」


「ーーそう」


納得した様に少女は頷くと手を大空と広げた


「やっと会えた」


そう可愛らしい笑みを浮かべた少女だったが、背筋が凍ったのを感じた


「ーーー?」


その瞬間、空気が変わるのを肌で感じた

おそらく逆鱗げきりんに触れたのだろう、話の内容からして200年前に何かあった様だが...


「ーーI vampire Thoroughly sanction dwarf humans,ーーー」


そう詠唱が始まり、天に巨大な魔法陣が一つ浮かび上がる


「おいおい」


その神々しさに思わず引いてしまう


「ーーこれのどこが始祖魔法だよ」


魔法陣とは通常地上に存在するものだが、天に魔法陣を描くことは今の魔法技術では神域に近い

魔術の心得がある者ならわかるだろう、この少女がまるで自分より絶対的な存在であると体で感じてしまう


「ーーGod, you made the wrong choiceーー」


そう長い詠唱が終わり、空が赤く染まった


そして、まるで破壊の女神の様な少女は冷酷に告げた


「{神へ之反抗}」


「ーーっ!」


とんでもない威力のマナを感じすぐさま防壁用の魔法を詠唱する


「ーーOh großer Gott, bitte beschーーーー」


が、詠唱が終わる前に肌に熱を感じたーーーーーー




<Side シア>



エルアに言われて少し経った頃でしょうか

中位の聖霊魔法までしか扱えない私でも肌で感じるほどのマナの移動を感じました


「ーーっ」


どうやらマナは一点...エルアが先ほど向かって行った場所に集まっている様です


「ーー」


エルアが大魔法を発動しようとしているのでしょうか?

エルアが扱う魔法は私には全くわからないのですが、その威力から始祖魔法かと思っていますが....前に魔族と戦った時よりも多くのマナを集めている気がします


「ーーーエルア」


私はそう彼の名前を口にしました

....私にとって彼はなんでしょうか?

奴隷になりかけた私を救ってくれた人?それともただ感謝の念を抱いている人?

それともどちらでもないのでしょうか?


最初に見た時は普通の人間と違い、変な人だと思いました

エルフ族の耳を見たら普通の人間は魔物の様だと口にします

正直最初は好奇心だったかもしれません、元々好奇心で家を飛び出したのですから普通とは違う人間と会うと好奇心がき出てきます


それでも、今は好奇心ではない気がします


こうして考えている間にもマナの濃度は上がり、生物はおびえてしまいます

実際私も足が震えています


「ーーー!!」


もう一度エルアが向かった方をみると空一面に広がる赤い魔法陣を見つけました


「そ、そんな...」


魔法を心得ているものなら誰しもわかる様な圧倒的さ、御伽話おとぎばなしでしか聞かない「天空の魔法陣」


「え、エルアーー」


確信しました、これはエルアが発動している魔法ではない....と


そう思った瞬間足が自然と走り出します


「ーーっ!」


それでも途中ですくんでしまい立ち止まります


「あ、あぁ」


誰でもわかるこの恐怖...近寄るべきではない、と本能が危険信号を送っているのがわかります


「ーーうっ」


それでも歩き出すのはなぜでしょうか?

心配だから?

なぜ心配なのでしょうか?

救ってくれたから?それに恩を感じているから?


違う....違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う


そんなありきたりな理由じゃない

エルアが言っていた恋心というのだろうか

お母さんが前にお互いにかれて、共通の時間をたくさん共有すると恋に落ちるものだと、言っていた


まさにそうなのだろう

洋服店で可愛いと言ってくれたとき、里にいた時の言葉の何よりも嬉しかった

彼が気ぜ....寝る時、隣にいる時何よりも安心できた

彼が別のと話すとき、モヤモヤした

彼が私から少しでも離れているとき心細くなった

彼と話すとき、幸せだった


彼が一人で吸血鬼と立ち向かうとき、心がめ付けられた



「ーーーっっ」


急にマナが逆流し、周りがほんの少し赤くなるのを感じた刹那


....

数百メートル先だろうか赤く染まった何かが地面をえぐり上げ、大爆発が起こった


「あ、あ、あぁ」


これは明らかにエルアが発動した魔法じゃない

どんなに凄腕の魔法師でもこの攻撃を無傷で受けることは不可能だろう


それでも...私は走り出したのだったーーーーーー



―――――――――――――――――


Q いやぁ、恋じゃなくて依存っすシアさん...というか主人公終わったクネ?


A 終わりましたね、ワンチャン無傷で次の瞬間には吸血鬼倒されてるかもですけど


Q なにそのチート主人公....

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