第9話 いいにくいこと。
この度、婚約することにしました。
この一言がただひたすらに重い。
「別にさらっと言えばいいんじゃないか? おまえら早く付き合えとか言っていたし」
すでに同居中の婚約者はそう軽く言ってくれるけれどね……。
「そうなんだけどね。だけどね」
私は頭を抱えた。従妹は、婚活中なんだよぉっ。
従妹が上手くいかないと嘆きながら、相手を探しデートもし、そろそろ次の段階か? というところでつぶれること10回!
呪われてんの? と虚ろな目で呟いたり、私に魅力がないってことぉ!? とそこそこ落ち込んでいたのを見ていた身の上としてはさ……。
気まずい。心底、気まずい。
そして、呪われてるのもあながち間違いではないというか……。
初恋の呪いである。
異世界から意図せずやってきた我々は、男子専門寄宿舎で生活していた。私は教師もどきとして、従妹は厨房のお菓子担当として、三年ほどいたのである。
最近知ったことによると、思春期真っ盛りの10~17歳男子には20歳くらいのちょっとお姉さんな我々が眩しかったそうだ。恋しちゃったそうだ。
え? うそぉと笑い飛ばしたかったのに、婚約者どころか学園長もマジな顔だった。
……うそぉ。
あんな年ごろの子を男ばかりで住まわせておくの良くない。変な性癖生みそう。
おそらく、年上のお姉さんの呪縛はながーく響きそうなので、ああ、うん、ごめん? という気分である。
私はまあ、早い段階から現婚約者とそのセット扱いされておりまして、憧れで済んでいたらしい。
済まなかったのは従妹のほうで……。
お菓子のお姉さんが婚活ですって!? ありえない! と結託して潰されたというのが本来のアレである。それも最近知った。次したらバラすと宣告してあるので大丈夫と信じたい。
あの可愛いように見えた生き物もちゃんと狩猟生物であったのだなと感慨深い気もする。
そんな従妹もようやく、デートしてくれる相手を見つけたがお友達以上にならんのなんで?と首をかしげている。
なんか5~10歳くらい年上と言っていたから、相手が気が引けてるように思えるのだが、どうだろうか。
という従妹に婚約報告……。
「一緒に行く?」
「一人で偵察して考える」
そんな偵察があんな勝負に化けるなんて想定していなかった。
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