第3話 新たな犠牲者
再び地上に出た俺たちは、とりあえずさっき俺がユウジに襲われた交差点へと向かった。
「なん……ですかこれは……!?」
そこには、地面に転がる複数のウニのような遺体。恐らくユウジによる襲撃だろうが、アイツ……堕ちるところまで堕ちたな。
「武岡……」
一応俺は武岡っぽい身長が低いウニに手を合わせる。別に仲良しって程ではなかったが、前水さんの前だからとりあえず好感度をあげておこうと思う。
「さーてと。さっき言ってたアナライザーを見つける方法なんだが」
クリスは両足と拳に電撃を纏っていく。危険を察知したのか、セイは直ぐに身構えた。それを見て、俺も咄嗟に自身の後頭部へと手を当てる。
「シャクナゲ!!!!」
瞬間、クリスはその場から消えた。いや、ボクには見えていましたけどね。クリスは他の奴らの目にも止まらぬ早さで地面を蹴り、コンマ数秒で本部の顔面を殴り飛ばした。もしも前水さんに飛びかかってきていたら間違いなく俺が止めに入ったが、本部なら全然許容。むしろ邪魔だったからありがとね〜〜〜。
「コスモスゥゥゥゥゥ! タンポポッッタンポポォォォォォオオオオ!」
「や、やめっ……やめてくださいクリスさん!」
本部は顔面を陥没させながらも、必死で抵抗する。しかしクリスのパンチは止まらない。クリスの記憶には、あの男の言葉が染み付いていた――――
――――やめろクリス!!!!
それでも俺はやめなかった。永田を止められるのは俺しかいなかったからだ。そして、涙を流すのはこれで終わりだと決めた。俺は永田の生前の望みであったアナライザー殲滅の意思を継ぐ。だから俺はこの場にいる全員を殺す。アナライザーを全滅させるその時まで――
「だ、誰かなる者! クリスなる者を止めるんです! でないと本部なる者が死んでしまう!」
「ちげぇよ」
一筋の雷の様に、否定が諏訪なる者の脳裏を駆け抜ける。セイが否定を行った時、既に本部の体は動きを止めていた。
「死んでる……!?」
「コウヤくんっ!」
諏訪が呆気に取られている中、前水さんはクリスに向かって走り出していた。勝ち目なんて無いのに。いや知らんけど。俺の見たところによると、クリスはボクより強い! が、前水さんをみすみす見殺しにする訳にはいかないッ!?
「次はお前か前水ゥゥゥゥゥ!」
「……やれやれだな。"ちげえよ"」
「!?」
前水さんは死を感じ、ギュッと目を瞑った。俺と諏訪は体が竦んで動けなかったんだ。しかし、セイだけは違った。どの肯定、否定よりも強く脳裏に刻まれた否定。
その言葉は、クリスの動きを止めただけで留まらなかった。クリスは天地がひっくり返るほどの否定を受け、声にならない声を上げつつどろどろと地面に溶け落ちていった。
「クリスの全細胞を否定した」
そう宣言すると、セイの左目はクリス同様泥水のように溶けて頬を伝う。
「え、セイ君……何が……!?」
「……俺の否定には相応のリスクが伴う。大きすぎる否定は時に己自身をも否定することになる。だが左目如き、お前の命に比べれば安いものだ」
「だからって……! もっと自分の体を大切にしてよ……!」
「それは前水なる者さんもですよ! セイなる者さんが否定しなければ前水なる者さんが死んでいたんですからね!?」
「そっすよ前水さん」
賛同しておくが、とりまセイがうぜぇ。前水さんに心配されてんじゃねえぞカス。お前さえいなかったら俺が余裕でクリスを殺してたのによ。イキんなブス如きが。
殺しちゃうよ〜〜〜?
すると、脳に直接声が流れ込んできた。
『ヤルネェ! まずは一体目撃破ダ! アーーーーー!』
残り4体か。そういえばセイの左目が潰れた事により生存者の確認が出来ないじゃねえかカス。
本部も死んだし、俺的にはさっさとセイと諏訪なるブスを殺して前水さんとちゅっちゅっをしたい所なんだが。
「……ここで立ち止まってても仕方なくないっすか。とりあえずどこかに身を潜めて作戦会議するとか」
「それもそうですね。クリスなる者さんのような危険人物が他にもいるっぽいですし。一旦さっきの拠点に帰るのも……いや、もう拠点で過ごすのもアリですよ」
「いや、それはダメだよ」
天使のような優しい否定。俺の脳裏には恋の否定が駆け巡り、心臓にまで突き刺さった。
「な、なぜダメなのですか前水さんなる者さん?」
「だって、もう2人も犠牲がでてるんだよ。短い間だったけど、一応仲間だったんだよ。クリス君は結局アナライザーだったけど、敵だったとしてもそこに絆はあったと思う。セイくんも私を庇って大怪我を負ってる。だから、ここで退くことはできない。犠牲になったみんなのためにも、この戦いを一刻も早く終わらせないとダメなんだよ」
前水さんは瞳に涙を浮かべている。すると、遠くで爆発音がした。
『アーーーーー! 残り3体! ヤルネェ!』
アナライザーの声……。爆発という事はユウジではないことは確かだ。
「ほら、他のみんなも逃げずに戦ってる。だから私たちも、進まなきゃダメなんだよ」
「マジそれっす」
「く……稲村なる者さんまで……」
「無理に来いとは言わない。足手まといは少ない方がいいからな」
「…………ああもう! わかりましたよ! 私なる者もついていきます! 腹括ったんですよ!」
「ありがとう、諏訪ちゃん。そうと決まったら、他のみんなを探しに――――」
前水さんが振り返った瞬間。前水さんの胸元を光の一閃が貫いた。
「ピピピピピー! オゥイ! 命中やばいて! バケモンじゃん!」
「え。あの距離当てたの。すご。」
「ちょ、突然すぎるよ! 向こうの人達困ってんじゃん」
「そうね。流石に早計すぎるわ」
丸メガネのバケモン、純粋にキモいやつ、メガネ以外特徴ないやつ、美人。
俺はすぐに前水さんへと駆け寄った。大丈夫だ、まだ息はあるっぽい。前水さんは丸メガネのバケモンを見て、息を吐くように言葉を絞り出した。
「アオ……シロ君……」
「ダイチッ!?」
「シュンスケなる者……?」
「
両者の間に迸る緊張。波乱を想起させるッ!?
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