ドラマーIN US#6サニーサイド3

矢野アヤ

第3話 別れの会

 預け先の家で、薬を誤飲し亡くなったライリーのメモリアルサービスが、死亡後二週間を過ぎてから執り行われた。

 会場となったゴルフクラブの広間には、ライリーの好きだったミニーマウスと、パステルカラーの風船や花が賑やかに飾られていた。正面の大きなスクリーンには、生前の愛くるしい姿が次々と映し出され、沢山の写真が飾られている。

 オードブルが並び、バー・カウンターではバーテンダーが来場者の希望を聞き、お酒を振る舞う。盛大なバースデー・パーティーのようで、ご家族のライリーへの愛情を感じ、居た堪れない。だが、肉親や親族の姿を見かけないまま時間が過ぎた。

 食事とドリンクを勧めるアナウンス以外何もないまま、一時間半が経つ。その後短く、ライリーの母親の友人によるお別れの言葉と、歌が捧げられた。

 そのまま二時間余りが過ぎ、帰る人がちらほらと出始める。夫と私も会場を出た。そこで、素足に薄着で、化粧っ気のないジェニファーと出会った。

 「ライリーのビデオ、見た?」「ドラムを叩いているビデオあった?」「レッスンのビデオも送ったんだけど、入ってた?全部お任せだったから。私まだ見ていないから分からないのだけど。写真は見た?」

 足を踏み入れることができずに会場の外に立っていたジェニファー。彼女の痛みの深さを目の当たりにし、言葉に詰まる私たちに、矢継ぎ早に話しかける。

 「もうすぐナーサリー(保育所)に行く予定だったのに」と、ライリーの話をして泣きじゃくる。一頻り話して一息ついたジェニファーに、夫は何があったのかと尋ねた。私なら聞けないと思うが、ジェニファーは待っていたとばかりに堰を切ったように話し始めた。

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