第2話
私とアリシア様は、驚きのあまり言葉を失ってしまった。
魔族と人間のハーフ..............そんな存在がいるなんて聞いたことがないけれど.............でもアリア様が嘘をついているようには見えないし、何より今目の前にいる彼女の容姿は、どう見ても普通の人間には思えないーー。
「私の魔族である母は、人間と交わって子供を産んだの。そして産まれたのがこの私よ」
彼女の言葉を聞いて私は息を吞んでしまう。
「信じられませんわ...............! 貴女は私の知るアリアではないのですか!?いつからだったの!?」
アリシア様が叫ぶように問いかけるけれど、彼女は動じることなく笑みを浮かべるだけだった。
「私は貴女の姉のアリアよ?ただ、人間じゃなくて魔族の血も通ってるけどね」
そう言って彼女はクスクスと笑う。
私は思わず剣を抜いて構えるが、私の行動を見たアリシア様に慌てて止められた。
「ダメですよアリシア様! この人は魔族なんです!」
私がそう言うと、彼女もまた真剣な表情で首を振る。何故だろう................?
「いいえ、彼女はアリアです!」
「何を仰っているのですか!?」
意味がよく分からない..............。
どうしてアリシア様はそんなことを言えるのだろうか?
そんなやり取りをしていると、アリア様はクスクスと笑い出した。
私が睨みつけると、彼女は余裕そうな笑みを浮かべたまま口を開く。
「でもね.............貴女のお友達は魔族を敵視しているわよ?」
「え................?」
私は思わず固まってしまう。
そして慌てて隣を見たけれどーーそこには誰もいなかった。
「................アリシア様?」
私が慌てて周囲を見回すと、彼女は何も言わずに歩き出すーー私は慌てて彼女の後を追ったのだったーー。
「あ、アリシア様!? 一体どこに..............?」
私が焦って追いかけていると、彼女はゆっくりと振り向いて口を開いた。
その表情は、とても冷たく見えて...............私は思わず言葉を失ってしまうーー。
あの優しいアリア様が、あんな冷たい目をするなんて..................。
「ねぇアリシア、どうして魔族をかばうの?」
その問いにアリア様はニッコリと笑って口を開いた。
それはまるで子供のような無邪気な笑顔で...............。
「私は人間よりも魔族の方が好きだわ!」
「................っ!?」
その言葉にアリシア様は驚いたように目を見開いた。私も思わず言葉を失ってしまうーーまさかあの彼女がこんなことを言うなんて.................信じられなかったからーー。
アリシア様は冷静を装っているが、その表情は明らかに動揺しているように見えた。
それに対してアリア様は首を傾げると、不思議そうな顔をして答える。
「貴女は魔族の血が流れていないみたいだけど...............誰かしら?」
「..............どういう意味ですか?」
アリシア様が尋ねると、アリア様はニッコリと笑って答えたーーアリア様の言葉にアリシア様が愕然としてしまう。
一体どういう事なの..............?
「私はね、聖女も魔族も人間も、全部平等だと思ってるのよ」
そう言って彼女はうっとりとした表情で続ける。
「だからね...............私が人間と魔族の架け橋になってあげる!」
「え?」
彼女の言葉に、アリシア様は呆然としているようだったーー私も意味が分からず困惑していると、彼女はクスクスと笑うーー。
「ねぇアリア?貴女は魔族が憎くないの?」
唐突にそんな事を尋ねられて、アリシア様は戸惑ってしまっている。
どうしてそんなことを聞くんだろう............? でも.............確かに魔族は悪い存在だと教わってきたけど...............。
「...............私は別に嫌いではありません」
アリシア様がそう答えると、アリア様は驚いたような表情を浮かべる。そして嬉しそうに笑って言ったーー
「やっぱり貴女は私と同じね!」そう言って彼女はアリシア様抱きしめたのだったーー!?
「................っ!?」
突然の事で頭が回らなかったが、アリシア様は何とか離れようとするものの彼女の力はとても強く、抜け出すことができていなかった。
一体どういうことなんだろう..............? すると彼女は、その場で囁くように言った。
「安心して?私が貴女を救ってあげる.............。」
その声を聞いた瞬間、私は背筋が凍るような恐怖を覚えたーーこの人は危険だ。
そう直感したけれど...............どうすることもできなかった。
「アリア...............?」
アリシア様が困惑したような声で呟く。
彼女は呆然としながら私たちを見つめていたが、ハッとしたように目を見開いた。
そして慌てて彼女を引き離して言う。
「アリシア様に何をしたんですか!?」
私の言葉を聞いた途端、アリア様はニヤリと笑みを浮かべるとゆっくりと口を開いた。
「貴女は何も知らないのね。可哀想に.............」
そう言いながら彼女はアリシア様に向かって手をかざした................その瞬間、彼女の指先から黒い光のようなものが現れーーそれが一直線にアリシア様の胸を貫いたのだ!
「............アリシア様!?」
私が叫ぶように声をかけると、彼女はゆっくりと崩れ落ちるようにして倒れたのだったーー。
そして地面に倒れた彼女は、意識を失ってしまったのか起き上がる気配はなかった.............。
一体どうしてこんなことに.............!? 私が呆然と立ち尽くしていると、アリア様はゆっくりと私に近づいて来た............私は咄嗟に剣を構えるが、彼女の表情は変わらない。
そしてそのまま私に向かって手を伸ばしたーー。
「っ................!?」
私は咄嗟に身をかわそうとしたけれど間に合わず、彼女のひんやりとした手は私の頬に触れてしまうーーその瞬間、私の意識は急激に遠のいていった...............。
「ここは、..............? アリシア様..............」
目が覚めた後に、地面に倒れている彼女を見ながら私は呟いた。
どうしてこんなことになったのだろうか.............?わからない.............理解ができない............。
少し前までは、平穏な日常が続いていたのに。
私は彼女を抱きかかえると、ゆっくりと立ち上がった。そしてそのまま歩き始めるーーとにかく彼女を安全な場所に連れて行かなくては、そう思ったからだ。
そんなことを考えていたら、アリシア様の目がゆっくりと開かれた。
「テレーシズ、無事だったのね..............?」
安心してお声をかけようとしたのも束の間。
(あら、女騎士なんて珍しいじゃない)
頭の中で声が響くと、同時に私の意識の中に入ってくるものがあった。
それはこの王宮内に潜んでいる魔族の気配...........そして、そのすぐ近くにアリシア様の反応があったのだ。
「魔族...............?」
私が呟くように言うと、頭の中で声が響く。
(そうよ)
「どうしてわかるんですか?」
(それは私が全てを統べる魔王だからよ)
(私の言う通りに動いてくれる?)
頭の中で響くその声は優しくて柔らかいものだった。でも何故か逆らうことができず、私は素直に頷いてしまったのだ。
そして、頭の中で声が響き渡るーー。
(まずは安全な場所に連れて行ってあげて?その場所を教えてくれるかしら?)
「................わかりました」
わけも分からず、私は言われるままに起き上がったばかりのアリシア様の手を引いて歩き出す。
その時、不意に後ろから声をかけられたーー。
「何をしているのですか?」
振り向くとそこには一人の女性が立っていたーーアリア様だ。
彼女は私を見ると驚いたような表情を浮かべていたけれど、すぐに表情を引き締めて言った。
「アリシア..............」
(アリア様.............?どうしてここにいるの............?今さっきのアリア様は............?)
疑問に思っていると、魔王の声が直接頭に響き、
そしてニヤリと笑みを浮かべて魔王が話しだした。
「そうね.............久しぶりに会ったんだし、少し遊びましょう?」
その瞬間、彼女の周りに黒い霧のようなものが立ち込め始めた。
何が起きているの..............?
「アリシア様!逃げてください!」
私が叫ぶように声を上げると、彼女はハッとしたような表情を浮かべる。そして慌てて走り出したーーだがその行く先にも霧が立ち込めている。
このままじゃアリア様が危ない................!
(無駄よ)
頭の中で声が響き渡り、私は思わず立ち止まってしまう。
するとアリア様の周りに立ちこめていた霧が段々と彼女の方へと近づいていったのだ。
(魔王に敵意を向ける者は、全て私の糧となる)
「そんな...............!」
(さぁ、もっと楽しんでちょうだいね)
頭の中に響く声とともに彼女はゆっくりと近づいてくるーーこのままではアリシア様が危ない...............!私は剣を抜いて構えるが、彼女の姿が一瞬で消えたと思ったら、背後に回られていたのだ。
(遅いわね?貴女は本当に騎士なの?)
彼女がそう言った直後、私の首筋に鋭い痛みが走ったーーそれと同時に私は意識を失ってしまった............。
「アリシア様............?」
地面に倒れている彼女を見つめながら、私は呟いた。どうしてこんなことになったのだろうか...............? 私は呆然と立ち尽くしていると、目の前の女性はゆっくりと近づいてくる。
美しい黒髪の女性だーー。彼女は微笑みながら口を開いた。
(ふふ、どうしたの?私が具現化したら何かおかしい?)
声が響くと同時に、私の意識は遠のいていくような感覚を覚えた...............これは何だろうか..............?そう考えているうちに段々と視界がぼやけてくる。
「ここは一体どこなの.............?」
私が呟くように言うと、頭の中で声が響いた。
(ここは王宮内にある部屋よ)
「あなたは誰なんですか?」
私が問いかけると彼女はクスクスと笑ったーーまるで私の心を見透かしているかのように。
そして静かに口を開いた。
「私は..............いえ、今は魔王と名乗っておこうかしら?」
「一体何が起きているの...............?」
私が問いかけると同時に、魔王を名乗る女性はクスクスと笑ったのです。
そして妖艶な笑みを浮かべながら、私を見つめるーーその瞳にはどこか悲しげな雰囲気を漂わせていました。
(貴女は過去に精霊の力が使えたとか?)
「ええ、そうです。」
(それならどうして魔族を憎むのかしら?)
「それは..................」
私は言葉に詰まってしまったのですーー確かに私は魔族に両親を殺された過去を持っていますし、その憎しみが消えることはありません。
ですが、最近はその気持ちが少しずつ薄れてきているような気がします...............それは何故か................?
わからないけれど、今はただこの気持ちを抑えることが出来なかったのです。
すると彼女は笑みを浮かべたまま言いました。
「.................ふふ、あなたは面白いわね」
そう言って、彼女は妖艶な笑みを浮かべたまま、私に近づき、私の頬に触れたのですーーその瞬間、頭の中に声が響く。
頭の中に声が響くと同時に、私の意識は遠のいていくような感覚を覚えた...............これは何でしょうか..................?
そう考えているうちに、段々と視界がぼやけてくるーーそして、そのまま気を失ってしまいました。
ーーどれくらいの時間が経過したのだろうか?
ふと目を覚ますと、目の前にはアリシア様が倒れていたのです。
「.................アリシア様!!!」
私は慌てて彼女に駆け寄りました。
しかし、彼女の様子は明らかにおかしいものでしたーーまるで別人のような姿になっていたのです!
その姿を見た瞬間、私の頭は混乱して何も考えられなくなってしまいました................。
(ふふ、もう逃げられないわよ)
その声を聞いた瞬間、私は身動きが取れなくなったのですーーこれは一体どういうことなのでしょうか?
私が困惑していると、彼女の姿はだんだんと変わっていきました............黒い翼が生えてきて、彼女は宙に浮いたのです。
その姿はまるで、悪魔のように見えました............。
「あ...................」
私は恐怖のあまり声を出すことすらできませんでした。
彼女は妖艶な笑みを浮かべながら、私に近づいてきます................そして耳元で囁くのです。
「貴女は私のものよ」
私は何もすることができずにただ立ち尽くしていました。
すると彼女は、私の手を握りました。
その手は氷のように冷たくて................私は背筋が凍るような恐怖を覚えたのですーー。
それからというもの、私は毎日のように彼女の元へと通うようになりました。
それが一体どういうことなのかはよく分かりませんが、アリア様はとても優しく接してくれます。
最初は怖かったのですが、次第に彼女に心を開いていきましたーー今では彼女のことを信頼していますし、大切な友人としてお付き合いさせてもらっています。
でも最近になって、少しだけ気になることが増えたのです。
それはアリア様の目が赤い色をしていることなのですが、どうしてそのような色をしているのかわからずにいました。
でも、あまり触れてはいけないような気がしたので、聞くことはできていません...............。
そんなある日のことでした。
アリア様に呼び出されたのです。
どんな用事だろうと思いながら彼女の部屋を訪れると、彼女は私に抱きついてきました。
突然のことに驚きながらも、私はアリア様の顔を見つめたのですが..............彼女は悲しげな表情を浮かべていました。
一体何があったのでしょうか...............?
心配していると彼女が口を開きました。
「ごめんね................」
(どうして謝るのですか?)
私は疑問に思いながら尋ねましたーーすると、彼女は私を抱きしめたまま答えてくれました。
「私のせいで貴女を巻き込んでしまったから................。」
「どういうことでしょうか?」
私が聞き返すと彼女はゆっくりと語り始めました。それは驚くべき内容でした.............。
実はアリア様は魔王の生まれ変わりなのだそうです。
私は 驚きを隠せませんでしたが、それ以上に彼女が辛そうにしているのが伝わってきて、心配になりました...............。
「でも私は何も変わってないわ」彼女はそう言いながら私の手に触れてきたのです。
その手は冷たくて心地良いものでした──。
それからというもの、私たちは毎日のように会うようになりました。
最初は怖かったのですが、今は違います。
彼女といると凄く安心するのです..............。
そんなある日のことでしたーー突然彼女が私に言ったのです。
「今日で終わりにしましょう」
(え..........?どうしてですか?)
私は混乱しながらも尋ねました。すると彼女は悲しげな表情を浮かべて言いました。
「このままだと貴女が危ない目に遭わされちゃうから...............。」
(どういうことですか……?)私は首を傾げながら尋ねました。すると彼女は答えました──。
私が考え込んでいるとアリアさんが声をかけてくれました。「どうかしたの?」
「あ、いえ、何でもありません!」
「そっか、良かった」
彼女は微笑みながら答えてくれました.........でもどこか悲しげな雰囲気で何か悩みを抱えているように見えました。
私は心配になって声をかけるのですが、彼女は何も教えてくれません。
ある日のことでしたーー突然アリアさんの姿を見かけなくなったのです。
心配になって探し回ると、部屋で倒れている彼女を見つけました...............。
「アリア様!?しっかりしてください!!」
私は慌てて駆け寄りましたが、彼女は意識がないようで.............,,。
「うぅ.................」苦しそうな呻き声を上げていました。
急いで医者を呼んで診てもらうと、彼女は病に侵されていることが分かったのですーー。
原因は、魔王を受け継いでしまったせいだと医者は言いました。
そして治療する方法は無いのだとも..........。
アリアさんを助ける方法はただ1つ、それは彼女に魔力を与えることでした。
でもそんなことをすれば、彼女の身体が壊れてしまうかもしれない。
「私、決めました!アリア様を助けるために何でもします!!アリシア様もきっと喜ばれるはずです!!!」
私は涙を流しながら彼女に言いました。
思わず彼女に抱きついていました。
そして泣きながら、何度もお礼を言ったのです。
翌日、私はアリア様に会いに行きました。
昨日のことが噓だったかのように、元気な姿を見せてくれる彼女にホッとしながらも、私は尋ねました。
「大丈夫なんですか?」
「はい!平気です!!」
笑顔で答える彼女を見て安心しました.............でも、本当に大丈夫なのでしょうか?
まだ少し不安を感じながらも、彼女に尋ねましたーーすると意外な答えが返ってきました。
「実は私、もうすぐ死んじゃうんです、助かる見込みはありません。」
彼女は笑いながらそう言ったのです。
私は驚きを隠せませんでした。
「ど、どうしてそんなことが分かるんですか................?」
恐る恐る聞いてみると、彼女は悲しげな表情を浮かべながら答えました。
「だって、魔王の力を制御できないから..............」
「え...............?どういう意味ですか?」
私が聞き返すと、彼女は悲しそうに微笑みながら教えてくれました。
彼女の身体には、耐えきれないほどの魔王の力が宿っていたのだそうです。
でもその力に彼女の身体が蝕まれていて、残り少ない命となってしまったのだとか...............。
私はどうすればいいのか分からなくなってしまいました。
「どうすればアリア様と一緒にいられるんですか?」彼女は悲しげに微笑みながら言いましたーーそれはとても残酷な言葉でした................。
(私を倒せばいいのよ)
私は耳を疑いました..............まさか彼女が、そんなことを言うとは思ってもみなかったのです。
でも、冗談を言っているようには見えませんでした。「どういうことですか..............?」
私が尋ねると、彼女は悲しげな表情を浮かべながら答えてくれましたーー彼女の身体の中に入った魔王の力は、彼女自身にしか制御できないのだそうです。
でもその力が強大すぎるため、彼女は自らの命と引き換えに、魔王の力を制御することを選んだのだそうです。
私は言葉が出ませんでしたーーあまりにも残酷な運命に、涙が止まりませんでした...............。
「泣かないで..............」彼女はそう言いながら私の頭を撫でてくれましたーーその手は冷たかったけれど、とても優しい温もりを感じました.............。
「無理です!私にはできません............!」
「でもやらないといけないの、このままだとあなたが危ないから」
彼女の目には、強い決意のようなものが浮かんでいました。その目を見た途端、私はもう何も言えなくなってしまい、ただ彼女を抱きしめました。
「ありがとう................」
彼女は微笑みながら言うと、私の手に口づけをしてきましたーー初めてのことで戸惑いましたが、不思議と嫌ではありませんでした..............。
「アリア様..............」私は彼女の名前を呟きました。すると彼女は涙を流しながら答えてくれました。
「ごめんね..............」
そしてそのまま気を失ってしまったのですーー私は慌てて医者を呼んで治療してもらいました。
でも最終的に彼女の命を救うことはできないそうです。
それからというもの、私は毎日彼女の元へと通うようになりました。
彼女を助ける方法がまだ残っているかもしれないと思ったからです。
でも、もう遅かったのです...............。
「テリーシズ、よくきたわね」
彼女はいつものように笑顔で出迎えてくれましたーーでももうその身体は限界を迎えていたのです。彼女の身体には魔王の力が宿っているため、いつ暴走してもおかしくありませんでした。
私は彼女に尋ねることにしました
「..............どうすればいいですか?」
「私のことは忘れて、お願い」彼女は笑いながら、言いました。
でもその目からは、涙が流れていました。
「嫌です.................!」私は泣きながら答えました。すると彼女も、泣きながら訴えてきました。
「お願いだから...............!」
彼女の必死な願いを聞いて、私は何も言えなくなってしまいました。
「分かりました.............」私はそう答えるしかありませんでした..............。
それからというもの、いつも通り私は毎日彼女の元に通うようになりました。
でも日に日にやつれていく彼女を見る度に、心が痛みました。
彼女は最後まで笑っていましたが、私には泣いているように見えましたーー。
でも、何もしてあげられない自分が悔しくて悔しくて、仕方がありませんでした...............。
そんなある日のことでした。
いつものように彼女の部屋へと行くと、そこには誰もいませんでした。
ベッドに触れると、まだ温かかったです。
もしかしたら、どこかに隠れているのかもしれないと思い、部屋を隅々まで探しましたが、やはりいませんでした................。
私は混乱していましたーー彼女の身に何かあったのでしょうか?
でも、彼女が危険な目に遭わされている可能性もありますし、魔王の力を狙っている者の仕業かもしれません。
..................どちらにしろ、早く見つけなくては!
「アリア様!!どこにいるんですか!?」私は叫びながら探し回りましたが、返事はありませんでした。
しかし、きっと近くに隠れているはずです!
「 アリア様!!..............返事をしてください!!」
私が叫ぶと、部屋の隅から物音が聞こえてきました。
そこに彼女はいたのです、私は急いで駆け寄りましたーーそして彼女の姿を見た瞬間、驚きました...............彼女は全身傷だらけで、息をするのも苦しそうな状態でした................。
「大丈夫ですか!?」私が声をかける前に、彼女が口を開きました。
(私はもう助からない、だから逃げて!」
彼女は泣きながら訴えてきましたーーでも、私は彼女を一人にするなんて考えられませんでした。
だから、私も泣きながら答えました。
「私も一緒に連れて行ってください!!」
そう言うと、彼女もまた涙を流しながら頷いてくれました................そして二人で手を繋いで歩き出しました。
目的地なんて決まっていませんでしたが、とにかく遠くへ逃げることにしました。
森の奥深くにある小さな小屋に辿り着きました...................そこには誰もいませんでしたが、二人で住むには十分な広さがありました。
私たちはここで新しい生活を始めることに決めたのですーーこれから辛いことが待っているかもしれませんが、彼女と一緒なら頑張れると思いました。
「アリア様!」私は笑顔で彼女の名前を呼びましたーーすると彼女もまた、笑顔を見せてくれました。その笑顔は今までで一番輝いていて綺麗なものでした.................。
「ありがとう、大好きよ」
彼女が言ってくれた言葉は、一生忘れることはありません。
きっとこの笑顔を守るために私は生きてきたのだと思いました...............。
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