第12話 検問所
馬車にある食料で、何処の街も寄らずに目的地のヘルテ村付近まで4日ほどかけて到達した。
10日ほどかかると考えていたが、馬車と補給なしの進行の為に、だいぶ早くつきそうだ。
「検問所など無かったようだが?」
「へルテ村の前の一本道にあるはずだから、もうすぐだな。ちょうど食料も尽きかけているから強奪しよう。デシュタールに遠慮はいらんだろう」
馬車を操りながら、ニヤニヤしてレベロが言う。
少し進むと道に関所が作られていて、デシュタールの兵隊が4人ほど立っていた。
「デシュタールからの戻りだ。捕虜を国に届けるから門を開けてくれ」
レベロが嘘をつくと、馬車がデシュタールの傭兵団の紋章であるためか疑われずに、すぐに門が開いた。
「お疲れです。なにかおこぼれとか無いのか? 大勝利だったって聞いたぞ」
「俺らは参加できなかったから、辛いんだよね」
「荷物ぐらいは、見せてもらうぞ」
馬車に、デシュタールの兵隊が乗り込んできた。
「お! 女がいるじゃないか!」
「この執事みたいのも捕虜か? 男を連れてってどうすんだ?」
「ストレス溜まってるんだよなぁ。女だけでいいだろう。この執事置いてけよ。試し斬りに使いたい」
言いたい放題である。こいつらに慈悲をかける必要はなさそうだ。
「ノボル、門が既に開いてるから、そいつら殺していいぞ。俺は門を操作してる奴らを殺して来る」
レベロが、そう言って御者席から剣をもって飛び降りて、門の制御しているデシュタールの兵士の方へ突っ込んでいった。
「な? なんだと、おまえ……グチャ」
持っていた黒い棒で兵士の一人の頭を叩き割る。
残りの3人が剣を抜いて襲ってきた。
ルクが、剣を構えて一人の胴体に斬りつけた。
ルクの攻撃で兵士が一撃で絶命した。
初対面の時もそうだったが、ルクって王女と言うより剣士なのか?
「ノボル、私も戦います」
「いや、危ないから下がっててください」
残った二人の剣撃を黒い棒で弾き、馬車の中から外へ押し出す。
「なんだと!」
「なんだ、こいつらは!」
馬車から落ちて体制を立て直そうとしているが、黒い棒で二人の頭を叩き割る。
残酷だが時間をかけれない、レベロが心配だ。
門を目指して、走った。
門を操作する場所には、3人のデシュタール兵隊が絶命していた。
無傷のレベロが、絶命した兵士を調べていた。
レベロは、結構強いんだな。
「ノボル、終わったぞ。7人しかいないようだ。ヘルテ村へ行こう」
「死体は、このままで良いのか?」
「早く村へ行った方が良さそうだ。村でかなり極悪な事をしてるようだぞ」
デシュタールの兵隊の死体を指差した。
兵隊の腰には、人間の耳が10個ほど鉄の輪に串刺しになってアクセサリーの様に付いていた。
うわ、キモい。
「デシュタールでは、殺した相手の耳を証拠に保持して国に買い取ってもらったりするんだが、コイツらが持ってるって事は、村で虐殺があったと考えられる。急いで行こう」
再び、馬車に乗り込んで村へ向かった。
用語説明
デシュタール帝国
まだ歴史が浅い侵略国家。かなりの国を侵略しており国土は大陸で一番大きい。前皇帝が初代であり、現在は第二王子の内乱で前皇帝が殺されて、それを倒した第一王子のバスル・デシュタールが現皇帝に即位している。第四王子のキラス・デシュタールが内政を行って、第三王子のヘルレ・デシュタールが遠征を主に担当しており、第五王子のヘリヴィ・デシュタールは、昇に殺された。
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