第11話 目的地へ

 メイド服のルクと、デシュタール帝国の兵士姿のレベロと、黒い棒を持った執事姿の私が深い森を歩く。


「レベロ、雇うのは良いがいくらで雇われるんだ?」


「さっき見せてくれた白金貨一枚で良いですよ」


「わかった」


 レベロに投げつける。


 反射的に受け取ったレベロが、右手の掌にある白金貨を見て、キョトンとした顔をしている。


「じょ、冗談で言ったんだが……白金貨をポンと渡すとはノボル様は太っ腹だな」


 未だにこの世界の価値観がわからないが、納得いく価値だったようだ。


「ノボル様はやめてくれ。ノボルでよい」


「ノボルに雇われるよ。契約成立だな。何をすれば良いんだ?」


「エテロ王国とデシュタール帝国の国境付近の古代遺跡迄の案内だ。このメイドは、ルク・エテロで、エテロ王国の王女だ」


「え? 王女!? 第五王子が捕まえに城に向かったはずだが?」


「全員殺した」


「……まぁ、ノボルに出会ったら生きて帰れないか。ますます良いね! そう言う事なら全部話そう」


「何か事情があるんだな」


「そうだ、そこの王女と一緒だな。デシュタール帝国にエテロ王国が滅ぼされる前に、滅ぼされたミミテル国の王子が私だ。本当の名は、メロウ・ミミテル。ミミテルの第三王子だったが、デシュタールに留学中にデシュタールとミミテルが戦争を開始して、帰国出来なかったので身分を隠して傭兵をしていた。目的は、そこのルク王女と同じだと思うぞ」


 偶然にデシュタールに滅ぼされた国の王族2人と仲間になるとはな。


 デシュタール帝国が、どの様な国か見極めてから手伝っても良いかと思うが、まずは活動期間が30日の条件を解除しなくてはいけない。


「二人に教えておくが、私には古い時代の呪いがかかっている。その呪いを解くために古代遺跡に行こうとしている。手伝って欲しい」


「そうだったのですね。だから像にされていたのですね」


「像? ……あ!! 思い出したノボルってデシュタールの傭兵訓練所にあった裸像そっくりなんだ!」


 なんてこった! 同じ像が複数体やはりあるのか!

 しかも、呪いの話より像の話に食いついてるし……



「まぁ、そう言うわけだからよろしく!」


「わかりました」


「わかったよ」


 レベロが、ニヤニヤしている。


「お、あれが俺らの足だ」


 森がひらけた所に、デシュタールの傭兵の馬車と馬が6匹繋がれていた。


「馬車で行くか? 古代遺跡といえば、ヘルテ村のそばの所で良いのか?」


「そこだと思います」


「任せろ。道は知っている。馬車には食料も豊富だから、そのまま行こう。一箇所検問があるがノボルがいたら余裕だろう」


 馬車に繋がれた馬以外を解放してレベロが情報を教えてくれた。


 仲間にして正解だったな。

 古代遺跡を目指して馬車で出発した。


用語説明


貨幣

大陸全ての国に中立のレシトス法国が造幣しているが、各国でも独自の貨幣が一部存在する。


白金貨プラチナ

日本円で白金貨1枚1千万前後の価値観

金貨100枚で白金貨1枚と変えることができる

大型取引のみに使用され一般流通はしていない


金貨ゴールド

日本円で金貨1枚10万円前後の価値観

銀貨10枚で金貨1枚と変えることが出来る


銀貨シルバー

日本円で銀貨1枚1万円前後の価値観

銅貨10枚で銀貨1枚と変えることが出来る


銅貨ブロンズ

日本円で銅貨1枚1千円前後の価値観

石貨100枚で銅貨1枚と変えることが出来る

銅貨以下の貨幣は、あまり使われない


石貨ストーン

日本円で石貨1枚10円前後の価値観

エルタ国の商業都市リカルとレシトス法国の首都シュリルで流通しているが、他の場所では、あまり流通していない。


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