第10話 残党狩り

 城を出てデシュタールの軍隊いると思われる王都を避けて、裏から脱出する。


 遠くに深い森があるのが見える。

 歩きながら黒い棒を振って色々と試していた。

 棒術のデーターはあるか?


【あります。インストールしますか?】


 やってくれ。


【……終了しました】


 お気軽に覚えられるのは、便利だが全く実感がわかない。

 先ほどより器用にバトンのようにグルグル回せるようになった。


「ノボルは、槍使いなのですか?」


「そう言うわけではないですが、多少は使えますよ」


「流れるような棒運びが美しいです」


「そうかな?」


 少し照れくさい。


 城から王都とは別の方向である深い森中に入った。


「古代遺跡へ行くとすると、どうやっていけますか?」


「王都を迂回する形なので、遠回りですが、トルムの街を経由してヘルテ村を通れば10日ほどで着くと思います」


「街までの案内頼みます」


 無言で二人で歩いて行く。

 雨が上がって夕焼けが見えた。

 もうすぐ夜になるが、暗視機能がある為か暗いのはわかるが昼間のようによく見える。


 私の食料はいらないと思うが、ルクには必要であろう。手に入れる手段を考えないといけない。


 歩いているとインディから警告を受ける。


【前方に生命反応が10あります。そのうち一つは、離れた所で待機しているようです】


 暗がりに9人のデシュタールの兵隊の姿の男達が立っていた。


「お!本当に来たよ」


「城のやつっぽいね」


「女もいるぞ! 得役だな」


「お前たちには悪いが、城から逃げてくる奴らは全て殺せと言われている。死んでもらうぞ」


 9人中3人が抜刀した。


 私の強さを考えると、余裕で倒せると思うが、ルクが怪我をする可能性がある。

 隠れている人は、飛び道具系のサポート要員だと考える。

 インディ、隠れている奴は何処にいる?


【9人が立っている横の木の上です。昇が持っている棒を投擲すれば確実に殺せます】


 まだ完全に自分の能力を知らない。無手でも9人倒すのが余裕なのか微妙だ。


 インディ、格闘技の知識をくれ!


【格闘技の知識をインストールします。多種にわたるので90秒ほどかかります】


 時間を稼ぐか……


「すまないが、私たちを無傷で通してもらえないだろうか? お金は払おう」


 白金貨を1枚取り出してみせる。


「は? お前は状況がわかっているのか?お前を殺して奪えば良いだけだろう?」


「私は、君たちを1分以内に全員葬りされるのだが? 構わないか?」


「「「「あはははは!!」」」」


 数人が笑って、数人は目が真剣になる。

 冗談と受け取る人と、まさかの可能性を考える人の違いだろう。


 抜刀していなかった残りの6人も抜刀した。


「まさかも、あるからな」


「これは、交渉決裂と言う事でよろしいか?」


「交渉? お前は、拷問して苦しめて殺してやるよ。ここにいる数人は、騎士団副団長クラスの実力者だ。舐めた事を言ったツケは払ってもらうぞ。女は目の前で犯して殺してやるよ」


【インストールが終わりました。総合格闘技全て使用可能です】


 持っている棒を隠れている一人に投擲する。


 グハ!!


 木の上から絶叫が聞こえる。


 弓と矢を持った男が、腹に棒が刺さった状態で木から落ちて来た。


「なんだと!」


「お前らいくぞ!」


「この野郎!」


「なんでわかった!」


 9人が襲いかかってくる。


 一人目は、顎に高速でパンチを当てる。

 顎が砕けて首が180度後ろを向く。


 二人目は、剣撃を避けて背後に回り込んで股間を蹴り上げる。足が腹まで達して、骨盤が砕け散った。


 三人目と四人目は、剣撃を誘導して同士討ちにした。

 心臓を刺しあって絶命した。


 五人目は、背中から斬りかかって来た。

 避けてその右手を掴んで振り回して六人目の頭と五人目の頭を高速でぶつけた。潰れて脳漿が飛び出した。


 七人目は、逃げ出した。落ちている剣を拾って投げつけた。首に刺さって絶命した。


 八人目は、剣を構えてこちらを見ている。


 九人目は、剣を捨てて手を挙げている。


「レベロ! 裏切るのか?」


「何言ってるんだ? 今の動き見なかったのか? 運悪く絶対勝てない敵に当たったんだよ。お前も降参しろ絶対勝てない」


「貴様! それでもデシュタール傭兵団の一員か、おれ……」


 八人目は会話して油断しているので、落ちている剣を拾って頭から股間迄、真っ二つにした。


「すげぇな、今まで見た人で一番強えぞ! 俺は降参だ。いや、俺を雇わないか? 帝国の方針には嫌気がさしてるんだ」


 レベロと言われた男が、緊張感もない顔で聞いてくる。


「また、私の立場が悪くなったら寝返るのか?」


「あなた様が立場が悪くなる事なんてあるのか? 名前を聞いていいか?」


「お前は、レベロで良いのか? 私はノボルだ」


「ノボル? 聞いたことがないな。だがノボルの顔ってどっかで見た事があるんだが? 有名人なのか?」


 ……まさか裸像の目撃者かもしれない……仮面を手に入れた方が良いかもしれないな。


【昇が、寝ている間に昇の裸像を参考に数十体のレプリカを作成していたログが残っています】


 ……各地に……私と同じ裸像がある可能性があるのか……


「まぁ、気のせいだろう。似てるやつは多い。お前を雇おう」


 レベロが、仲間に加わった。


人物紹介


白鳥昇

元末期癌患者の30歳であったが、様々なアクシデントにより、液体金属がベースのナノマシン集合体の機械人間ロボットになってしまう。

人間時の記憶は、一部ロストしている。

ロボット三原則が付与されていない思考性ロボット。

外見は、再生時に昇が想像したイケメンアイドルを再現している。

性格は、奥手で偽善者。

ロボットになってしまったために、通常の人間が持つ欲求は、殆どなくなっているが擬似的に発生する時がある。

生前の生き残る事と人間らしさが彼の原動力。


ルク・エテロ

デシュタール帝国に滅ぼされたエテロ王国の元王女。

美しく胸が大きい小柄な女性で、剣技が得意である。

性格は、温和だが情熱的な時がある。面食いであるため政略結婚には向かない。国民の事を一番に考えるが結構自分中心。マイナス志向で悪い方向ばかり考えて諦めが早い。昇の外見は、彼女の好みであった。


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