第9話 宝物庫
現状を女性に説明してもらった。
「私の名前はルク・エテロです。この国の王女でした。デシュタール帝国の第5王子であるヘリヴィ・デシュタールから私が求婚を受けたのですが、異常な性癖の持ち主であった為にお断りしました。それを根に持って彼は、嫌がらせをはじめました。
第3王子のヘルレ・デシュタールが弟が侮辱されたと言い出して、侵略してきましました。我が国の5万の騎士も40万のデシュタール軍に押されて全滅しました。戦場に出た王族は全て殺害されて私を残すのみとなり、先程、王城が落とされました。
第3王子は王都に略奪に行き、残った第5王子が私を奪いに来ていたのです。
城内には、私達しか生きている者がいないでしょう」
凄いことに巻き込まれたな。
さてこれからどうしよう?
「逃げますか?」
「もはや、逃げることもできぬでしょう。憎っくきヘリヴィを倒して頂いた事に感謝いたします」
乗りかかった船という言葉を思い出す。
「私を雇いませんか?」
「え? 既に滅んでしまった国の王女ですよ」
「城内に宝物庫はないのですか?」
「ありますが、既に略奪されて何も残っていないと思います」
無一文なので、何か小銭でも回収にし向かうことにした。
その前に、頭に剣が刺さっているヘリヴィの身体を調べると皮袋に白金貨が10枚ほど入っていた。
ありがたく回収していこう。
宝物庫に案内されて向かうが目を覆いたくなる惨状で、メイドや執事など非戦闘員迄も惨殺されて通路に横たわっていて、メイドに関しては服が破かれていた。
「これは、戦争や闘争などではなく盗賊に襲われたような惨状ですね」
「デシュタール帝国は、戦火で大きくなる侵略国家ですから。初代皇帝も傭兵出身と聞きます」
宝物庫につくと、略奪の際に揉めたのかデシュタールの甲冑を装備した者も何名か同士討ちの様な形で死んでいた。
過去には多くの宝物があったと思われる空間には、数枚の銅貨と銀貨、重くて運べなかった美術館が数点残っていた。
路銀に困らぬよう落ちている貨幣を拾っていく。
ふと壁を見ると、2mほどの手で握れる黒い棒が飾ってあった。
「あれは何ですか?」
「古代遺跡から発掘された、折れない斬れない棒という事で献上されたものです。」
手に持ってみると見た目より軽い。
確かに多少曲がるが、私の力でも折れない。
【軌道エレベータ用のカーボンナノチューブの切れ端です。この太さで50トン以上耐えるワイヤーです】
インディが教えてくれる。
古代遺跡か……
30日以内に自分のエネルギーを充填しなくてはいけない。
遺跡に何か施設が残っている可能性は、高いと考える。
「古代遺跡は、何処にあるんだい?」
「デシュタール帝国の国境のそばです」
位置が悪いな。
「じゃあ、私を雇うのではなく、私が貴方を案内役として雇って良いですか? 報酬は、貴方の安全とデシュタールへの報復と言うことで」
「え?」
「古代遺跡に興味があります。一度見に行きたいので頼めないでしょうか?」
「一度命を救われた身なので、構いませんが今やデシュタールの領地になっています。死にに行くようなものだと思うのですが?」
「変装すれば大丈夫だと思います。私自身も強いので襲われても返り討ちにしますよ」
2mほどの黒い棒を両手で持って器用に回す。
「わ、わかりました」
よし、後は変装をしよう。
私は執事の服を着込み、王女にはメイドの服を着せよう。
給仕室へ移動して小部屋に入って王女のルクが着替えるのを待っていた。
私の方は、ちょうど良いサイズの服があり、すぐさま着替え終わった。
ドア越しに声が聞こえる。
「私のことは、ルクと呼んでください。裸像さんのお名前は何と言うのですか?」
「ノボル・シラトリと言います。ノボルと呼んでください」
「シラトリ? 聞いたことはないですね。わかりましたノボル様。今後よろしくお願いします」
ドアが開いて、メイド姿のルクが現れた。
小柄の為に巨乳が目立つ……
「ノボル様は、よしましょう。ノボルでお願いしますルク」
「ノ、ノボル……わかりました」
黒い棒を持って執事姿の私と、メイド姿のルクで城の外を目指す事になった。
用語説明
軌道エレベーター
惑星などの表面から静止軌道以上まで伸びる軌道を持つエレベーター。「宇宙エレベータ」とも呼ばれる。
カーボンナノチューブ
炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質。炭素の同素体で、フラーレンの一種に分類されることもある。アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます