第8話 動き出す裸像
目がさめると大雨の中にいた。
【起動可能なエネルギーが溜まりましたので起動します。活動可能時間30日間】
地上に出てるし!
【年月経過で上部の建物が風化して、何かの建築の際に発掘されたようです】
どうやってエネルギーを集めたんだ?
【日光浴で太陽光や電磁波などから少しづつ集めました。最後に落雷により活動安全圏内まで溜まりました】
え? 安全圏内? 1時間でもいいから、溜まったら起動してくれれば!
どれぐらい月日が経過したんだ?
【1時間では、ミッションを遂行できない判断でした。何処かでエネルギーを回収するミッションを考えて活動期間を設定しました。休眠してからの経過時間は、現在測定不能。天気が回復すれば、星の位置から測定可能】
インディは、起きてたのか?
【はい、周囲の状態は確認していました。既に環境データと言語などの情報は取得済みです。現在使われている言語をインストールします……終了】
目の前の状況がわからないのだが?
【詳しくは、私もわかりません。女性が男性の集団に襲われているようです。判断と行動は昇に任せます】
ドレスを着た女性を20人の兵隊が襲っていた。
石像のフリをしておこう……
「え?」
声が聞こえたので目線を声の方向に向けると、落雷があったので女性が私を見ていた。
目があってしまった。
「像が動いた?」
女性がつぶやく。
復活した時に思わず祈るポーズを変えてしまっていた。
「無視するとは、ますます許せんな」
女性を襲っている人の中で立派な服を着ている男が、こちらを見て動きが止まる。
思いっきり気づかれた。
「な! いつからそこにいた? 王女以外は皆殺しにしたのではないのか? お前ら殺してしまえ」
剣を振りかざして襲ってきた。
像のフリは失敗したようだ。
どうするかな?
インディ? どうにかできる機能は、あるのか?
【敵の攻撃力の分析をしました。最大攻撃力が513程度なので、皮膚の防御力を700ほどに設定します】
考えている間に、男たちが私の周りを取り囲み剣で攻撃してきた。
カキンー! ギーン!
剣撃が私を切り裂くが火花が散り、私の皮膚の防御力を突破出来ない。
「なんだこいつは!」
「剣が役に立たない」
「なんで斬れないんだ!金属?」
兵隊が狼狽える。
攻撃方法はないか?
【現在、防御力を上げて皮膚の強度を上げているため、柔軟性が失われて行動力が低下していますが、襲撃者よりも3倍ほど速く動けます。最適な攻撃方法は、剣の奪取と剣による攻撃になります。剣技は、現在インストール中……完了しました】
おお! 色んな剣技が頭に浮かぶ。
一人の兵士が振った剣を刃の部分を、おもむろに掴んで剣を取り上げる。
「なんだと!」
剣を奪われた兵士が叫ぶ。
奪った剣を空中に投げた後に180度まわして柄の部分をしっかりとつかむ。
そして、虐殺を開始した。
多くの剣技の前に一方的に殺害して行く。
生まれてから初めての殺害だが、正当防衛と自分がロボットになってしまった為か、罪悪感なく実行できた。
だが、こう言う事を考えると言うことは、まだ良心は残っていると信じたい。
立派な服を着てる男と女性以外に、生きている者がいなくなった。
「な、なんなんだ! お前は!」
剣を構えて震えてこちらを見ている。
「なにと言われても、突然襲われたから撃退しただけだが?」
「そ、そうか! なら傭兵か? 金をやる! 俺に雇われろ」
「貴方を殺してお金を奪ったほうが早そうですが?」
「なにを言っている! 私は王子だぞ! 王族に刃向かうつもりか? お前のような平民が口を聞け……」
シューーー スブ!
価値観が違いすぎる事と、目撃者を全て消す必要性を感じたので剣を投げつけた。
男の頭に刺さって、男は即死した。
「あ、ありがとうございます」
最後の生存者がお礼を言ってくる。
「いえ、巻き込まれただけで助けた訳では無いので構いません」
「あ……あなたは、裸像さんですか?」
裸の私を見て、少し顔を赤らめて質問してきた。
「ん...確かに裸像でしたが……」
なんて、言えば良いのか……作り話でごまかす事にしよう。
「昔に、悪い人に封印されていたんだが、落雷で封印が解けたんだよ」
「まあ! そうだったんですね! さぞかし名のある騎士様だったのかしら?」
一瞬で信じたよ……
「すまないが、着るものと久々に封印が解けた為に、この世界を知らない。教えて頂けないか?」
「構いません。どうぞこちらに」
屋敷に案内されて行く。
奥の部屋に案内されたが、そこに着くまで何処もかしこも死体だらけであった。
虐殺と言う表現が一番しっくりくる状況だった。
部屋にあった服をもらい、服を着る。
文化レベルは、どのぐらいなのかな?
【武器の性能や、衣類の状態から17世紀初頭ぐらいだと予測できます】
だいぶ退化してしまったのか?
【ログ検索……地表から昇が発掘されてから人類を観察していましたが、18世紀レベルまで発展した時代もあったが、戦争や天災で2度ほど滅びかけています。それから過去に昇がいた時代の技術力の上昇が異常だったのであって、今の世界は緩やかな技術力の上昇で、あまり文化レベルが上がっていないようです】
なるほど。
女性に向き合って質問をした。
「なにが、あったのですか?」
用語説明
防御力
兵器のような機械や生物等を、他の物体との衝突や熱などから護る力の表現
攻撃力
兵器のような機械や生物等を、他の物体との衝突や熱などで破壊する力の表現
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