第6話 祈りの像

数千年ほど経過した。


 ネス王国の王城を作製する際の堀を作っている際に古代遺跡が発見された。


 少し大きな空間があり、部屋のような空間の中には人型の祈る様な男性の裸像が発見され、城内に展示される事になった。


「王様、少し下品ではないでしょうか?」


「ここまで躍動感がある像は珍しいぞ。細部まで仕上がっている」


「しかし、男性の局部が……」


「まぁ、服を着せれば問題ないだろう。何かに祈る形でもあるし、我が国の守り像となるかもしれない」


 設置されて王国が滅びるまで数千年間、像は見守り続けた。


 そしてまた、数千年の時が流れる。


 没落貴族のベタスミ伯爵の屋敷に、祈りの像がやってきた。


「父上、お金もないのに何故このような像を購入したのですか?」


「何だろうか?とても惹かれる物があってな」


 ベタスミ伯爵の執務室に20年間、像は見守り続けた。


 そしてまた、数千年時が流れる。


 ロマウ帝国のゲルマ領にある広場に、祈りの像と言う裸体の神に祈っている男の像があった。


 かなりリアルな作りであり、理想的な男性として、女性に人気の観光スポットになっている。


「見てあの像よ!」


「うあ、カッコいいわね」


「うちの亭主もあんなんだったらね」


「この角度からだと……」


「あら、あんな所まで作り込んであるの?」


「裸だからモデルは奴隷かしら?」


「奴隷だったら、あそこまで立派な体格にならないでしょう」


「貴族のモデルだと思いますよ」


「何処かの国の皇帝か聖者かしらね?」


「想像が尽きないわね。祈っている相手も気になります」


 ロマウ帝国が、ボストアーク国に滅ぼされる数百年間、像は見守り続けた。


 そしてまた、数千年の時が流れる。


 オークション会場で目玉の祈る男の像が出展された。


「金貨200枚!」


「私は210枚だ!」


「金貨210枚、他にいませんか?いないならキレル様が落札です!」


「やったぞ!!」


 貴族のキレルから献上されて、エテロ王国の中庭に数百年間、像は見守り続けた。


 そして、月日が流れていく……


用語説明


ロマウ帝国

大陸のほとんどを支配して栄えた帝国である。安定した時期に、文化的な物が流行り昇の裸像の複製が数多く作製された。

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