第4話 肉体を捨てる

階段を上がると地下一階から、土砂が入り込んで進めなくなる。


地下一階には工作室があったので、そこで道具を作れれば地上に出れると考えて工作室へ移動した。


工作室には、見たこともない装置が多くあったが、補填された知識で総て使い方がわかった。


原材料がナノマシーンの集合体で、あとはプログラムを組んで創生する仕組みである。

ただ、電源がない。


【外部供給路は総てオフです。地下自家発電からの供給なし、予備電源も無し……地上自家発電……供給なし……地上予備電源……残存確認。接続しますか?】


接続をするが、先程から外部とどうやって通信してるんだろう?頭に入っている知識には、自分の機能に関しての知識がすっぽり抜けている。


【接続しました。身体の説明をします。現在貴方の体は、10%がナノマシンで構築されていて90%がDNAを改造して強化された細胞で構築されています。


10%のナノマシンによる通信によって外部と500m範囲内の電波の受信と送信および暗号解説などが可能になっています】


もはや……人間というよりサイボーグなんだな。


天井の照明がついて、部屋の機材が動き出した。


操作用の端末に座って、地底を走れるドリル的な乗り物を設計する。


一人乗りの地上迄辿り着く為の掘削能力と前進性能を付加して作成を始める。


工作室の作業台にナノマシンが、流れ込んで来て形を作っていく。



グサ!



痛みはなかったが、自分の腹から尖った直径30mmほどの鉄の棒が出ていた。


完全に致命傷である。


背後から、何者かに撃ち抜かれたようだ。


「シンニュウシャカクニン、ハイジョカンリョウ、バッテリーブソク、ジュウデンシテクダサイ、スリープモードニハイリマス」


背後から電子音の合成音声が聞こえた。


どういう事だ?


背中から腹に刺さった鉄の棒を抜いて、座ってる椅子から崩れ落ちる。

背後を見ると作業用の人型ロボットが、鉄の棒を持って立ったま停止していた。


大量の血が、私を中心に広がっていく。


え? もう理解できない。


【補助電源が復帰したために、作業用のロボットが起動したようですが、バッテリー残量がほとんど無かった為に、停止したようです……分析中……ログを発見しました。施設に軍の兵士が侵入した際の部外者の殲滅と言う最終命令を実施したようです。処置をしないと、貴方は、あと35分で死亡します】


復活して、すぐにこれか!


助かる方法は無いのか?


【体内の10%のナノマシーンを利用して仮死状態にして、有機物を摂取する事で、傷が修復するまでの栄養を保てれば治癒は可能です】


それで良い。


【実施したいですが有機物がたりません。他の手段は存在せず。死亡確定になります】


ダメじゃん!!! 死にたく無い!!


【死の定義が、肉体にこだわらないのであれば、延命可能ですが実施しますか?】


どういう事?


【工作室で貴方の肉体をナノマシーンで構築して、脳のデータを移せば、意識と知識と言う点では、継続可能です。肉体の構成が有機物主体から無機物主体になります】


それしか選択肢がないのであれば……


末期癌患者→冷凍人間→復活→改造人間サイボーグ→機械ロボットの流れだった。まさか人間を完全に辞める事になるとは……


【確認しました。貴方と同一の肉体をナノマシーンで構築します。24時間かかります。記憶の転送は、30分かかります。残り33分で生命活動が停止するため、肉体を直接ナノマシーンに取り込みます。記憶を吸い上げた後に肉体を構築します】


うわ、結構ギリギリだな。24時間かかるって……

構築する為のエネルギーは足りてるのか?


工作室の作業台の上に大量のナノマシーンの塊が液体のように流れ込んで来て、スライムの様な形状になったら、私を飲み込んだ……


用語説明


有機物とは、生物体を構成・組織する、炭素を主な成分とする物質。


無機物とは、有機物を除いたすべての物質。金属・塩類・水や水素・酸素・窒素などの各種の気体。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る