エピローグ

第17話 エピローグ

 気絶していた沢村会長のスマホを河合は奪い、沢村会長の指を使って指紋認証を行いロックを解除した。そして、彼が三紀みつのりさんに対してお金の催促をしている部分をスクショしまくって、自分のスマホに送っては消していた。沢村会長の脅しの証拠を手に入れているのだろう。

 加えて、彼のアカウントからこのサークルとこのサークルのOB会のグループチャットに、あの卑猥な写真群を編集し彼が写っている部分だけを切り取ったものを、共有した。いくら沢村会長の態度に腹が立ったかとはいえ、容赦が無さすぎる。

 そして、後日のことではあるが、沢村会長には非難の声が集まり、会長を辞することになった。沢村会長の噂は広まり、大学中で話題の的になった。いつも偉そうな会長のあられもない姿が写った写真を見て、おもしろがったサークル員がその写真を友達に共有し、その友達がそのまた友達に共有するというループによって拡散されたらしい。

 仕方がない。いつも傲慢ごうまんだった沢村元会長の周りからの人望は薄かったのだ。

 さらに追い打ちをかけるように、週刊誌に何者かが(1人しか思い当たらないが)沢村元会長の脅迫文を提供し、沢村元会長が1人の学生を脅している様子が記事になった。名前は隠されていたが、大学名は出されていたので、すぐに特定班によって特定され、沢村元会長の実名はインターネット上で拡散された。

 沢村元会長は3回生の終わりごろ、周りからの視線や評判に耐えられず、自主退学をした。

 一条先輩が言うには、当たり前といっちゃ当たり前だが、沢村元会長から三紀さんに対してお金の催促は無くなったらしい。そして、謝罪の文が届き、反省のためにあの山本さんのあられもない姿が写った写真群は消すらしい。また、三紀さんにお金を全額返すという形で示談として欲しいとのことだった。

 しかし、沢村元会長は、脅迫で大学の評判を悪くしたうえに、デジタルタトゥーが残っているため、就職しようにも難しいだろう。いつ奪ったお金を三紀さんに完済できるかはわからない。


 僕は数か月後、3回生になろうとしていた。

 春休みが近くなったころ、サークルの部室で1人、ジャングルの王者がトーナメント大会で活躍する漫画を読んでいると、河合が入ってきた。

 前と同じく2Lペットボトルコーラとポテトチップス(コンソメ味)…

 それに加えて今回は…僕の好きな湿布味の炭酸飲料の缶が

 彼女の掲げている袋の中には入っていた。


「伊丹、このジュース探しまくったんですけど、”遊べる本屋”でやっと見つけましたよ。どんだけ希少価値高いんですかこれ!」

「そうなんだよな…あんまり見かけない。沖縄とかだとスーパーに売ってるんだけど。沖縄には、それがジョッキで出てくるファーストフード店もあるんだよ」

「ええマジですか!」

 彼女はいつも明るく、冗談を言って僕を喜ばせようとしてくれている。

 彼女と僕の様子を見て、あの世の山本さんは笑っていてくれるだろうか…

 そうふと思うと、脳裏に…

 僕の映画の1フレームに映った山本さんのあの笑顔が浮かんだ。


(完)

 

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