6.解決編

第13話 真相

 深夜、僕たちの下宿での推理合戦は終わりを迎えた。

 河合も僕もいつの間にか寝ていたらしい。目が覚めるとローテーブルが見えた。

 河合は僕の横にいて。肩に寄り添って寝ていた。偶然この形になったのだろうが恥ずかしい。僕は彼女を振り払うと、立ち上がって、シャワーを浴びに行った。

 

 結局犯人は三紀さんだったのだろうか。一体何のために…僕の上映会が行われると知っていたなら、出待ちでもして、こっそり直接僕に会えばいいものを…

 そんなことを考えながら、服を脱ぎ、シャワーを浴び始める。

 そのとき、僕の頭にイナズマが走った。


 そうか…そういうことだったんだ!

 …彼は僕の作品の上映時に来ていた!


 昨日、上映会で最後まで残っていた男は、浜大津命はまおおつ みこと…という妙な名前だった。

 浜大津は滋賀県南部にある地名である。

 山本凛子の出身地もそこ辺りだったはずだ。

 そして、彼が行っているという近江学院大学なんて聞いたことも無かった。

 

 シャワーを浴び終わり、すぐにタオルで水分をふき取り、ジャージに着替え…

 僕はパソコンに向かった。


 まずは、近江学院大学を調べる。近い名前の大学は出てきたが、調べても検索結果には出て来なかった。

 今度は三紀の「紀」という漢字を調べる。この漢字には名前で使う際は「こと」という読み方もあった。つまりは、「三紀」の「三」を「み」と訓読みし「紀」を「こと」と名前独自の読み方をすれば、「みこと」となる。わざわざ任意の欄で名前を書いたのは、三紀と自分が別人であることを示したかったのだろう。

 わざわざ名字を浜大津にしたのは、何故かはよくわからない。彼女との絆を表すためか?それとも、僕に自分自身が山本さんの兄だと匂わせるためか?

 彼がわざわざ自由記入欄で山本さんの写真の存在を明かしたのは、僕が観客を見るのに夢中で上映会の最中にその演出に気付かなかったことが原因なのかもしれない。


  僕の作品の今日の上映開始時間は15:00である。今から動画ファイルを編集ソフトから書き出せば、僕のクソザコスペックPCでも間に合うが…

 僕はあえてそれをしなかった。犯人が望むことを行う、それがこの事件の答えのような気がしたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る