第9話 写真の中の真実

「どうですか、先輩落ち着きましたか?」

「はあ…なんとか…」

 どうにか心を落ち着かせて、ローテーブルに戻り、フォルダ内の写真を見る。

 僕の撮った写真以外は山本さんと沢村会長の様々な体位での性交中の写真だった。  

 彼らの後ろに映っているのは確か沢村会長の部屋のベッドだ。

「これ、誰が送ってきたと思う?」

 河合に話を振った。河合は気分が悪くなったようで俯いていた。

「ええっと…容疑者の内の沢村会長以外の2人ではないでしょうか…」

 確かに、いくら沢村会長が筋肉バカだからと言って、自分の裸体を送ってくるとは思えない。しかも元カノとの性交シーンだなんて…

「確かに普通に考えたらそうだよな…東条副会長か一条のどっちかか…」

「先輩のアカウントのパスワードはどんな感じのだったんでしょうか?」

「ええっと…誕生日の次に自分の名前のアルファベットだったな…」

「セキュリティガバガバじゃないですか…はあ…じゃあどっちが犯人でもあり得ますね…」

 東条か一条のどっちかが知らぬ間に僕に恨みを持っていたのだろうか…思い当たるふしが無い…

「先輩どうぞ…」

 河合がコーラを紙コップに注いで僕の前に置いた。先ほどの出来事から河合なりに僕に気にかけてくれているらしい。コーラを飲む。炭酸は抜けに抜けてただの砂糖水のようになっていた。

「うーん、なんで犯人は僕にこんな画像を送りつけてきたんだろう…」

「私思ったんですけど、犯人は私たちに何かを訴えてきているのではないかと思うんですよ、山本さんに関して…」

「そうか…それもあり得るな…ってか、そういや、この写真は画角的に第三者が撮っているっぽいな…AV撮影でもしてたのか…」

 そう言った時、河合が口を開け、何か思いついた表情をした。

「撮影…そうか。先輩、去年、沢村会長が撮っていた作品ってどんな内容だったんですか?」

「えっ、高校生カップルの青春ものだけど…」

「はあ…やっぱり、そういうことか…先輩、多分なんですけど…この写真は全部濡れ場の撮影の際のものじゃないんですか?」

 僕は驚いた。濡れ場なんて僕達スタッフに渡された脚本には無かったはず…しかし、それならなんで写真なんだ…

「写真なのはおそらく、山本さんに…動画をその場で消すように言われて彼女の見ている前で消したんじゃないかと思います。しかし、その動画の一部は彼女には秘密裏にカメラの動画から静止画を切り出す機能を使って、写真として残されていたんですね、おそらく。サークルで持っているカメラなら、無線LANに繋げたら指定のオンラインストレージサービスに保存する機能があるカメラもあるので、その機能だけ使って、写真だけを隠れてそこに送っていたのかも…」

 河合が僕の心の中を読み取ったかのように言った。

「何で山本さんの指示で動画を消したって予想できるんだ?」

「先輩気づかなかったんですか?どの写真も山本さん、目に涙を浮かべていますよ…」

 僕はフォルダ内の写真の山本さんの顔を全て拡大して見た。確かに河合が言うように、彼女の目元には雫のような涙が浮かんでいた。そして表情には陰りが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る