第2話 アンケート回答者

 僕はサブリミナル演出を映画に入れた覚えはなかった。

 映像を動画編集ソフトからMP4で書き出した後に編集のミスがないか、リップシンクの誤りが無いか、などなどを何度か映画を通しで見て確認し最終的にDVD-Rに焼いたのだから、編集ミスがあったというわけでもない。

 僕は、くだんのアンケート回答者に直接、話を詳しく聞こうと思った。僕の作品が上映された後に出ていった数人は全員女性であったが、幸いなことにアンケート回答者は性別欄において男に丸をしており、まだ、上映会を行っている教室の中にいるらしかった。

 上映が終わり、教室に響く音がむ度に1人、また1人と人がそこから出てきた。

 僕は受付からチラチラと眺めて、出てくる客の性別を確認し、男性なら話しかけることを繰り返した。しかし、一向に僕が探しているアンケート回答者は出てこなかった。途方に暮れていると、教室の電気が点いた。いつの間にか、上映会自体が終わりを告げていたらしい。

 僕は透かさず教室に入り、男性を探した。果たして、すぐに見つかった。観客は3人しか残っておらず、教室の真ん中あたりにペアで座っている女性と教室の前方窓際に男性が1人いるだけだったのだ。

 男性が帰ろうと席を立ち始めていたので、僕は走って、息を荒らげながら、男性の肩に触れた。

「ちょっと、すいません!」

 僕の鬼気迫る様子や大声に驚いたのだろう、男性やペアの女性、北野きたの、教室にいる自分以外の皆一同がぎょっとした表情を浮かべて僕の方を見ていた。

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