33話 候補試験前の思い出作り③
次の日。昨晩は女子会をやって意外と盛り上がっていたところをルイさんに『寝なさい』と言われ、第一回目であろう女子会が閉幕した。そして、明日家を出て学園に戻らないといけないため、私とマリアンヌとレオナとセドと共に、お出かけをすることとなった。生前、友達やクラスメイトと遊んだことのない私にとって、この出来事や時間は貴重なものとなっていった。カフェで昼食を取った後、レオナとマリアンヌは急に席を立った。
「セドちゃんがんば!!」
「おい、レオナたちはどこに行く? それに何を頑張るんだ?」
「アタシとマーちゃんはコスメを見に行ったりする約束をしてるから、ルナちゃんとセドちゃんで過ごしてねっ! あと何を頑張るのかセドちゃん次第よ~!」
「そうだよぉ~。ルナちゃんお土産待っててね~」
マリアンヌとレオナは手を繋いでスキップをしながら、カフェから出て行ってしまった。セドは頭を抱えながらため息を深くついた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
「えっ、大丈夫?」
「なんでもねぇよ。それで、貴様はどこか行きたい場所はないのか?」
セドはコーヒーを啜りながら私に問いかけた。行きたい場所ね……。しばらく悩んでいると、ある場所にセドを連れて行きたいと思い、セドに言うとコーヒーカップをテーブルに置いた。
「そんなところあるのか?」
「あるから私がいるんだよ。だからさ、始まりの場所にいこ!」
私たちはカフェを出て始まりの場所へ向かうことになった。道中、気配を感じながらも知らんぷりし、目的地へと歩いた。
*
私の言う始まりの場所に着き、その美しさにセドは驚くを隠せずにいた。
「貴様が言う場所か……。美しいな」
「でしょ? 私が初めてこの世界に転生した時の場所。氷の結晶で出来た洞窟よ。妖精族の友達がここを作って、この身体の持ち主を想ってね」
「……そうか。一つ気になったんだが」
セドは私の方に身体全体を向け、こう言った。
「貴様……いやルナは、転生者でこの先あの言い伝えのような未来が訪れて【呪い】を受けたとしても、俺たちのそばにいてくれるのか?」
どこか寂しそうで悲しそうは表情を見せたセド。私の覚悟は決まっている。アランさんと出会ったころから。だから、この答えは──。
「勿論イエスだよ。君たちがいるのであれば私の存在意義もあるし、なにより居心地が良いし、頼れるからね。マリアンヌは優しいし、レオナは何でも教えてくれて、セドは……」
「お、俺は?」
「うーん、一番頼れる? 言ってしまえば私たちの中でも一番実力もあるし、常識人だし。初めて出会ったころは最悪だったけど、今となってはいい思い出だよ!」
私はセドにありのままに思っていることを素直に話すと、口を右腕で押さえながらそっぽを向いた。
「セド?」
「俺もルナのこと頼れるし、なんっつーか……その」
「ん?」
セドの顔を覗き込もうとした瞬間、私の右腕を掴み、彼の胸元に抱き寄せられた。一瞬の出来事に混乱しているとセドはいつもより小さい声量で声を震わせながら言葉を発した。
「一度しか言わない……からな」
「う、うん?」
「ルナ・マーティン。俺はお前が好きだ。だから、候補試験の最終試験前が始まる日までに返事を……クダサイ」
「ふぇ!?」
久々に変な声が出てしまった私は恥ずかしくてしょうがなかった。初めての告白にも。どんな顔をして今度からセドと会えばいいのか分からない。あの戦闘狂(仮)のセド・レナードが私のことを……。
「ルナがどんな姿になったって俺は想い続ける。絶対に」
「せ、セド……」
「アランという魔術師ばかり見てないで、俺のことも見てくれルナ。じゃないとおかしくなりそうだ」
セドのデレ期が到来したかというくらいに、デレている気がするのは私の勘違いなのだろうか?
「それに、宣戦布告にもなると思うしな。そこにいるんだろ?」
セドはそう言うと、後ろからあの人の気配を感じた。
「僕のルナに手を出さないでくれるかい?」
そう、アランさんだ。
「抜け駆けだと思っているのか?」
「勿論だともクソガキ」
「ふん。告白したもん勝ちだろう」
なんかセド、開き直ってない?
「仕方がない。僕も言うとするかね。ねぇルナ」
アランさんは私の名前を呼ぶと、後ろから私に近寄り顔を自分の方に向かせた。何時ものアランさんとは違う色気のある雰囲気を感じる。
「ルナ。僕ね、君のことが好きだ。初めて出会ったころから。いや、出会う前からかな。転生する前に僕は呪いによる未来予知で君を見守ってきたんだ。いつも仕事仕事で、努力している君が好きだった。そして、転生してきたあの日のことを待ち望んでいたのさ。好きな子と一緒に居れるって。会えるって」
「あ、アランさん」
「ルナ、僕を選んで。こんなガキじゃなくて僕を」
今日同時に男性二人から告白されてしまった私。一人はクラスメイトに。そして、師匠に。初めての出来事にますます混乱し頭を悩ませた結果、私は二人にこう言い放った。
「最終試験前までに決めておきますから!! 今日のところはお引き取り願います!!!」
と。すると、二人は私から離れ了承してくれた。だがその後が大変だった。その日はマリアンヌとレオナに詰め寄られて、今日の出来事を強制的に吐かされ、ルイさんやアノールにドン引きされ、シュネーはアランさんを○害計画を企てようとして必死に止めた。アランさんに惚れたのは惚れたさ! それは師として! 弟子を想う師だって思ってたさ! でも恋愛対象としての話だというのは初耳だし、ミサンガの意味だって知りもしなかった。セドに関しても。ライバル視してたのかと思っていたらこやつもアランさんと同じ気持ちだったんだって。これからどうすればいいの!! 思い出にしてもひどすぎる思い出になってしまった私であったのだった。
候補試験前の思い出作り(完)
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