32話 候補試験前の思い出作り②

~前回のあらすじ~

 ウィザード・セクト候補試験前に夏休みが始まった私たち。アランさんから長文の手紙(内容は主に私に対するウザい愛の告白)が届き、内容を分析し夏休み期間だから一度帰って来てという内容だと気づき、マリアンヌにレオナにセドと共にルイさんの家に帰還した。玄関を跨ぐと、アランさんに抱き着かれたり、アランさんとセドがにらみ合ったりとなんやかんやあったのだった。



 アランさんとセドの喧嘩? がやっと終わり、ただいまティータイムに突入して過ごしている。向かいに座っているルイさんは『学園生活はどうですか?』と私に問いかけてきた。


「楽しいですよ! みんなとこうして一緒に居ることが私にとって幸せです」


 ルイさんにそう答えるとマリアンヌたちは嬉しそうに笑った。するとアランさんが泣きわめき始めた。


「ルナに友達がでぎでよがっだ」

「アラン……すまないね、アランはルナさんのことになるとうるさくなるんですよ。慣れてしまったルナさんはほら」

「アノールチョコサンドあるけど食べる?」

「おう」


 私はアノールにチョコサンドを渡して、自分もチョコサンドを頬張った。


「慣れてるわね~」

「そうだねぇ~」

「麻痺してるの間違いじゃないのか?」


 アランさんに抱き着かれながらも完全無視してチョコサンドを食べている私を見たマリアンヌたち。セドだけが今日だけでも三回くらいドン引きしている。恐らくこの中でも一番の常識人なのだろう。


「もう気にしないようにしてるの。いちいちツッコんでいると疲れるから」

「だろうな」

「えへへ」

「褒めてないが?」


 セドと良く分からないやり取りをしていると、アランさんがガルルルとセドのことを威嚇してきた。


「アランさん? 喧嘩しないって言ったよね?」

「あっ、はい」

「全く……アランも懲りないですね。ところでルナさん」

「何でしょうか?」

「今回の滞在期間はどうしますか?」


 そういえば、外泊届は取れたから最低でも二日滞在しようかしら? 


「二日居てもいいですか? 迷惑でしたら今夜にでも帰りますけど……」


 ルイさんにそう言うと、首を左右に振って『そんなことありませんから、いくらでもいてください』と許可をもらった。


「ありがとうございます!」

「いいえ。アノールの部屋にレナード君とアルフレード君は寝泊まりしてください」

「じゃあ、私の部屋でマリアンヌとお泊りだね!」

「そうだねぇ~」


 私の部屋でお泊りだと決まった瞬間、マリアンヌが頬擦りをしてきた。可愛い天使。


「マーティン教授、今夜このリビング貸してもらってもいいかしら?」


 レオナは突然ルイさんにリビングを貸してほしいと頼んできた。ルイさんは微笑みながら『良いですよ』と答えた。


「やったわ~! ルナちゃんマーちゃん! 今夜は女子会よぉ~!!」

「わ~! ルナちゃん初めての女子会だよね~?」

「う、うん」


 マリアンヌに頷くと、レオナと顔を見合せハイタッチを交わしたマリアンヌとレオナ。


「お菓子作りからしましょ!」

「それなら俺も手伝う。ルイ様よろしいでしょうか?」

「えぇ。好きにしなさいアノール」

「ありがとうございますルイ様」


 アノールはルイさんに礼を言っていると、マリアンヌとレオナに腕を引っ張られそのまま厨房に向かう羽目となった。



 お菓子作りをして夕食を食べ、大体十時ごろに再びリビングに集まった私とマリアンヌにレオナ。そしてスペシャルゲストとしてこの方をお呼びした。


「初めましてだわ! 私はシュネー! ルナの使い魔で氷の妖精族よ!」


 そう! 私のであるシュネーを女子会に呼んだのだ! 彼女もいくら妖精であろうとも女子だからね!


「私はマリアンヌだよ。よろしくねぇ~」

「アタシはレオナよ~! よろしくねシュネーちゃん!」

「よろしくされたわ! それで女子会って何するのかしら?」


 そうか、シュネーは女子会というものを知らないのか。


「女子会というのはね~」

「コイバナをするのよ!! もちろんお菓子を食べながらねっ!」


 レオナはシュネーにウインクすると、一瞬体が震えたように見えた。そして、私の耳元に飛んできて耳打ちをしてきた。


『レオナって男よね?』

『……乙女よ』

『なるほどね。了解したわ』


 シュネーは私の回答に理解したのかこれ以上追求せずに、レオナをとして認識したようだ。


「さぁー!! コイバナよぉ〜!! マーちゃんは気になっている男子いないの?」

「いないよ〜それよりもルナちゃんが気になるの〜」

「アタシもよ!! それでいるの? いないの??」

「どうせアランじゃないの? 私が許さないけど!」


 レオナとマリアンヌは期待している眼差しを私に向けた。そういえば恋愛なんて生前からしたことないし。そう聞かれたもよくわからない。


「うーん。良く分からないって言うのが正直なところよ。生前も恋愛なんて一度もしたことないもの」


 ミルクティーを飲みながら独身だったことを明かした。するとこの場にいた全員が信じられなさそうな顔で私に詰め寄った。


「えぇぇぇぇぇ!? ルナちゃんうそでしょ!?」

「嘘じゃないよマリアンヌ。だから恋愛とか分からないの」

「でも何かしらきゅんとしたことないの?」


 レオナの言うとおり、きゅんとしたことなんて……。


「あれ? でもアランさんからこのミサンガをもらった時、ふと何故か安心したような気がしたよ?」

「このミサンガの意味って!」


 シュネーは私の左手首に結んである赤とピンクのミサンガを見て驚いた。


「ホントだわぁ~! ルナちゃんこの意味わかる?」


 私は首を振ると、マリアンヌとレオナは互いに顔を見合わせ、ミサンガの意味を教えてくれた。


「赤色は情熱・勇気・仕事・勝負よ」

「ピンクは恋愛・結婚だよぉ~」

「そして、左手首に付けさせた意味はよ!」


 三人から意味を教えてもらった私は一気に体温が高くなった気がした。


「ルナちゃん顔赤いわよ!? もしかして気になっちゃった感じかしらね~! それこそお・と・めの証拠よー!! キャーッ!」

「ルナちゃん頑張って~」

「アラン許すまじ!!」


 リビングがカオス状態なんだけど……。


「セドちゃんに勝ち目無いのかしら?」

「何でセドが出てくるの?」


 レオナの口から何故かセドの名前が出てきた。疑問に思っているとレオナに唇に人差し指を当てられ『な・い・しょ!』と言われてしまった。


「私よりもシュネーが気になるんだけど? ルイさんのこと好きなんでしょ?」


 私はシュネーの頬を突っつきながら問いかけると、顔を林檎の様に真っ赤に染め、あわあわと慌て始めた。


「る、るるるるるるるるルイ!? なんでそうなるのよ!!」

「だってールイさんと話してるとき幸せそうだったもの。ルイさんも……」

「私がどうかしましたか?」


 後ろから寝間着姿のルイさんが現れた。


「ルイさん!」

「女子会はいいですが、もうそろそろ寝なさい。女性は寝た方が美容にもいいんですから」

「それもそうね。じゃは今夜はお開きにしましょうか!」


 こうして、ルイさんの言葉で女子会は終了し、物を片付けて私たちは自分たちの部屋に戻り、眠りについた。シュネーも今日は私の部屋にお泊りしていった。



 一方、私たちが就寝した後、ルイさんはリビングで一人顔を赤く染めて悶絶していたのであった。

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