21話 ルナ・マーティンたちの寮決め

 第三試験を合格した私とレオナ・アルフレートとセド・レナード。ミステリウム魔法学園の校長であるブライアン・コルト校長の転移魔法で校長室に連れてかれた私たちは、寮決めをするために、一人一人質問を答えることとなった。


「これから三つの質問に答えてもらう」

「はい」

「ではまず、一つ目の質問。貴方たちの固有魔法を教えてください」


 固有魔法? そんなのあったっけ? 聞いたことないんだけど!? スキルならわかるけど!


「俺の固有魔法は『砂魔法サンディ』です」

「アタシは『水魔法ウォーター』です」

 

 セドとレオナは自分の固有魔法を校長に教えた。氷魔法だったらそれが固有魔法になるのか……。


「ルナ・マーティン」

「は、はい! 私の固有魔法は『氷魔法アイス』です」


 私は質問に答えるとブライアン校長は、小さく頷いた。


「では次の質問。貴方たちの夢を教えてください」


 夢!? 夢か~、アランさんの呪いを解くこと? でも私の夢はこれだな!


「俺の夢は……弱者を救うこと。そのためには強くならなければならない。だから、弱者を救うために、強くなる。それが俺の夢です」

「アタシの夢は、皆好きなことを出来るように世間を変えることです」

「私の夢は。夢は……ある人の呪いを解いた後、自由になることです。その人は私の師で、とある呪いにかかっているんです。その呪いを私が解いた暁には、私も師も自由に過ごせることが私の唯一の夢です」


 校長の目を真っ直ぐ見つめ、自分の夢を語った。すると校長は何かを考えるように両腕を前に組んだ。


「そうですか。では最後の質問。何故この学園に来たのかを教えてください」


 もちろんそりゃ!


「「「夢を実現させるためです!!!」」」


 私たちが想っていることは同じだったらしく、一斉に言うと校長は眼鏡の位置を直した。


「合格です。貴方たちは今日からファリス寮の寮生となり、この学園の生徒として認めます。改めましておめでとう。セド・レナードにレオナ・アルフレート。そして、ルナ・マーティン」


 私たち三人はファリス寮の寮生として認められた。嬉しすぎてセドとレオナとハイタッチをしていると、校長の横に魔法陣が現れると、なんとルイさんが魔法陣から出てきた。


「ルナさん達改めましておめでとうございます。そして、ようこそミステリウム魔法学園へ」

「ありがとうございます!!」

「今日から寮生活になりますので、一旦解散しましょうか。五時間後、ファリス寮に来てください。監督生を呼んでおきますので」


 こうして私たちは試験に合格したため、一旦家に帰ることとなった。ルイさんはまだ試験官として残るため、私だけがルイさんの家へと向かうこととなった。



 ルイさんの家に帰り、扉を開けようとドアノブを引くと次の瞬間、アランさんが飛び出して抱き着いてきた。


「ルナァァァァァ!!」

「やかましいわこの変態魔術師!」


 アランさんの鳩尾に拳を入れると、吐血しながらその場に倒れてしまった。


「やりすぎたか?」

「全く大丈夫さ! これもルナからの愛情表現だと思ってるから!」


 こわっ。ストーカーになりそうな気がする。


「とりあえず中に入りますから、どいてくれませんかね?」

「えぇ―」


 まぁいいや、このまま引きずって中に入ることにした。自分の部屋に戻ると、アランさんも付いてきた。


「女子の部屋ですよ? 用事がない限り入らないでくださいよ変態!」

「褒めてくれるんだね! ありがとう! 結婚する?」

「いやしねぇよ! 褒めてもないし!」


 アランさんはのにやにやと表情を緩め、人には見せてはいけない表情を見せた。犯罪臭するんだけど!? ルイさんもアノールも不在だし怖いよー!


「いいから出て行って!! じゃないともう二度とお話ししませんからっ!」


 私はアランさんに釘をさすと、アランさんは渋々部屋を出て行ってくれた。



 一時間後。身支度を終えた私はアランさんがいるであろうリビングに向かった。すると、コーヒーのいい匂いが漂ってきた。


「昼食にしよう。夕飯はあっちで出ると思うから、最後の昼食を取り給え」

「最後の晩餐みたいな風に言うのやめません? どうせ長期う休みには帰ってこれるんですから」


 私がそう言うと、アランさんは笑った。


「ふふっ。そうだね」

「いただきます」


 アランさんの前の椅子に腰を下ろし、目の前に出されたホットサンドと野菜サラダを食べ始めた。ホットサンドの中身はチーズとハムが入っていて、身体にしみわたって美味しい。生前ホットサンドなんて食べなかったからな~。しいと言えばサンドイッチしか食べない主義だったし。手軽だし、片手で食べられるからパソコン打ちながらよく食べてたのを思い出す。


「アランさんって料理できるんですね」

「できるとも! 料理好きだからね、おやつにあとでクッキーを作ってあげよう」

「楽しみです!」


 アランさんの手作り初めて食べた。これはモテる。モテるのか……なんか嫌だな。モヤモヤする。


「ルナ?」


 アランさんは心配そうに私の名前を呼んだ。私は『何でもないですよ』と言いながら、野菜サラダに口をつけた。


「ねぇルナ。僕心配なことあるんだけど」

「何ですか?」


 コーヒーをすすりながら私を見つめてくるアランさん。大事なことかな?


「変な男についていってしまうかって。できれば僕だけにしといて」

「へっ!?」


 アランさんはそっぽを向いてコーヒーをすすった。そっぽを向いたときに見えた耳は薄ら赤くなっていた。


「へ、変なこと言わないでくださいよ! 別に私なんか相手してくれる人なんていませんし!」

「いるさ! ルナは可愛いし! でも、変な虫がつかないようにはしているから安心ではあるけど」


 何それ!? 虫よけしとるの!? 虫よけスプレーしてたのこの人?



「ルナは誰にも渡さないから。弟子でもあるけど、その……」

「その?」

「あぁぁぁもう! 気にしなくていいから! 早く食べて!」


 アランさんは顔を赤くしながら、コーヒーカップをもって洗い場に行ってしまった。いったい何だったのだろうか? アランさんの言葉に疑問を持ちながらも、昼食を食べ終え、時間になるまで昼をすることにしたのであった。

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