22話 ファリス寮

  編入試験を合格した私は、一時ルイさんの家に帰還し、荷造りをした。荷造りと言ってもそんなに荷物ないんだけどね。そして、ミステリウム魔法学園に向かう時間となってしまった。アランさんはどこか寂しそうに私を見つめた。


「ルナ……もう行くのかい?」

「はい。また帰ってくるので心配しないでください。ちゃんとお手紙も書きますから」

「うん。ルイからちゃんと聞くからね! 僕はしばらくルイのところで世話になってるから、何かあったら頼ってね」


 アランさんは私に優しく言いながら、頭を撫でた。


「はい。では行って来ますアランさん。いや、師匠!」

「行って来給え!」


 私とアランさんは数秒見つめ合った後、私は玄関から外の世界へと足を踏み込んだのであった。



 ミステリウム魔法学園にたどり着いた私は、ファリス寮に向かうように言われていたのを思い出し、荷物が入ったカバンを右手に持ちながらファリス寮へと向かった。その途中、ふわふわとした雰囲気の女子を見かけた私はその子に声をかけた。


「マリアンヌ・アイリーンさん!」


 そう、編入試験の時一緒だったマリアンヌ・アイリーンがいたのだ。マリアンヌ・アイリーンは私に気づくと、ふにゃと笑った。


「ルナちゃん~」

「試験もしかして!?」

「合格したよ~。ルナちゃんも合格したんだねぇ~」


 マリアンヌ・アイリーンはそう言うと、私に抱き着いてきた。私も抱きしめ返すと、マリアンヌ・アイリーンは顔を上げて笑った。


「可愛い!」

「ルナちゃんも可愛いよ~」


 互いに抱き合っていると私の頭に、軽く痛みを感じた。マリアンヌ・アイリーンから離れ後ろを振り向くと、そこにはセド・レナードとレオナ・アルフレートがいた。


「セド! 叩かないでよ~。今可愛さの補給してたのに!」

「どんな補給だよ。貴様もファリス寮か」

「あら、嬉しいわ~。女子が増えて! 後で女子会しましょ!」


 女子って、レオナは……。やめた。ツッコむのやめた。


「そうだよ~。私マリアンヌ・アイリーン。マリアンヌって呼んでねぇ~。よろしく~」

「俺はセド・レナード」

「アタシはレオナ・アルフレートよ!」


 セドたちは互いに握手を交わし、ファリス寮に向かった。そして、数分廊下を歩くと、ファリス寮内に入った。


「見学会で来たことあったけど、綺麗なところだよね!」

「そうだねぇ~」


 マリアンヌ・アイリーンと寮の共同スペースを見ながら呟くと、『ルナさん』とあの美少女の声が聞こえ横を振り向くと、アノールの同級生であり、このファリス寮の監督生である『エレノア・カトレア』が本を片手に持ちながら微笑んで立っていた。それだけでも女神よ!


「エレノア先輩!!」


 私はエレノア先輩に駆け寄ると、口元右手で隠し、上品にクスッと笑われてしまった。そのしぐさが尊いせいで、倒れそうになったところを何とか耐えきり、エレノア先輩に合格したことを報告した。


「私たち試験合格しました!」

「おめでとうございます。それで、このファリス寮に来たということは?」

「ファリス寮生になりました」


 私たちの後ろにいたセドがエレノア先輩に言うと、先輩も嬉しそうに口元を緩めた。


「それはそれは。では量の説明をしなくてはなりませんね。では改めまして、私は三年A組のエレノア・カトレアです。生徒会長とこのファリス寮の監督生を務めています」


 エレノア先輩は改めて自己紹介をした。私たちも先輩に自己紹介をした。


「初めまして。俺はセド・レナード。固有魔法は砂魔法サンディです」

「アタシはレオナ・アルフレートよ! 固有魔法は水魔法ウォーターで、得意なことは料理とお裁縫が得意だわ~」


 レオナの得意なこと知ってしまった……完全に乙女やん!


「私は~マリアンヌ・アイリーンです。固有魔法は花魔法フラワー。好きなことはお昼寝です~」


 だと思ったけど、お昼寝好きなんだ。そこも可愛いポイントやな。


「私はルナ・マーティンです。固有魔法は氷魔法アイスになります。えーっと、好きなものは可愛いものとお菓子です。特技はお菓子作りです」

「あら、ルナちゃんお菓子作りをするのね! アタシもお菓子作りするわ~。あとで作って女子会しましょ!」

「私もやる~」


 とレオナは楽しそうに笑ってる。そんなに女子会したいんか。まぁやりたいけどね!


「その時は私もぜひ呼んでくださいね。恋バナ好きなので」

「勿論だわ!」


 私とセド以外のメンバーはなぜかハイタッチをした。セドと私は呆れながらも、その様子を見守った。



 五分後。女子会の話が終わり、エレノア先輩は何かを思い出し、近くにあったカバンから何かを取り出してきた。


「では、この制服をあなた方に託します。これはファリス寮の制服になります。今着ているのは予備制服になります。例えば、洗濯をして乾かなかったとか、破けたとかの理由であれば、着て構いません」


 先輩がカバンから取り出したのは、白色のローブと男子には黒色のズボン。女子には黒色の膝関節の下くらいまであるスカートを渡してきた。


「明日からでお願いしますね。それではファリス寮の共同スペースについて説明しますね」


 エレノア先輩から寮の説明を受けた私たち、ルールもいくつかあったが、簡単に言うとみんな仲良くねと言うことだった。そして、セドとレオナはファリス寮の男子生徒に部屋を案内されていき、私たちはエレノア先輩に女子寮を案内された。


「ここが貴女たちの部屋となります。ルナさんとアイリーンさんは同室になりますから、互いに助け合って生活してください。何か困ったら私の部屋に来てくださいね。では、今日はゆっくり休んでください」

「ありがとうございました!」


 エレノア先輩は私たちの部屋から去って行った。これから学園生活が始まるんだ! 楽しみと、アランさんに言われたもう一つの試験に合格できるか不安でもあるが、今はこの瞬間を味わって楽しもうと、心に誓って荷物を片付け始めたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る