第2話少年と少女の思い出。
その日放課後。
僕は、少女に「僕もーさんみたいに絵を描けるようになりたいから、絵を教えてくれない?」といった。
本当のことをぶっちゃけてしまうと僕は、ーさんのの見える世界にあこがれたのだ。-さんは、普通の人が見えない世界を描く。僕は彼女の世界に触れたくてしょうがなかったのだ。
少女はいった。「もちろん!君は私の絵の良さを分かってくれるし一緒に絵を描いてくれる人がいてくれると嬉しい。」と二つ返事で了解してくれた。のだが、
少女は急に唇を鳥のように突き出し(?)鼻と唇を使って器用に鉛筆を挟み始めた。何とも形容しがたい顔だ。しばらく、少女はその不思議なまましばらく、きれいに整ったまつげを少しふせるのだった。それは、子供にしては、少し色気びた顔で見入りそうだ が謎のくちばしが邪魔している。
それを見ながら僕がぽかんとしていると、少女は、思いついたといったような様子で目を見開き、ふっふっふとでも言いだしそうな口調で
「では、最初の課題。いやミッションを与えよう。」
「明日までに、”すいとう”をデッサンで描いてくること!私とどちらがうまく描けるか勝負よ!」と鼻に鉛筆を挟みながら、いうので大変締まりがない。そんなことを考えながら、呆けた顔をしていると、何かを勘違いしたらしい。
「まあ、そんなものを描くの?思うかもしれないけど、デッサンとかの基礎技術は大切で何をやるうえでも描写力というのは約にたってそれかr」
「そうじゃなくて、なんで鉛筆を鼻に乗せているの!?」
これ以上勘違いされたら困る。僕が気にしているのは、その顔のほうだ。
少女はキョトンとしくりくりとした目をこちらに向け顔言った。
「絵を描くときはみんな、こうゆう風にして考えるんじゃないの?」
僕は、しばしフリーズした。もしかして、僕は知らないだけで皆はそうするのか!?
いや騙されるなそんなのどこでも見たことない。
「いや、そんなのどこでも見たことないよ!落として顔に刺さったりしたらどうするんだよ?
少女はいたずら好きな子供のような(ようなではなくそのままである)顔をして宣言した。
「心配してくれるの?けど大丈夫よ。鉛筆だし。しかも、私たちはお絵かき少女と
少年なのよ、周りはまったく気にしないような小さな題材をも魅力的に感じたりするものよ!そんな私たちが、人との違いを気にしてはいけないわ。」
そして、道端に咲く野草の美しさや日常的にみるような鳥たちの可愛さを語りだした!
「オオノイヌノフグリという。小指より小さな青い花をーくんは見たことがあるかしら?春先にひっそりと咲いているのだけど、花だけでもなく葉っぱも小っちゃくてかわいいの。それと雀のコンビなんて、おとぎ話の世界とかわらないわ。考えるだけで幸せね!花言葉は、春の喜び、信頼とかいろいろあるのだけど、なんと名前の由来は犬の
僕はなぜか止めなければいけない気がした。花と小鳥の世界をこれ以上汚してはならない。
「わかりました。分かりましたからこれ以上は言っちゃいけないです!というか公衆の面前でそんなこと言ってはいけません!」あぁ、気が付けばですます調に…落ち着け僕。
話をたまたま聞いた近くの席の中には「いんのうって何?」って言ってる子もいれば、顔を赤らめて聞かなかったふりをしている女の子までいる。ものしりすぎやしないか!?とりあえずこの場を収めるのだ。
「顔に鉛筆を乗せようと小筆を乗せようと、大筆を乗せようとかまわないから!」
もう一体何の話をしていたのか分からなくなってきたが、少女は「大筆は乗せられのかしら?」と的外れなことをつぶやいていた。
僕は一回落ち着いて深呼吸をしてからいった。
「明日に”すいとう”を描いて持ってくればいいんだね。きっと僕のほうが上手に描いてくるよ。」
お絵かき少年として混ぜてもらったのが嬉しくて少し見栄を張ったのは心の中だけに隠しておこう。
すると少女は、意地が悪そうに笑い。
「わかったらいいの、明日を楽しみにしているわ。」というのだった。
少女は”少し”変なのではないかと考えながら、放課後には「絵には少し自信がある。いい勝負になるだろう」と意気揚々に絵を描き持って行った次の日。
結果は惨敗だった。
僕のは、すいとうとわかるくらいの、形、質感は描けたが、何せ少女がうますぎる。少女の絵はいったいどんな色でどんな絵柄が付いているかわかる位の鉛筆の色、
精密さ、そこに物があるという空気間、本当に黒い鉛筆と白い消しゴムだけで書いたのかと、うたがってしまうレベルだった。
自信があったがために落ち込んでしまう。そんな僕を見かねた少女が、
「最初にしては、とても上手なほうよ。自信をもってコツコツと練習すればきっとー君はうまくなる。私と一緒に練習していきましょ?」と少女が朗らかにいうので、
僕は、彼女に誘われたのが嬉しくて、毎回休憩時間になると、少女の席までいって、絵を教えてもらうようなっていった。そして時折持ってくる少女の水彩画などを眺めてうっとりすることもあった。僕もこんな世界を描けるようになりたいという思いと少しずつ上達する喜びをかみしめていた。
そんな毎日を繰り返していたからだろう。
ある日、少女は「まさか、ここまで根性あるとは思わなかったわ。-クンなら、私の冒険についてこれるかもしれないわね。」もう見慣れた癖である顔に張り付いた鉛筆はスルーをして、
「冒険?ってなんだ?」思わず僕は聞き返していたが。
少女はまるで、僕と少女だけの秘密のように、にこやかにいうのだった。
「私たちは絵描きなのよー君。普通の人が見ていないものを見るそして、そんな体験をしって、それを、絵としてあらわす。そうすることで、みんなが憧れる世界を創造するの。今まで、私の絵を見てきた¥君ならわかるわよね?」
僕は、彼女の世界の秘密を知り、同時に彼女の描く絵が自分を引き付ける理由が初めて分かった気がした。
夕焼けと夜がマーブルのように溶ける空。種子を残すため、真夏の中で強く立ち、太陽を追いかけ、生き生きとしたヒマワリ。何より、海と空がどこまでも続いていくようななか、哀愁を感じる灯台。そんな世界を少女は自らの意思で追いかけ、出会い、またその世界を自身の体験を生かして描いてきたのだ。
そしてそれと同時に少女の世界の端切れを知れたこと。そして、少女がその世界に自分がいることを許してくれた。という、たまらない嬉しさがゾクゾクと心の底から込み上げてきた。そんな嬉しさを抑えて(あふれ出ていたと思うが)「わかった。僕も君の言う”冒険”につれていって。」と返すのだった。そうして、僕は本当に色々なところに、”冒険”へいった。あげだしたらきりがない。
夏には、緑の清々しさを感じ。町を見渡せる気持ちの良い風が吹く丘に、筆記用具と丘を滑るためのそり、少女は日焼けが気になるらしくお気に入りの日傘をもって登ったり。
少女のいつもの癖である、鉛筆顔貼り付けの小筆バージョンを見てからかおうかとおもったら、街を見渡し、一枚の絵に落とし込もうとする。彼女の真剣な顔に見惚れてしまったり。
それがばれて、少女に「どうしたのよ。きゅーにボーッとして。もしかして顔に絵の具ついてる!?」と勘違いをして、あわてて筆をとろうとして本当に顔が絵の具まみれになったり、そりで滑って行ってそこから戻ればいいのに、「-クンこれも、冒険の一環森探検にっ レッツゴーといって、ハイキングコースに入っていき隣の集落まで行ってしまい迷子になった。本当に大変だった。
秋には、果実ふくよかな実りに満たされた、ブドウ園にいって、ブドウと周りにあった花と黄色いトマトのような実の野草の絵を描きに行った。ブドウに虫がついいるのを少女が見ると、「これは、私たちも秋の恵みにあやがって絵を描いているのだから、私たちも,虫からブドウを守らなくてはいけないわ!」という
お絵かき少女の道徳精神(?)によって、ブドウ農園に侵入し、普段触らない虫に珍しく気持ち悪がっている姿を眺めたり、いたずらだと勘違いされ、無関係の最近起きていた、謎のいたずらの主犯の濡れ衣を着さされた。
「いった誰がこんな悪質な罠を私たちに…こうなったら、徹夜で張り込みをして無罪を証明して見せるわ!」とよくわからん闘志に燃え、本当に夜に張り込みをして真犯人を捕まえた。そいつは、後々、手を洗おう習慣ポスターの表紙になったとかならなかったとか。
その後、急に少女が急に腹痛を訴えると、原因が昼間描いていたかわいい花の実を食べたせいで、
少女曰く、「その日の晩はグラサンをした悪そうな茄が画材を持ちして逃げていく夢を見たわ。今度見たら、除草剤をかけてやっつけてやる」とのこと。
あとから、その植物を調べると”ワルナスビ”であったことが判明したのだった。
「やっぱり、グラサンかけた茄じゃない!」といって笑いあった。
お見舞いと謝罪のブドウはおいしかった。
冬には、猛烈な吹雪の中、「私はこの世界を見に行きたいの!」という少女の思いから、外に出るも、少女お気に入りの傘が風で飛んでいき少女は意気消沈のごとく「あの傘がないと私は外に出たくない。」と悲しそうに沈むのを見て、僕が代わりに吹き付ける雪に殴りつけられながら、傘を必死に探しまわった。もちろん、見つかることはなかったのだが、代わりに藍色と白の清々しい傘を買ってきて喜んでもらえた。
そのあと高熱を出して倒れて少女の看病を受けるといった至福…げふんげふん。つらい時間を過ごしたりした。
僕の部屋で少女は、大筆が顔に乗せれるか検証した。結果は、僕の部屋の床が墨汁まみれになった。
「これは、そう そうよ。お見舞いのイカが墨を吐いたのよ。
なんてひどいイカ今度であったら、活きづくりにしてやるわ」といっていた。
少女が笑ってくれてうれしかった。
けど、それからだろうか。少女は時々描いた絵を見せてくれないときが
あった。
僕は、いつもと違う可愛らしいそれでも大きなカルトン(絵を収納したり、画板として使う板)を入れるカバンが置いてあることに気が付いた。
少女に嫌われたのかと思って、慌てたりもした。けど、そんな様子を見かねたのか、
「見せられるようになったら見せるから!今はまだ気にしないで~
」と目を合わせないようにいわれて、何なのかわからず、もやもやしたりとかもしたのだが、少女を信じるのだった。
春先には漁師たちが、浜で仕事をしているのを眺めて絵を描いていた。
「たくましい海の男はかっこいいわね。」と少女がいうので、
僕だってある程度の筋力はあるのにと、むすっとしていると。
「嫉妬してるの?」と甘い声でからかわれてしまった。
その日は少女の荷物まで持って歩き、日傘まで差しながら歩いた。
少女は少し、からっかっただけなのにここまでするとは、思わなかったらしい
家まで、送るとしっかり者の少女にしては、珍しくそっぽを向いて「ありがとう。」と言うのだった。
そんな、”冒険”づくしで、しっかりとまとめたら絵本が何冊もできそうな毎日だったからだろうかたまに、少女は学校を休むのだった。
そんな日は、僕が見てきた外の世界を彼女の横で描き、彼女にみせるのだった。
どんなに、美しい風景でも、自分の体験を通して、感じてよりきわだたせることがだんだんできるようになっていったが、絵にはいつも、1人の少年と少女がいるのだった。
ある時、少女は顔を赤くして恥ずかしそうに言ったのだった」。
「いつもあなたが描く世界には、君と私がいるね。」
僕は、恥ずかしさとドキドキで顔を真っ赤にしながらも、
「僕と君がいる世界しか僕には考えられない。」とすぼみながら言ったのだった。
すると少女は「私も…いや、なんでもない」
その日はしばらく、声をかけることも、顔を合わせることもできなくて、
自分の鼓動が相手に部屋中に広がっているのではないかと疑うほど心臓が高鳴っていた。
このようにして、一年が過ぎ、僕たちは中学生となった。
中学生も勉強にこそ追われたが変わらない2人の毎日が続いていたけど、進歩は続いていた。
少女から日々絵を教えてもらっていた効果がめきめきとわかるようになったのだ。
デッサンは、静物、つまり動物などの生きていて動き出すものではないリンゴやペットボトルなどは少女と並ぶほどに描けるようになり、僕は、少女と共に県唯一であり、難関校である公立高校の美術科に進学することに決め、努力を続けていた。
デッサンだけではなく、色づかいの感覚、自分が何を表現したいかということも突き詰めていった。僕は、この世界の静かで、幸せに満たされている透き通ったものを追求した。
夕焼けがきれいな空と砂浜。
人が来ないような厳しい磯に打ち寄せ、銀のしずくのように舞う波。
ハイキングコースの展望台から見える。朝の生活感あふれる駅へ行ったり、コーヒーを飲んだり、一日の始まり。
僕が、通して見えるその絵にはどこかしらに僕と少女がいた。
夕焼けの中では2人が並んで歩き。
厳しい磯の前では、2人が手を取り合い。
街中には、2人が仲良く登校する。
僕の世界は常に少女と一緒だった。正しくいうのなら、少女がいない世界など、描きたくなかった。自分の絵の世界は何よりも、少女が毎日を”冒険”と発見で彩ってくれたから存在するのだ。少女がいなかったら僕の世界は存在しない。
もちろん、少女に対する、温かくて幸せで、なのに時によって、イチゴよりも甘酸っぱくさせて僕の心をどきどきさせる。そんな恋というものも分かり始めていた。。僕にとって少女はかけがえのない存在へとなっていった。
それを、しっかり自覚してからだったろうか。
少女は中学生にもなって、少し以前よりも大人びた気はしていたが、相変わらずの肩にかかるかかかりきらないようなボブを揺らしながら、活発に絵を描いていた。そして、僕がお気に入りの代わりとして送った傘を常に持ち歩きながら放課後は
着替える時間も惜しいかのように画材と最低限の荷物だけをもって
「さぁ、今日もかくわよー。ーくん」と当たり前のようにいうのだった。
そんな、少女がある春日の放課後にいつもの画材セットといつもは持ってこない少女が「見せられるようになったら見せるから」と言っていたカルトンを持ってきていうのだった。
待ち合わせの場所に僕が着くと少女はこころなしか、心細そうに
「今日は灯台にいくの、ー君もついてきてくれるわよね?」
僕は、いつも一緒に絵を描いてきているのに急にどうしたんだろうと思っていたけど少女がカルトンバックを持っているのを見てやっと僕に見せてくれるんだと分かって
「もちろんだよ」と暖かく言うのだった。
ついに、僕に秘密にしていた絵を見せてくれるという喜びと共に、僕は会話を弾ませながら灯台まで歩きとバスを使って片道30分ぐらいでついた。
灯台は、海辺切り立った崖に立っておりバックに広がる蒼い空と藍い海の中に気持ちのいい海風を受けてぽつんと立っていた。特に恋人の聖地でもないので、こんな午後の4時ぐらいに僕たち以外に灯台に来るもの好きはいない。
気持ちがいい空間を2人占めしながら僕らは、絵を描き始めた。
僕は、カルトンの絵を持ってきたのだから見せてくれるとおもってむずむず期待しながら描き進めていた。
そんなふうにしていたのがばれたのか少女は優しい顔で(しかし顔には筆がのっていたが)いうのだった。
「気が付いた?ここは、去年の”絵になる街”の灯台よ。本当はここには砂浜はないのだけども、この灯台が砂浜にあったらきれいだとおもわない?」
微妙にまた勘違いしているがそれでも、2人の出会いの場所に来れたのは嬉しかった。
そうして幸せな時間を過ごしていたら、日が暮れてきた。まだ少しゴールデンアワーには早い。
周り一帯は金色の光に包まれ始め、海と夕焼けが原色のチューブを混ぜたかのように鮮やかになる。僕たちも例外ではなく、このあたたかな光に包みこまれた。
そうすると、少女がついにあのカルトンを取り出した。
僕は、やったと思いながら少女の近くへとよった。
「
「いつかに見せれるようになったら見せるといったけど今日はその勇気をだしたの。」そういって、カルトンから絵を取り出した。
そこには、2人で向かった風景と共に僕たち2人が描かれていた。
僕は、昔に2人でいる絵ばっか描いている絵に突っ込まれて告白まがいのことをしたのを思い出し、顔がこの夕日ぐらい真っ赤になりそうだった。
夕日でごまかせればいいと思いながら少女の声を自分の鼓動で消し去られないようにと注意深く聞いた。
「見せれなかったのは、恥ずかしかったの。私の絵に
「好きよ。ー君」
「私が望む描きたいと望む世界には、君がいないとだめなの。君がいる世界以外はかきたくないし、考えたくないわ。」
「だから、わたしとt」僕は最後まで少女1人に言わせまいと少女に向き合い優しくこつんとおでこを合わせていった。
「僕もです。僕もあなたがいない世界は考えたくないし、描きたくない。
どうか、僕と付き合ってください。」
少女は顔をもう夕日ではごまかせないほど真っ赤にして
「なっ、な、なななななななぁ」とうめいている。
小さく「私が言おうとしてたのに」とつぶやいてから
「よろしくお願いいたします。」と幸せいっぱいの顔でいうのだった。
そうすると少女はルーズリーフのファイルを出し恥ずかしそうにいった。
「お願いがあるのだけども、交換日記にその日何を見たか互いに書くようにしない?
僕は、なんてかわいいんだとおもいながら「もちろん、じゃあ今日から始めようか、と日記をうけとった。」
僕らは、画材のかたづけをした後、どちらからとはいわず手をつないで歩いて帰った。
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