第3話消しゴム分割事件

私の席は、二列目の真ん中辺り。先生からよく見える場所だ。だからと言って、なんて事は無いんだけど。


「改めて担任の結城将真だ。担当教科は国語だ。高校は人生の大切な時季。今からの3年間が、君たちの一生を決めることもある。そんな時季に立ち会えることをとても光栄に思う。これから宜しく。次は亜月先生お願いします。」


「亜月ケイゴです。皆さんと年も近いので、気軽に話しかけてもらえたら嬉しいです。担当は数学ですが、物理や英語も好きです。授業で分からないところがあったら、いつでも聞きに来て下さい。」


「亜月先生ありがとう。では、オリオンテーションを始め…。」


「あー!!先生、ポートフォリオ忘れたぁー!」


「…滝川初日からやるなぁー(苦笑い)。隣に見してもらえ。」


「ねぇ、ポートフォリオ見せてくれる?」


滝川は少し周りを見回してから、ミラに声を掛ける。


「あっ、うん。いいよ!じゃぁ、席くっつけるね。」


「ありがとう!華峯さんも、困ったら何でも言ってね!」


「アハハ。このくらいいいよ!」


(お隣さん、話しやすい男の子で良かった!)


「ここ、大事だからメモって。」


(あ!筆箱出して無かった。あれ?あれ?あれ?無いー!筆箱…忘れた…初日に…。私の出鼻が挫かれた…。)


「どうしたの?」


「あの、筆箱忘れたっぽくって…。」



「一日貸してあげるよ!ポートフォリオのお礼!」


滝川くんはシャーペンを渡してくれる。


「いいのぉ!?ありがとう(感涙)」


「消しはゴム一個しかないからー。」


そう言うと、滝川くんは消しゴムをケースから出し、徐に割った。


「半分どうぞ。」


「えっ!消しゴム割っちゃって良かったの?」


「いいよ。もう千切ったし。」


「ありがとう。じゃあ、一日借りるね!」


少し申し訳なくも感じたが、優しい隣人さんに救われて、オリエンテーション一日目は無事終わった…


と思ったんだけど、帰り際、ある人物に止められてしまったのである。

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