出張でポロリ(男性視点・野球拳)

この季節になると、16時を過ぎたあたりからゆっくりと日が暮れはじめ、ほどなくして街は夕闇に包まれる。

合わせるように立ち並ぶ高層ビルにはポツポツと光が灯り、あっという間に美しい夜景を形成していく。


元より慌ただしい師走ではあるが、今日はそれ以上に街がにぎやかであった。

何を隠そう、今日はクリスマスイブなのだ。

どこもかしこも聖夜の飾り付けやイルミネーションが施され、街行く人々もどこか幸せそうである。


そんな喧騒のなかを、俺は足早に歩いていた。

信号待ちをしながら、手袋のない手を擦り合わせて暖めたりして。

時折わざと深く息を吐きだし、真っ白になっていく様子を楽しんだりして。


「クリスマスに出張なんて、ついてないですね。」


俺の横で、後輩の山崎が口を尖らせて言った。

小さな体にオーバーサイズのコートとマフラーを身につけて、モコモコになった姿はいかにも女の子らしい。


「仕事なんだし、仕方ないだろ。」


俺はそう答えると、もうすっかり暗くなった天を仰いだ。

うっすらと白い雲が見え、雨が降りそうな気配である。

この寒さなら、もしかしたら雪になるかもしれない。


「あーあ、同期のクリスマスパーティー、行きたかったなぁ。」

「おいおい、そこは彼氏とデートじゃないのかよ。」


ぼやく山崎に、俺は軽く笑いながら問いかける。


「そうしたいですけど、彼氏、いないですから。」


あっけらかんと言い放った彼女は、なぜか自分で笑いはじめる。

釣られて笑うと、ふたりの間をびゅうっと冷たい北風が吹き抜けた。


俺たちは東京の広告代理店で働いている。

華やかなイメージを持って入社したが、現実は色んな会社の御用聞きみたいな仕事で、毎日へとへとなるまでこき使われていた。

今日も地方のイベント運営のため、クリスマスだというのに出張に駆り出されたわけだ。


山崎とはチームで仕事をするようになってから、もうすぐ1年くらいか。

3つ年下の彼女はとても優秀で、後輩というより相棒といったほうがしっくりくる。

今日の仕事もふたりで首尾よく片付けたので、今から宿泊先のホテルへと帰るところだった。


「後藤さん! せっかくですから、何か食べていきませんか?」


繁華街の前を通りがかった時、山崎が声をあげた。

その顔には「おなかがすいた」と書いてある。


「いいぜ。うまい鍋の店知ってるからそこにしよう。」

「ええー! 全然クリスマス感ないじゃないですか!」

「そういうところはどうせ予約でいっぱいだろ。」


山崎はぶーぶー文句を言っていたが、店に到着すると嬉しそうに食べ物を注文する。


「お疲れ様でしたー!」


俺たちは乾杯すると、一気に生ビールを飲み干した。

仕事終わりのビールは最高だ。このために生きていると言っても過言ではない。


「今年も終わっちゃいますね~。」

「そうだな。このあいだ正月だと思ったのに、あっという間だったわ。」

「うわ。今の、めっちゃじじくさいですよ。」


ケラケラ笑う山崎に、俺は少しだけむっとする。

気づけばアラサーと呼ばれる歳になっていた俺は、「おじさん」だとかそういう言葉に敏感になっていた。


「山崎だってそんな歳変わんないだろ。」

「私はまだ20代中盤なんで、残念でした。」


今では軽口を叩きあう山崎も、最初はどう接して良いかわからなかった。

山崎は小柄な体に可愛らしい顔と、いかにも女の子らしい見た目をしていたが、反して気が強く、能力の高さも相まって部署の中では恐れられていた。

しかし、一緒に仕事をしていくうちに、彼女は負けず嫌いなだけで、本当は優しい性格であることに気がついた。

それからはすっかり打ち解けて、今では会社で一番仲が良い後輩だ。

少々生意気な発言が多いが、そこも含めて俺は山崎のことを気に入っていた。


お腹いっぱいになった俺たちは、ほろ酔いで店を後にした。

外は身震いするほど寒く、よく見ると、空から白い雪がちらほらと舞い始めていた。


「わー! 雪ですよ!」


山崎が嬉しそうな声をあげる。


「クリスマスに雪が降るなんて、ロマンチックですね!」


両手を広げ、くるくると回る山崎を俺は微笑ましく見守る。


「おい、今に転ぶぞ。」

「大丈夫ですよ、まだ全然酔ってないですから。」


まだ傘もいらないくらいの儚い雪のなか、俺たちはホテルへと向かっていく。


「あ、ケーキ買っていきましょうよ!」


山崎が指さす先には、コンビニエンスストアの店の外に、クリスマスケーキが山のように積まれていた。

この時間帯にあの在庫量は悲惨である。


「どこで食べるんだよ。」

「ホテルで食べればいいじゃないですか。シャンパンも買っちゃいましょ。」


山崎はそういうと、ケーキの横にあるシャンパンも手に取り、店内へと進んでいった。

どちらも物を売るレベルではないほどの、破格の値段になっている。


「後藤さんは他に何か食べますか?」

「まあ、俺は酒があれば満足だよ。」


山崎の後についていくと、彼女はコンビニの中を物色しながら、気に入ったものをどんどんカゴに入れて行く。


「おいおい、どんだけ飲むんだよ。」

「明日は帰るだけなんですし、いいじゃないですか。今日は負けませんよ~。」


山崎は大量に酒の入ったカゴを持ちあげ、にやりと笑う。

仕事柄飲み会が多いのだが、山崎はそのたびに俺に飲み比べを仕掛けてきていた。

彼女は酒に弱いわけではないのだが、人並み以上に強い俺に負かされては、泥酔してタクシーに放り込まれていた。


「何もクリスマスにそんな飲まなくても…。」

「クリスマス"だから"ですよ! ふたりでパーティーしましょ。」


苦笑する俺に、山崎がにっこりと笑いかけた。


*******************************************************


「後藤さんの~! ちょっと良いとこ見てみたい~!!」


山崎に煽られ、俺はグラスいっぱいのお酒を一気に飲み干す。

ホテルに着いたあと、俺の部屋にやってきた山崎と晩酌を開始していた。

すでにケーキとシャンパンはなくなり、大量のお酒とおつまみに手を出しはじめている。


山崎は小さな顔を真っ赤にしながら、楽しそうに手を叩いていた。

横にあるテーブルには空になった缶ビールが何本も置かれており、すっかり出来上がっているようである。


「あはは、やっぱり後藤さんはお酒強いですね~!」

「そういう山崎は、まだ飲み足りてないんじゃないか?」


俺の言葉に、山崎も一気にお酒を呷る。

グラスを置くと、また一人でケラケラと笑い始めた。

彼女は酔うといつも笑い上戸になるのだ。


「楽しいですね~! 何かゲームでもやりませんか?」


山崎の言葉に、俺はぼんやりとした頭を働かせる。

飲み会を盛り上げてきた数々のゲームが思い浮かぶが、どれも大人数で楽しむもので、2人だけでやるようなものではない。

どうしたものだろうか。そう思った俺はふと、突拍子もないアイデアが浮かんできた。


それは――、本当に出来心だった。

酔いのせいだろうか、普段は意識したことのない、山崎のスカートから覗く細い足に視線が吸い寄せられる。

続いて、上半身に目が留まり、そこにある微かな女性の膨らみを凝視した。

最後に、こちらを向いて笑っている山崎の顔を見て、俺はぽつりと言った。


「よし、野球拳をやろう。」


その言葉に、山崎はきょとんとして黙り込んだ。

もしかして、野球拳を知らないのだろうか。

そう思った瞬間、彼女の顔はみるみる赤くなり、手元にあった空き缶を投げつけてきた。


「この、へんたい!!」


俺が空き缶を避けると、今度は肩のあたりをポカポカと叩いてくる。


「後藤さんがそんなことを言うなんて思いませんでした! 私のこと、そんな風に見てたんですかーー!」


コミカルに怒る山崎の姿にちょっと笑いながらも、俺は先ほどの発言を反省する。

いくら仲良しとは言っても、さすがに良くなかったな。撤回しよう。

そう思っていた矢先に、山崎の手が止まったので、俺は驚いて彼女の顔を見た。

彼女は俺の隣で俯いていたが、小さな声で微かに何かを言っているのが聞こえた。


「…ですよ。」

「え?」


聞き返した俺に、山崎はぱっと顔をあげてこちらを見る。

すぐそこにある彼女の目は、酔いのせいかとろんとしていた。


「いいですよ。やってやりますよ、野球拳。」

「ええ!? いいのか?」


俺は自分で提案しておきながら、驚いて声をあげた。

野球拳をやるということは、つまり、裸になるかもしれないということだ。

彼女はそれをやると言っているのだ。


「大丈夫です。私、負けませんから!」


仁王立ちする山崎は、なぜか自信満々である。


「その代わり、負けたら1枚脱ぐだけじゃなくて、お酒を一気飲みしましょう。」

「あと、後藤さんを全裸にしたら、クリスマスプレゼントでバッグを買ってください。」


次々と条件を提示する山崎は、どや顔で指を立てる。

彼女の頭の中では、すでに俺を全裸で泥酔させるビジョンが出来ているのだろう。

自分が負けて全裸になる可能性を、考えないものだろうか。


とはいえ、こちらとしてはもちろん断る理由がないため、俺たちは野球拳で勝負することになった。

何事も言ってみるものである。


「野球するならこういう具合にしやしゃんせ~♪」

「アウト!セーフ!よよいのよい!」


俺は勢い良くグーを出すが、山崎の小さな指はすべて開かれており、パーを出していた。


「くそー!」


俺は悔しがりながらワイシャツを脱ぎ捨てると、目の前にあったグラスを一気飲みした。

野球拳仕様でとんでもない濃さになっているお酒に、俺はむせ返る。


「ふふふ。私、じゃんけん強いんですよね~。」


山崎はパーの手のまま、得意げにこちらに手を振った。


「じゃんけんなんだから、強いも何もないだろ。」

「負け惜しみは、最後に聞きますよ~!」


上機嫌の山崎に、俺は再び勝負を仕掛ける。


「アウト!セーフ!よよいのよい!」


今度はパーを出すと、山崎は拳を握りしめ、グーを出していた。

つまり、俺の勝ちである。


「あれー?」


山崎は首を傾げながら、目の前のグラスを一気飲みした。

そして、固唾を飲んで見守る俺の目の前で、スカートの中に手を入れると、薄いストッキングを脱ぎ始める。


「それも1枚にカウントされるのかよ。」

「当たり前です。女子の体をそんなに簡単に見れると思ったら、大間違いですよ。」


素足になった山崎は、俺に向かって拳を突き出した。


「さあ、続きをやりましょう!」


*******************************************************


「早く脱げよ。」

「…。」


山崎は悔しそうにキャミソールの裾に手をかけるが、そのまま固まってしまう。

しかし、彼女が脱げるのは他にスカートしかないため、上下どちらかは下着姿にならなければいけなかった。


勝負は五分五分で、それぞれ3回づつ負けていた。

俺は最初のワイシャツと、ズボンに靴下を脱ぎ捨て、肌着のTシャツにパンツという格好だ。

山崎はというと、ストッキングにブラウスを脱いで、3枚目の脱衣で苦しんでいるところだ。


山崎は意を決したようにキャミソールを持ち上げると、腕をクロスさせて頭から脱ぎ去った。

彼女の上半身は白い肌が露わになり、胸元を隠す青いブラジャーが視界に晒された。

しかし、その下着を観察する前に、山崎が腕で隠してしまう。


「おい、隠すなよ。」

「…胸は自信ないんです。」


上目遣いにこちらを睨む山崎に、俺は少しドキリとしてしまった。

彼女の言うとおり、腕の隙間から見える膨らみはそれほど大きくはない。

しかし、それは彼女の小柄な体とバランスがとれており、かえって魅力的に見える。


「次から絶対負けませんから!」


メラメラと燃える山崎と俺は、7回目のじゃんけんを開始した。


「よよいのよい!」


結果は俺がチョキで、山崎がパー。

またしても山崎の負けである。


「もう、なんでよ~!」


山崎はその場に座り込むと、頭を抱えた。

本気で悔しがる彼女に、俺はさすがに申し訳なくなってくる。


「野球拳はこのくらいにして、何か別のゲームでもやるか?」

「いや、続けましょう! 決着がつく前に逃げるなんて、絶対嫌です。」


山崎はそう言うと、立ち上がってスカートを脱ぎ始めた。

隠す手のなくなったブラジャーが丸見えになり、俺は思わずじっくりと眺めてしまう。

たしかに、大きさとしてはBカップくらいだろうか。

それでも、彼女のきめ細かな白い肌と形の良い膨らみは、十分に女性らしいものであった。


山崎がホックを外すと、スカートがストンと床に落ち、ブラジャーと同じ青色のパンツが現れた。

俺は唾をごくりと飲み込む。

普段からずっと一緒にいる山崎の下着姿に、俺は興奮を隠しきれなくなってきていた。


「さあ、次こそ勝ちますから!」


山崎は威勢良く言うが、その顔は耳まで真っ赤になっており、明らかに恥ずかしそうだった。

あまりに負けず嫌いというのも、困りものである。


「よよいのよい!」


今度は山崎の宣言どおり、グーを出した俺が負けてしまった。

俺は一気飲みをして肌着のシャツを脱ごうとするが、なんだか足元がおぼつかない。

すでにだいぶ飲んでいるため、平衡感覚がおかしくなっているのだ。

残っているのは最後の1枚というのもあるし、これ以上負けるのは極力避けたい。


「ぷぷ、可愛いお腹ですね。」


山崎は俺の丸くなり始めた腰回りを指さした。

ちくしょう、こんなことならもっと鍛えておくべきだった。


「ほら、無駄口叩いてないで勝負するぞ。」

「ふふふ、その最後の一枚を、脱がしてやりますよ。」


山崎は少し呂律が回らなくなっている。

お互い限界は近いようだ。気力を振り絞って、俺はじゃんけんの手を出す。


「よよいのよい!」


俺が出したのはグー。そして、山崎の手は人差し指と中指だけを伸ばしている。

つまりチョキ、俺の勝ちだ。


「ええーー!!」


山崎が悲鳴をあげた。

無理もない。彼女はすでに下着姿であり、負けたということはそこからさらに脱がなければならないのだ。


彼女はどちらを脱ぐのだろう。

俺は山崎の上下の青い下着を交互に見比べた。

仲の良い後輩のあられもない姿を想像し、俺は胸がドキドキと高まっていく。


「う~~。」


山崎は声にならないうめき声をあげると、くるりと後ろを向いた。

美しい背中と、ぷりっとした可愛いお尻に俺は釘付けになる。

山崎はそのまま背中に手を回すと、ぷつりとブラジャーのホックを外した。


俺はその様子をじっくりと眺める。

後ろを向いているので肝心なところは見えないが、それでも彼女がブラジャーを外し、上半身が裸になるところを、瞬きも惜しんで見つめていた。


「あんまり、見ないでください…。」


こちらに向きなおった山崎は、両手を交差して自分の胸を隠していた。

俺は微かに見える膨らみから目が離せない。


「次が最後ですね。」


山崎はそう言うと、慎重に右手を離して前に突き出した。

胸はうまく左手だけで隠しているが、もはやそのほとんどは露わになっている。


「そうだな…。」


俺も右手を前に出す。

互いに残る衣服は1枚のみ。笑っても泣いても、次が最後の勝負だ。


「野球するならこういう具合にしやしゃんせ~♪」

「アウト!セーフ!よよいのよい!」


俺は祈るように目をつぶると、手をいっぱいに開いて前に出した。

山崎は何も言わない。

恐る恐る目を開けると、そこには、握られたままで突き出された、彼女の小さな手があった。


「…参りました。」


山崎はそう言うと、ぺたんとその場に座り込んだ。

俺も気が抜けて椅子に座り込む。

緊張が解けたせいか、急に酔いが回ってなんだかクラクラしてきた。


「じゃあ、脱ぎますね…。」


山崎はそう言うと、ぴょんとベッドの上に飛び乗った。

その場で膝立ちになり、こちらをじっと見つめる。


「な、なんだよ。」

「罰ゲームなんで、ちゃんとやらせてください。」


どこまでも負けず嫌いな彼女は、右手を使ってパンツを脱ぎ始める。

しかし、片手ではなかなかうまくいかない。

山崎はぎゅっと目をつぶり――、ついに意を決して、左手を胸から離した。


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露わになった、山崎の小ぶりなおっぱい。

確かに大きいとは言えないが、シミ一つない真っ白な肌に、理想的なお椀型の乳房は美しいとしか言いようがない。

しかも、その先端にある乳首の色は、まるでベビーパウダーをまぶしたかのように淡く、白い肌に溶けてしまいそうなほど薄いピンク色だった。

こんなに綺麗な色の乳首は見たことがない。

乳輪は小さめで、ぽつんと小さく主張する突起がとても可愛らしい。


山崎は両手でゆっくりとパンツを下ろしていく。

段々と薄い陰毛が見え始め、ついに女性の割れ目が顔を出した。

ぴたりと閉じた秘裂は、彼女の清廉さを表しているようだった。

そのままパンツを脱ぎ捨てると、山崎は完全に全裸になった。


俺は彼女の体を、頭のてっぺんからつま先までくまなく凝視した。

可愛らしいおっぱいも、儚い乳首も、細い脚も秘密の花園も、すべてを脳裏に焼き付ける。


「ああ…! 恥ずかしい…!」


そんな俺の視線を感じ取ったのか、山崎は消え入りそうな声で、ついに弱音を吐いた。

涙でいっぱいの目がうるうると輝き、今にも泣き出しそうではあったが、最後の意地なのか一切体を隠そうとはしない。

その真っ赤な顔のまま上を向き――、少し固まったかと思うと、ベッドの上にぱたりと仰向けに倒れてしまった。


俺は慌てて彼女のもとに駆け寄った。

しかし、彼女は倒れ込んだベッドの上で、安らかに寝息をたてていた。

どうやら酔いが回っただけらしい。

俺はほっと息をつくが、改めて彼女の一糸まとわぬ体を眺める。


まったく、俺も男だというのに、なんて無防備なのだろうか。

裸の男女がベッドでやることと言えばひとつしかない。

山崎は可愛い後輩だが、据え膳食わぬは男の恥というしーー。


そこまで考えたところで、俺もふらっと彼女の横に倒れ込んだ。

あ、れーー?

俺もずいぶん酔ってしまったようだ。

起きあがろうとするが、体に力が入らない。

そのまま、俺の意識は夢の世界へと旅立っていった。


*******************************************************


「…さん、後藤さん。」


翌朝、俺は山崎が呼ぶ声で目を覚ました。

頭がハンマーで殴られたように痛いし、なんだか胸がムカムカする。

完全に飲み過ぎだ。


目を開けると、そこには裸の体にシーツを巻きつけた山崎の姿があった。


「大丈夫ですか、後藤さん。」

「ああ、大丈夫だ。」


心配そうにこちらを覗き込む山崎に、俺はなんとか答える。

もうすっかり夜が明けているようで、窓から明るい日差しが入り込んでいる。

その光が山崎の白い肌を照らし、美しく輝いていた。


「あの、実は昨日のこと、あんまり覚えてなくて。」


山崎はそう言うと、恥ずかしそうに顔を赤らめる。

シーツで隠しているとはいえ、彼女はまだ全裸だった。


「えーと、どこまで覚えているわけ?」

「野球拳で負けて、パンツ脱いだところまでは覚えてるんですけど…。」

「じゃあ大丈夫だよ。そのあとすぐ寝たから。」


俺の返答に、山崎はなぜか首を傾げた。


「一応、確認なんですけど…。」


彼女は顔を真っ赤にして、上目遣いにこちらを見る。


「私たち、何もなかったんですよね…?」


俺はその言葉の意図を汲みとり、片方の眉をつり上げた。

まあ、乙女としてそこは確認しないといけないよな。


「ああ、何もなかったよ。安心して。」


俺の返答に、山崎は安堵のため息をついた。

そして、にやりと笑ってこちらを見る。


「あの状況で何もしなかったなんて、後藤さん、意外と紳士なんですね。」

「なんだよ、意外って。」


調子を取り戻した山崎に、俺は軽くつっこみをいれる。

何もしなかったのではなく、何もできなかったということは、内緒にしておこう。


「うー、頭いたいー。」


山崎はそう言うと、ベッドから降りようとする。

拍子にシーツがはだけ、彼女の可愛らしいおっぱいが一瞬露わになった。

明るいところで見るおっぱいも美しい。


「ちょっと! 服着るんでこっち見ないでください。」


山崎がこちらを睨みつけるので、俺は渋々反対側を向く。

しかし、やっぱり気になるのでちらりと覗いてみると、彼女の可愛らしいお尻が目に入った。


「もう、見ないでくださいってば!」


ぴしゃりと言われた俺は今度こそ反対の方を向くのだった。


服を着た俺たちは、二日酔いのままホテルの朝食を食べに向かった。

そこで驚きの光景を見ることになる。


「わー! めっちゃ積もってますよ!」


窓の外は一面雪景色になっており、道路も数cmは積もっているようだった。

昨晩の雪が、寝ている間に強まっていたらしい。


「あ! 飛行機!」


山崎はそう言うと、慌ててスマートフォンを取り出した。

俺も気がつき、急いで帰りの便を確認する。


「げ! 帰りの飛行機、欠航じゃん!」

「席空いてるの、今日の夜までなさそうですね…。」


山崎は困ったように眉をさげた。

幸い今日は休みなので仕事は問題ないのだが、帰るまでずいぶん時間が空いてしまった。


「どうしましょう…?」


こちらを見る山崎の顔を見て、俺は少し考える。

そして、ひとつのアイデアを思いつき、思わず微笑んだ。


「じゃあさ。せっかくだし、どこか観光でもしていこうぜ。」


俺の言葉に、山崎の顔がぱっと輝いた。

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