新歓ライブでポロリ(女性視点・衆人環視)
"ギターってのは、たった6本の弦を伝わって出てくる人間性なんだ。"
高校時代の先輩が教えてくれた言葉だ。
たしか、有名な漫画に出てくるギタリストの台詞らしいのだが、私はその漫画を読んだことがない。
でも、言っていることはわかる。
ギターはモデルや年代の差はあれど、基本的には同じ構造だ。それでも弾く人によって驚くほど音色が変わる。
最初にギターを握った時に、私も自分にしか出せない音を出したいと、強く思ったものだった。
そんなギターの魅力に取りつかれて、はや4年。
いつの間にか大学2年生になっていた私は、とあるライブに向け、練習を続けていた。
「よし、じゃあもう一回行くよ!」
私が声を張り上げると、ドラムの直人がリズムをとる。
すぐに曲のイントロがはじまり、私はギターをかき鳴らしながら熱唱する。
隣ではリードギターの賢二と、ベースの徹が踊り狂っていた。
軽音サークルに入部して結成したこのバンドも、もう1周年になる。
最初は喧嘩したりもしたが、今ではお互いのことをよく知る良いチームになっていた。
賢二が華やかにギターソロを弾きあげ、曲は最高潮に達する。
自らが奏でる音に包まれている瞬間が、私が一番幸せを感じる時だった。
「薫、大サビのところ少し走ってただろ。」
曲が終わったところで、直人が私に注意する。
走るとは、リズムがだんだん早くなってしまうことだ。
「ごめん、つい楽しくなっちゃって。」
私は舌をペロッと出して謝る。
その様子に直人は肩をすくめた。
「気持ちはわかるけど、もう本番まで時間ねーぞ。」
本番――今度行われる、うちのサークルの新歓ライブだ。
入部する新入生の数がかかっているので、どのバンドも日々熱心に練習している。
特に私たちのバンドはトリを務めることになっていたので、責任は重大だった。
「まあ、薫なら大丈夫だろ。いつもライブのときは覚醒するしな。」
ギターの賢二がにこやかにフォローする。
「なにその、普段は覚醒してないみたいな言い方~。」
「ははは、ライブのときは"特に"ってことだよ。」
他愛のない会話に、防音スタジオは笑いに包まれる。
その後も私たちは練習を続け、帰路についたのは夜も更けたころだった。
「そういえば、ライブの衣装はどうするよ?」
大学から駅に向かう道を横に並んで歩きながら、直人が問いかける。
ライブでは見た目も重要で、今までどのバンドも凝った衣装を用意していた。
「うーん、やっぱり私はPVの衣装を真似したいな。」
今回私たちが演奏する曲は、とある女性ボーカルのバンドのカバー曲だった。
PVでは豹柄のビキニの上に白いオーバーオールを着たボーカルがとても格好良くて、初めて見たときは衝撃を受けたのを覚えている。
「薫はいいかもだけど、俺たちもあれやるわけ?」
直人が苦笑する。PVでは男性メンバーは上裸にオーバーオールという出で立ちだった。
「まあ、みんなは好きな格好しなよ。私はあれでいくね。」
そう言いながら、私はステージに立つ自分の姿を想像する。
まだビキニもオーバーオールも持ってないので、今度買いに行かなくては。
「薫のおっぱいで、新入生もいっぱい入るかもな。」
「ほんとそういうことしか考えないのね。馬鹿なんだから。」
ケラケラと囃し立てる賢二に、私はため息をつく。
とはいえ、人前でビキニ姿を見せられる程度には、自分の胸には自信があった。
ピロン♪
ふいに携帯電話がなり、私はメッセージを確認する。
連絡してきたのは、新入生の木山くんだった。
『新歓ライブ、いよいよ来週ですね! 楽しみにしてます!』
可愛らしい絵文字とともに送られてきたメッセージに、私は思わず顔がにやける。
その様子を見て、直人がふっと鼻で笑った。
「またあの新入生? 薫のこと好き過ぎだろ。」
「ふふ、私はあんたらと違って意外とモテるのよ。」
私はそう答えながら、木山くんにメッセージを送る。
『いい感じに仕上がってるから、楽しみにしてて!』
木山くんは、入学式のときに勧誘した新入生だった。
可愛らしい顔をした美少年で、その場で意気投合したので連絡先を交換していた。
「彼氏いたことないくせによく言うよ。」
「うるさいなあ、あんたらもそうでしょ。」
正直なところ、木山くんは見た目に反してグイグイとアプローチしてくるので、少し対応に困っていた。
でも悪い子でもないし、他に意中の異性がいるわけでもないので、なんとなくやりとりは続いている。
「その新入生、薫のビキニ姿を見たら鼻血出すんじゃね?」
「もういいから、その話は。」
賢二に厳しくツッコミを入れたところで、駅に到着した。
私たちはそれぞれの電車に乗り、家へと向かう。
窓ガラスから見える街の景色を眺めながら、私は新歓ライブに胸を高まらせるのだった。
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いよいよ新歓ライブの当日になった。
大学の近くで借りたライブハウスはすでに満員で、100人以上が集まっているようだった。
私は集合時間から少し遅れて、楽屋の扉を開いた。
「遅いぞ、薫。もう開幕しちゃうよ。」
「ごめんって。これなかなか売ってなくて。」
私は口を尖らせる直人にそう言うと、先ほど買ってきたビキニ水着の入った袋を持ち上げた。
季節外れのビキニは意外とどこにも売っておらず、ライブ当日にようやく手に入れることができたのだ。
「早く着替えてきな。」
「はいはい。」
私は返事をすると、女子更衣室に向かう。
出番は最後だが、後で着替えるのも面倒なので先に水着だけ身に着けておくことにしていた。
着ていたTシャツを脱ぎ、ブラジャーのホックを外して床に置く。
袋からビキニのブラを取り出すと、自身の胸に装着した。
『あれ、意外と小さいかも。』
三角形の布は思ったよりも面積がなく、Eカップの乳房が少しはみ出してしまっていた。
売っている数も僅かだったので、あまりサイズを吟味しなかったのが悪かったかもしれない。
『まあ、オーバーオール着るし大丈夫か。』
私はそう思い、背中の紐をきつく結んだ。
ズボンと下着も脱ぎ捨てて、ビキニのパンツも穿く。
こちらはオーバーオールで完全に隠れるので、小さくてもあまり気にならなかった。
水着のうえから脱いだTシャツとズボンを着ると、楽屋に戻る。
3人は楽器を取り出して、最後のリハーサルを行っていた。
「おまたせ。」
「うす。じゃあ、見に行くか。」
私は楽屋を出ると、観客席のほうに向かう。
最初のバンドが登場すると、会場からわーっと歓声が上がった。
「いえーーい!!」
私は演奏される曲に乗ってはしゃぎまわる。
気づけば最前列まで来てしまっていて、周りの観客と一緒に飛び跳ねていた。
『あ…。』
ふいに胸に違和感があり、Tシャツの上から少しビキニを直す。
普段のしっかりとしたブラジャーとは違い、小さなビキニは飛び跳ねたりするには向いていないようだ。
とはいえTシャツも着ているので、私はあまり気にすることなく無邪気にはしゃぎまわった。
「薫、そろそろ準備するぞ。」
3つ目のバンドが終わったところで、直人が声をかけてきた。
私は頷き、観客席を出ようとする。
そのとき、誰かに声をかけられた。
「薫さん!」
振り返ると、新入生の木山くんがこちらに手を振っていた。
可愛い顔で目一杯微笑む姿は、なんだか弟みたいである。
「木山くん、楽しんでね!」
私は彼に手を振ると、楽屋へと向かった。
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「いよいよだな…!」
直人がステージの横で、興奮したようにつぶやいた。
彼らはお揃いのバンドTシャツに、白いズボンで合わせている。
私はというと、PVどおりに豹柄ビキニの上から白いオーバーオールを身に着けていた。なかなかの再現度である。
「よし! じゃあ楽しもう!!」
私はそう叫ぶと、颯爽とステージへ進んでいった。
会場の熱気はすでに最高潮に達している。
声をあげる観客の一番前に、木山くんがいるのが見えた。
「MERRY AND HANNYです! よろしくお願いしまーーす!!」
私が叫ぶと、賢二がギターをかき鳴らす。
曲が始まり、私はギターを弾きながら全力で熱唱した。
照明が近く、普段よりもなんだか体が熱くなってくる。
最初の2曲を弾ききると、予定どおりMCの時間になった。
「みんな、盛り上がってるかーー?」
私の呼びかけに、観客が叫んで答える。
満足げに振り返ると、ドラムの直人がTシャツを脱ぎ捨てていた。
「なんか、すごく暑いよね。」
私はマイク越しにそう言いながら、ゆっくりとオーバーオールの肩を抜く。
その様子に、会場からうおおおお、と歓声が上がった。
私はオーバーオールの肩紐を腰に巻き付けると、上半身はビキニだけの姿になる。
実際、ステージ上はかなり暑かったので、こちらのほうがだいぶ演奏しやすい。
少々露出が多い気もするが、ライブの興奮でそのあたりは割とどうでも良くなっていた。
隣で賢二と徹もTシャツを脱ぎ捨てたので、ある意味統一感のある格好になる。
「それじゃあ次の曲行くよー!!」
私たちは演奏を再開し、会場中に爆音を響かせる。
ライブは過去最高の盛り上がりを見せ、そのまま最後の曲まで突っ走っていった。
『ん?』
最後の曲を歌いながら、私はなんだか観客の様子がおかしいことに気がついた。
何人かが顔を見合わせ、ひそひそと話をしている。
一体何だろう。心なしか、そういう観客の数は曲が進むにつれ増えているようだった。
目の前にいる木山くんも、何だか驚いたような顔をしている。
私は不審に思いつつも、気にせず大サビを歌い上げる。
ほとんどの観客は一体となって盛り上がっていた。
曲の最後で直人がドラムを強く叩き、賢二と徹が激しく動きまわる。
私も彼らと一緒になって、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら会場を盛り上げた。
「ありがとうございましたーー!!」
私が叫び、最後にジャーン!と音を合わせて演奏は終了した。
音に合わせて盛大にジャンプし、私は決めポーズをする。
会場がわあっと盛り上がり――すぐにそれはどよめきへと変わった。
『さっきから、何だろう?』
私は顔をあげると、観客たちを見回す。
その顔は、みんな揃って私のほう、特に胸のあたりを見ているようだった。
私はその視線の先を追い、自分の体を見下ろす。
そして、小さな声で「あっ!」と叫んだ。
私の目の前には、自分のたわわに実ったおっぱいがあった。
そして、着ていたはずのビキニのブラは上にずり上がっており、乳房が全く隠れていない。
白くて形のよい膨らみも、その先端の薄茶色の乳首も、ステージを照らすライトの下で丸出しになっていた。
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私はあまりの状態にパニックになっていた。
いつから胸が出ていたのだろうか。先ほどからぴょんぴょん飛び跳ねていたのが良くなかったかもしれない。
誰にも見せたことがないのに、こんなにたくさんの人におっぱいを見られてしまうなんて――。
どうしたらいいのかわからなくなった私は、とりあえずくるりと振り返って観客に背を向けた。
「え? うわ!」
ドラムの直人が目を丸くして声をあげた。
賢二と徹もこちらを見て、同じく驚いた顔をする。
3人の視線は当然、私のおっぱいに、つんと尖った乳首に、向けられていた。
普段から何でも話せる仲でも、さすがにおっぱいを見せたことはない。
沸々と羞恥心が湧き上がってきたが、とにかく今は場を治めなければ。
私はビキニをぐっと掴んで胸を隠すと、観客のほうへ向き直る。
そして、騒然とする会場に向け、ウインクをした。
「やっちゃった♪ 内緒にしてね。」
その言葉に、会場がうおおおお!と盛り上がった。
隣で賢二が爆笑している。もちろんまだ恥ずかしさで一杯だったが、とりあえず何とかなったので、私たちはステージ横へとはけていった。
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「なあ、そろそろ顔出せよ。」
一週間後、教室で直人に話しかけられた。
私は不貞腐れたようにぷいと横を向く。
「だって…。」
「まあ、気持ちはわかるけどさ。」
直人が慰めるように言う。
ライブが終わった後、興奮が冷めた私はおっぱいを晒した恥ずかしさでサークルを休んでいた。
今でも、会場中が自分の胸を見ていたときのことを思い出すと、悶絶してしまう。
サークルの全員が自分のおっぱいを知っているなんて、普通の女子なら耐えられないことだった。
「賢二と徹も待ってるぜ。次のライブも決まってるだし。」
直人の言葉に、私は渋々頷いた。
いつまでも休んでいるわけにはいかない。
私は直人に連れられ、サークルの部室に行くことにした。
「お、薫! 待ってたぜ!」
賢二が嬉しそうにこちらに駆けよってくる。
なんだか部室の中にはずいぶん人がいる。何でも、ライブの後に入部希望が殺到したらしい。
「薫さん!」
もう1人、新入生の木山くんもこちらにやってきた。
彼も正式に入部したらしい。
「新歓ライブ、めっちゃ良かったです!」
無邪気な木山くんの言葉に、直人の顔が強張った。
まったく、わざとなのか天然なのか。
「でしょ? 早く木山くんも、あれくらい盛り上げられるようになりなさい。」
腰に手を当てて言い放つ私の姿を見て、直人も賢二もぷっと噴き出した。
木山くんもあはは、と笑顔になり、部室は笑いに包まれるのだった。
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