20.プレアの結界
明確な意識がないながらも、極めて強力な結界をリリィは展開した。
その結界は、人外と人外魔獣が総力を挙げて攻撃してもびくともしなかった。
「リリィには、いつも驚かされる。赤子の時は、自分が危機の時なのに無邪気に笑っていた。今度は、無意識にも関わらず、人外を寄せ付けない強力な結界を展開している」
しかし、今回は数が多い。
結界を時々抜け出して私が切りに行ったとしても、追いつかない。
何せ、何百体もの人外魔獣。
数十体ぐらいなら何とかなりそうなのだが。
「人外達をまとめて退治したい。剣ではらちが明かない。どうすれば良いか?」
ガチャガチャッ! ガチャッ! ガチャッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ここが正念場と人外魔獣達も結界に何度も噛み砕こうとしたり、爪で貫こうとしてくる。
例え、己の牙や爪が砕けようとも、手を緩めて来ない。
私が聖剣で何度も切り刻もうと、もう逃げようともしなくなっていた。
「リリィの体力的負担は、あまりないようだ。だが、それでも長くは続けられない」
しばらく、攻撃してくる人外魔獣達の様子を見ていた。
「……。そうか!」
私は、リリィに振り向き直り、こう命令した。
「リリィよ。結界を複数展開せよ。その結界で、全ての人外達を囲め!」
「はい。親方様」
「まずは、この結界を大きく広げよ! そして、一気に小さくし、散ばっていた人外達を塊単位で捉えよ!」
『?』
人外は、驚いた顔をした。
「はい。親方様」
リリィは、両手から剣を放し下に落とすと拳を握った。
次に、拳を握ったまま前に突き出しす。
そして、突き出した拳をパッと広げた。
キィィィ――ン!
聞いたことのある響きだ。
これは私の手している聖剣が、人外達を切る為時に出る甲高い音と似ている。
自分達のいる結界が勢い良く広がり、人外魔獣達が吹き飛ばされる。
そして次は、散ばった人外達捉える。
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
七つのドーム状の巨大な結界を展開し、人外魔獣達を中に捕らえた。
『リ、リーゲンダ――!』
人外が大きな声を出して怒り狂っている。
ひとつの結界内に捕らえられてしまった人外達は、何をされるのかと私達を凝視してくる。
そして、私は命令した。
「リリィよ、そのまま結界を握りつぶせ! 『花の種の大きさ』に!」
「はい。親方様」
リリィはゆっくりと手の平を握りしめていく。
「ギッッ! ギッッ! ギッッ! ギッッ――!」
最初に図体のデカい人外魔獣が悲鳴を上げる。
顔が歪み、
ゴギッ! ボキッ! バキッ! バリバリッ!
次第に小さくなっていく結界で、逃げ場がなくお互いの体で潰し合って行く。
必死に抵抗しているが、それは無駄であった。
「ギャ――! ギャ――! ギャ――! ギャ――!」
気味の悪い断末魔。
だが、私は躊躇わなかった。
『た、助けろ! リリィ――! こんなことをするな! 助けろ! お前の母は、こんなことしない!』
人外がリリィに助命を懇願して来た。
(哀れだな。そんな事を言ってでも生き延びようとするのか? 人ではない人外の癖に)
私は呆れた。
リリィはその声を聞き、握りしめる手を止めてしまった。
私は、その様子を見て、リリィに優しさが残っていると知り安堵した。
(リリィよ。お前は優しい子だな。お前の父と母を殺し、お前を暗殺者への貶めた人外の者達だぞ。そんな奴らにも、お前は情けを掛けられる子なのだな)
私はリリィに近寄り、そっと頭を撫でた。
そして。
「リリィよ、躊躇うな! 握りつぶせ! 『花の種の大きさ』になるまで」
「はい。親方様」
そして、リリィは一気にギュッと手を握りしめた。
『グゲゲゲゲェェェ――!』
ボキッ、ボキッ、ボキッ!
リリィをずっと付け狙っていた人外は、この世の物とは思えない呻き声を上げ、潰れて行った。
他の全ての人外達も、一粒の点になるまで握りつぶされた。
一体の例外もない!
全ての人外達を握りつぶし、消し去った。
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