第二章 引き継がれる使命と国の運命

7.廃墟の大神殿

 プレアとシャランジェールの行方は依然としてわからなかった。

 流石ということにもなるのだが、あいつの隠れそうなこと、しそうなこと全てを洗い出して探して回った。


 だが、見つからない。

 私は、彼女らを守ろうとするために探し回っているのだが、それが”後の皇帝”の連中からしたら、汚名挽回の為に探していると映っているらしい。

 馬鹿な連中だ。


 予想通り、プレアの転移する力、それが発見を困難にしている。

 踏み込む前まで人のいる気配があっても、もぬけの殻だった時が少なくないらしい。


 他の連中に見つからないのは良い事なのだが、長くはもたないし、プレアの体も心配だ。

 あのような特殊な能力、無尽蔵に使えるとは思えない。


 そして、もし身重にでもなっていたら、どこまで可能なのか?

 

「早く合流しなければ。二人が。一緒に付いて行った守護団の連中も危ない」


 私が合流したとて、死ぬことが少し先延ばしになるだけのことだが。


 そうして探し回っているうちに数年がたった。


 その間に”前の国”の体制は、着実に入れ替わっていた。

 民衆に分からないように。


 世間的にはプレアは大病を患い、倒れて臥せっているということになっていた。

 だから、”前の国”は、まだ生き残っていた。


 それは、私があの時出会った人でない者達が、表に現れることが出来ない理由らしい。

 

 奴らは、力ずくで奪うことを何故しないのか?


 陰に隠れて暗躍しなければならない理由が、どうもあるらしい。

 私には、その理由がわからないが。


 私は、何度も訪れた場所にいた。


 そこは、ほぼ廃墟となっていた大神殿だ。


 立ち入り禁止となり、国民も近寄る事すらできなくなっていた。

 そして、数年も経つと国民の崇拝も薄れてしまっていた。

 それが、さらに荒廃を悪化させていた。

 

 しかし、この元大神殿は、私を含めて何度も捜索している。


 私は、あの時の事を時々思い起こすように、この元大神殿にやってくる。

 

 うっすらと残る血の跡。

 朽ち果て折れた剣。

 屋根や窓は辛うじて塞がっているが、隙間から雨水が入ってきて床に水たまりが何か所か出来ていた。


「あの時は、綺麗な神殿だったのに」


 プレアと初めて出会ったあの祭壇前。

 その手前に私は立っていた。


 あのプレアが現れる時のシーンが、今更のように思い起こしていた。

 

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