俺はあなたが好きだ

さっきまでの幸せな空間が続けばいいと思ってたが、やっぱり言うって決めたんだ。


「直希さん実は…」


俺はボロボロ泣いていた、まだ肝心な事を伝えてないのに。


「俺は男なんだ、騙してごめんなさい。」


「ヒロコさん、僕は男でも好きだって」


そう言ってくれるのは嬉しいんだが、これだけでは終わらない。


「違うんだ、直希。」


直希は心底驚いていた、俺だけが名前で呼び捨てにするからだ、直希は気づいたのかもしれない。


「俺はヒロコじゃなくて、タツヒロなんだ。本当にごめん。」


涙で前が見えないが、直希も泣いているのが分かった。訳わかんないもんな、好きになった女が嫌いな男だったなんて。



「おい、ふざけるなよ。今日お前と一緒に過ごしたのか、墓場まで持っていかないといけない秘密が増えたな。」


いつもの態度に戻った、これでいいんだ。これで


「腹立つな、お前の事を本気で好きになったのも、今こうやって泣いてるのも。」


直希も同じだったのか、尚更罪悪感が湧く。初めから一思いにフッておけばよかったのにと後悔しか無い。


「けど俺今日一日、直希と一緒に遊べて楽しかった。」


「僕も、本当に楽しかったんだ。こんなこと始めてで、ずっとこの時間が続けばいいと思ってたのに、最後の最後にお前が出てきて、最悪だ。」


直希が泣きながら膝から崩れ落ちる、俺はそれを見ることしか出来なかった。


「大丈夫か?」


「お前のせいで、心が大怪我だ。初恋だったんだぞ。」


色んな小言を言われる、それでこそ直希だ。けどちょっと寂しいような気もする、心はやっぱり女なのかもしれない。


「直希さん、本当にごめんなさい。最後に私のわがままを聞いて欲しいんです。」


もうこの姿で会うことも無いだろうし、ここでの事は全て忘れてもらうから、最後に俺のやり残した事をやって終わろう。


「ヒロコさん…けど、お前」


「分かってます、でもヒロコとしてでは別れてなかったので。最後のわがまま聞いてくれますか?」


直希に優しくされる、最後の時。名残惜しいけど初めから決まってた事だから、寂しくは無いよ。本当だよ。


涙が止まらない、今日直希の前で涙を見せるのは何度目だろう。涙腺が弱すぎて困る


「ヒロコさん、僕もあなたに言いたい事がありました。それを伝えてからでもいいですか。」


「はい」


「僕は、君が好きだ。例え男でも好きだと言った。その信念は絶対曲がらない。それが例え、僕の大嫌いな男でもです!好きになってくれてありがとうございました!」


涙声で叫ぶ直希の声が、夜空によく響いた。こんな大声を出す所を初めて見た。


「直希さん、ありがとう。好きです」


俺のわがままそれは


「ヒロコさん!?」


「少しだけこのままで、いさせてください。」


俺のやり残した事は直希に抱きつく、つまりハグだ。ドラマのワンシーンのような感じになっていると言われても、カップルだと思われても構わない。これで本当にお別れだ。



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