俺からのお誘い

あの冷たくて女耐性ない、直希がナンパだとありえない。混乱する俺を後目に二人でフードコートを歩く。


「何がいいですか」


ナンパに気を取られてて、なに食べるかなんて一切考えて無かった。どうしようか、男の時はステーキ一択だったが、今の姿じゃ到底胃に収められそうにない。悩みに悩んだ末俺は


「うどんでお願いします」


体調不良の時にしか食べないうどんにしていた。大盛り無料と書いてあるが、いまいち惹かれなかったので、普通盛りにした。

ありえない。どんだけ体調が悪くても大盛りにする事だけが俺のステータスだったのに胃まで女になったのかもしれない。


「うどんいいですね、僕もさっき食べましたよ。」


自分の体の変化にショックを受けながら、直希からうどんを受け取る。


「ありがとうございます。」


「いえいえ、可愛い方に奢れて僕嬉しいです。こちらこそありがとうございます。」


ドン引きしてしまいそうになったが、その前に謎の胸の高鳴りがした。これも女になった弊害なのか、けど経験したことがある高鳴りだった。なんなんだ


「じゃぁ僕はこれで」


「ありがとうございました」


直希にお礼を言って、うどんを食べる。


「ただいま〜長い時間待たせてごめん」


幼なじみが帰ってきた、さっきまでの緊張がほぐれてリラックス出来る。


「珍しいね、いつもは肉一択なのに」


「なんかうどんの気分だったんだよ」


などと話してると、幼なじみが机にある紙を見つけた。


「なんかこれ、アドレス書いてるよ。てゆーかお金あったの?」


すぐに理解した、これは直希のアドレスだ。俺のことが嫌いだから、全然連絡先くれなかったのにこんな形で貰えるとは。


事情を説明すると、幼なじみはニヤッと笑い悪魔のような提案をして来た。


「連絡先貰ったし、奢って貰ったんだからデートくらいしてもいいんじゃない〜」


女子特有の、楽しい事があったらすぐに人を売るヤツだ。見たことはあったけど自分が経験するなんて。こうなったら引き返せない


「確かに奢られっぱなしは性にあわないしな、俺直希と遊んで来るよ。」


「デートだよ〜」


茶化すのも程々にして欲しい、俺は男だ。一時的に女の姿になってるだけであって、直希と遊ぶなんて普通の事なのに、なぜか頬が熱くなるのを感じる。いつもと扱いが違うからなのか変な感じだ。


「ほらほら、連絡先追加しましたよ〜って私が打ってやろうか。」


「いいよ自分でするから。」


「緊張してる〜」


してないと言えば嘘になる、携帯のボタンを押す指が震える。ただ一言 「奢ってくれてありがとうございます」って打てばいいだけの話なのに。いつもは緊張しないのに変に意識してしまう。


「も〜焦れったいな、私が送るよ!」


「それは俺がするから待ってくれ!」


意をけして、送った。


「もう返ってきた!早すぎだろ」


送信した数分後には返ってきた。直希が律儀なのかそれとも、俺相手だからかは分からないけど、ほんの少し嬉しい。


「早くお誘いしなよ〜、私が考えてあげようか〜」


「俺のがあるから」



「今度一緒にどこかへ遊びに行きませんか」


至ってシンプル、これを送った。するとまたすぐに返信があった。


「まだショッピングモールにいますか?」


これは、今すぐにでも行けるって言われてるようなもの。社交辞令のお誘いとかではなく本気で遊ぶ気だ。一応返信はする


「まだ、さっきのフードコートにいます。」


さぁどうなる。

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