和洋折衷の書生スタイル
和洋折衷とは和風と洋風(西洋風)を同時に取り入れることである。夏場はジーンズの後ろポケットに扇子を押し込んで歩く人を見かけるが、これは洋装に和装小物を取り入れた例。洋服に袴風のパンツを合わせたり、冬場に綿入れ半纏を羽織ったりするのも和洋折衷のファッションである。
かように和洋折衷の服装を見かけることは珍しくないが、和装に洋装を取り入れたファッションというのはあまり見かけない。そもそも和服を着る人が少ないのが理由の一つではあるのだが、せっかく着物を着ている時に、わざわざ洋装を取り入れることに意味を見出せないからなのかもしれない。
しかし、和服ベースの和洋折衷ファッションは別に奇抜というわけではない。例えば、ブーツ姿の坂本龍馬の肖像写真は有名だろう。竜馬が日常的にブーツを履いていたのかどうかは分からないらしいが、少なくともこの日、短刀を脇に差し、黒紋付の着物に縞の袴を合わせた竜馬は履物にブーツを選んでいる。
また、大正時代には書生スタイルが流行した。普通、着物(長着)の下には着物と同型の長襦袢を付けるが、書生スタイルでは長襦袢の代わりにスタンドカラーのシャツを着る。下半身は袴姿である。この時代、洋服はまだまだ高価な品で、全身を洋装で揃えることは難しかった。せめて部分的にでも洋装を取り入れたいと工夫を凝らしたのが書生スタイルだったようだ。
私は今でも袴を自分で穿くことができないが、長襦袢の代わりにシャツを着るという発想が気に入って、準書生スタイル(シャツ+着物、しかし袴は穿かない)を試していた時期がある。シャツを気に入ったのは、長襦袢に比べて洗濯が容易だからという理由である。
しかし、結果的に、準書生スタイルは良いアイデアではなかった。準書生スタイルで過ごしたのはまだ暑さの残る初秋だっただめ、動いていると汗が出る。着物の下が長襦袢ならば衿が汗を吸ってくれるのだが、シャツにはそのような衿がない(スタンドカラーのシャツなので襟もない)。そのため、気が付くと着物には結構な面積の汗染みができてしまったのだ。
着物に汗染みは付き物で、シーズンの終わりにクリーニングへ出す際は汗抜きが欠かせない。けれども、その時にできた染みの大きさは普段の比ではなかった。私は長襦袢の衿が大きな役割を果たしていることを知ったのだった。
それ以来、私は(準)書生スタイルを試していないが、ファッションとしては面白いと思っている。もし試そうと考えている人がいれば、私は寒い時期をお勧めする。
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