真冬の過ごし方

冬に着物を着ていると、しばしば寒くないかと聞かれる。見るからに寒そうだと心配してくれているのかもしれない。しかし実際のところ、寒さはさほど感じない。見えないところでしっかりと防寒対策をとっているのだ。


着物を着ない人でも同じだろうが、冬は下着を厚くする。あるいは「ヒートテック」のような発熱素材の物を着用する。これで寒さの問題はおおむね解決である。


ただし、上半身の下着には少しだけ制約がある。クルーネックとかタートルネックではなく、首元がしっかりと出るVネックが基本なのだ。これは別に決まり事という訳ではないし、着物とはいえ服なのだから自分の好きな物を好きなように着ればよいのだが、やっぱり外から見えないVネックが着物らしい選択のようには思う。だから、外気に触れる首元は寒くないと言えばうそになる。私は冷え込みが厳しい日にはマフラーを巻くことにしている。


下半身はタイツを着用する。これで十分に温かい。実際、タイツを穿けばタイツ、モスリン(ウール)の長襦袢、長着と三枚重ねなので温かくないはずがない。スカートを穿く女性ならばきっと頷いてくれることだろう。


少し頼りないのは足元で、草履や雪駄は足の甲が覆われず、やはり靴の方がだいぶ温かい。着物生活を始めた年の冬は、足元だけもこもこのスリッポンを履いていた。和服に靴とはまるで天才バカボンのようだが、これは確かに冬には威力を発揮する。しかし、別に誰かに文句を言われたわけでもないのだが、翌年からは草履に変えた。せっかく着物を着るのだから、足元も和装で揃えようと思ったからである。


その代わりと言ってはなんだが、足袋を別珍素材の物に替え、さらに二股に分かれた足袋ソックスを中に重ねることにした。こうすると寒さを感じない。本当に、全身が重ね着である。


もし、冬の寒さが気になって着物に踏み切れない人がいたとしたら、私は自信をもってお伝えしよう。冬の着物姿はまったく寒くなどありませんよ、と。

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