第15話 通知を急いで隠しているけれど、全部見えてるよ

(今から電話しない?  優香)


みんなでTikTokを見ていたときに、そのメッセージが表示される。



そしてパンジーはその通知を、慌てて指でスライドさせて画面から隠す。


慌てて隠しているが、残念ながらメッセージは全て読んでしまった。


メッセージがなくても、あんなに慌てて隠してしまっては、バレないものもバレてしまうだろう。


表情はにもハッキリと現れてしまっているし、ウソが下手な奴だ。


表には出していないつもりなのだろうが、パンジーの表情は歪んでいて、焦りの色が見えた。



元々ウソをつけるようなタイプでもないし、ウソをついてもすぐに気づかれるのがいつものオチだ。


もうこの際自分から言い出すのが早いのだが、本人は諦めていないようで、必死に頭を働かせていた。


そしてパンジーはそのメッセージが読まれていない事を信じながら、ゆっくりとみんなの顔を伺う。


俺はパンジーがどんな言い訳をしてくれるのか楽しみだった。


おそらく俺だけではなく他の奴らも気づいているのだろうが、パンジーがどう立ち回るのかを、何も言わずに待っている。


みんなも俺と同じで、パンジーがどう乗り切るのかを楽しみにしているのだろう。


パンジーは、まだバレていないことに望みを託しているようだ。


さて


どう言い訳をするのか聞いてみよう



「ちょ、なんか通知来たんだけど…… なんて書いてあった? 反射的にスライドしちゃって読めなくて… 」


パンジーはそう言って俺たちが、メッセージを読んだのかどうか探りを入れてくる。


パンジーにしては意外と賢い選択だと思った。


いつもなら、(今のはゲームの通知だったから)みたいに、パニックになって分かりやすいウソをつきそうなものなんだが、今日はなかなかに冴えている。



そんな冴えているパンジーをさらに泳がせてみようと考えている奴が、もう1人いた。


「通知? なんか来てたの? 」


松永が、わざとらしく、通知を見ていない事をパンジーに見せつけている。


ここでメッセージを見たと言ってしまえば、これ以上パンジーの苦し紛れのウソが楽しめなくなってしまう。


もっとパンジーの悪あがきを楽しみたい松永は、パンジーの通知に気づかないふりをする事で、この状況をさらに楽しもうとしているのだろう。




「 そうか見てないのか! あぶねぇ… 」


俺たちが通知を見ていないことに安堵したのか、パンジーが思わず声を漏らしてしまう。


本人も途中で自分の発言に意識が向いて、やべーって顔を見せてくれた。


俺はパンジーが一生懸命に逃げ回っていることに、笑けてきそうになるけれど、それを必死に抑える。


ここで笑ってしまうと、パンジーに違和感を与えてしまい、これ以上パンジーの悪あがきをみる事ができなってしまうかもしれない。


俺は緩みそうになる頬を引き締めて、パンジーのウソを少しずつ暴いて困らせてみることにした。







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