第4話 1月20日 YouTuberピカルに動かされる

今日は土曜日。学校は休みだ。何をしようか。友達と遊ぶ約束もしていないしすることがない。昨日読んだ本を思い出す。ピカルが絶望してからどう立ち直ったのか。それを昨日一気読みした。


絶望したピカルは友人にある人を紹介してもらう。ピカルはすぐにその人と会うことを決意する。待ち合わせ場所は普通の喫茶店。ピカルは彼を待っていた。


すると喫茶店に彼はスポーツカーで現れ、着ている服も上品なものだった。喫茶店には似つかわしくないオーラだと感じた。いかにも成功者という見た目の彼をピカルは好機の目で見ていた。


そして席について話を始める。最初は普通の雑談からだった。大した話でもなくピカルは親近感すら感じるほどであった。しかしただの雑談のまま終わるはずもなく彼はピカルにこう問いかけた。


ところで月にいくらくらいほしいの?そう言われてピカルは雑談ではなくこれからの俺を左右する話になりそうだと感じた。そして男の問いに対してピカルは、月に100万くらいあったら最高すねと答えた。


するとピカルの答えに彼はがっかりしたような残念そうな顔をした。そして言い放つ。次に成功者の彼がピカルに言った言葉がピカルの人生を大きく変えたという。彼は言った。



今の君は野球選手を目指しながらサッカーの練習をしているようなものだよ。今のままじゃ100万なんて稼ぐことはできない。これを聞いたピカルは感じたことのない衝撃を覚えた。


今までの自分を完全に否定される言葉。でもピカルは嫌悪感は感じなかった。むしろ納得していた。月に100万稼ぎたいと思いながら工場に入った。この行動はまさに野球選手を目指しながらサッカーの練習をしているのと同じだと思った。


ここからピカルは大きな進化を遂げる。彼との出会いがきっかけとなり大きな変化をもたらした。ピカルは彼の会社に入り営業成績トップをとる。そしてその手法を情報商材として販売し、あっという間に月収1000万円を達成してしまう。ここからゲーム実況を開始し、現在の実写チャンネルにかじを切り大成功を収める。


ピカルはたった一人との出会いで人生を変えてしまった。でもこれはピカル自身が変わろうと努力したからだと思った。このピカルの人生を俺は本で体験することができた。ピカルの体験は本を通して俺の経験となった。


そこで考えてみる。ピカルは月収100万円を目指しながら工場に入った。その選択は間違いだったといった。では俺はどうだろうか?。日本で一番有名になると言いながら大企業に入ろうとしている。それはピカルが工場に入ったのと同じ行動なのではないのか?野球選手を目指しながらサッカー選手を目指しているのと同じではないのか。


だったら俺が今選ぶ選択は企業の内定を蹴ることではないだろうか?その結論になる。しかし俺は企業の内定を蹴ることはできない。俺の学校のルールで一度内定した企業からの誘いは絶対だという決まりがあるからだった。


こちらからお願いしているのに急にキャンセルをするのは学校の築き上げてきた信頼を失ってしまうからだという理由だった。


そして何よりも俺はそれほどの勇気を持っていなかった。内定している企業を蹴って、そして失敗したら…。たとえルールで禁止されていなくても俺は企業を辞める選択肢は持てなかっただろう。やっぱり俺は普通の高校生で、ぶっ飛んだ考えにはなれない平凡な人間なんだと実感する。


ここでピカルのように決断することは俺にはできなかった。でも俺は何者かになりたい。その気持ちは変わらなかった。諦めたくない。だから凡人なら凡人のやり方で戦うんだ。次第にそう思うようになっていった。


まずは俺ができることをやろうと思った。そこで一番お手軽そうなせどりを始めることにした。まずはやり方を調べてみた。スマホで検索するとやり方が簡単に見つかった。


そこにはモノの値段がどのようにして決まるのかが書かれていた。需要と供給。欲しい人が多ければ価値は上がる。欲しい人の数よりも物の数のほうが多ければ価値は下がる。そう書かれていた。


そしてその需要と供給を見ることができるアプリを紹介していた。そのアプリをダウンロードしてみる。有料であることも考えていたけれどそのアプリは無料だった。アプリを起動してみる。


そのアプリはアマゾンのデータをまとめたものだった。Amazonから気になる商品の名前をコピーして、さっきのアプリにペーストする。するとその商品の情報が一気に表示された。


その商品の今までの値段の変化がグラフで表示されていた。このデータには大きく3つの情報がまとめてあった。

1つ目は 今までの価格の変化。

2つ目は その商品の個数(供給)。

3つ目は その商品が売れるまでにかかった時間(需要)。


この3つの情報を使って今後値上がりする商品を見分けているらしい。俺はこのサイトに書かれていた情報をもとに商品の仕入れをしようと思った。


とはいえ最初なので何をしたらいいのかよくわからなかった。とりあえず供給が多いと物の値段は下がると書いていたので商品数が多いものは避けた。そして最初は失敗する可能性が高いと思って、もし値段が上がらなくてもいいように俺が欲しいものを仕入れることにした。


俺はワンピースのフィギュアを仕入れることにした。フィギュアは値段が下がりにくく、せどりに向いていると書かれていた。そして値段が上がらなくてもワンピースファンの俺にとってはそのまま飾れば問題はない。


アマゾンで購入すると3日後に届くと表示された。この商品をきっかけにせどりを成功させれば次につながると思った。ピカルは稼ぐ方法を情報商材として販売した。俺もせどりを成功させれば、それを違う形でお金に変えられるだろうと思った。


購入した後は、ほかにも値段が上がりそうな商品を探したり、プレミア価格になった商品を調べ、どういうグラフの動きをしていたのかなどを調べた。値上がりしたフィギュアを中心に調べるといくつかの共通点があった。それは、

1 数年をかけて徐々に値段を上げていること

2 発売時点が一番値段が安い

3 長期的にみるとほとんどが値段が上がっている

4 出品数の増減に遅れて値段が反応している


大きく4つの共通点があった。この共通点に気が付いたことは大きなことだと思った。


4つ目の共通点の出品数に遅れて値段が反応しているという情報は特に大きな発見だと思う。出品数を見れば今後の値段が分かる。それは未来の値段を予想することができるということだ。


この方法を使えばせどりを成功させることができるかもしれないと思った。そしてこの方法でお金を稼ぐことができれば情報は大きな価値を生むかもしれない。俺は注文した商品が今後どういう値段の変化をするのか楽しみで仕方なかった。

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