第3話 1月19日放課後 YouTuberピカル!?

放課後

いつも俺は3人組で家の途中まで帰るのだが今日はなんとなく1人で散歩してから帰ることにした。時刻は午後5時。


だんだんと空が暗くなってきている。俺はそれを見ながらいつもと違う道を歩いている。ここでも何か起きろと願いながら。誰か困っている人はいないかな?あたりを見渡してみる。少し先に老人が歩いてはいるが困っている様子はない。


もし助けた相手が大富豪で何かアドバイスをくれて人生イージーモードにならねえかなー、そうやってありもしないことを考えている。何かするでもなくただ風を感じながらトテトテと歩いていた。


しばらく歩くと横断歩道が見えてきた。近くの標識には30kmの文字がある。このスピード規制だと近くに子供が通る公園や幼稚園があるのだろうか?少し先を見てみると小学生たちが元気に遊んでいる公園があった。やっぱりそうか。そこにいる小学生はみんな輝いていた。


そのまま眺めていたい気持ちもあるが不審者扱いされても困るのでそのまま通り過ぎることにした。公園を右に曲がると本屋があった。とりあえず入ってみようと本屋に足を運んだ。


本屋の入り口にレジがあり、店員さんもいた。入るといらっしゃいませと声をかけられる。それに軽くお辞儀をしてから奥に歩いていく。入り口の前にレジがある。入り口にレジがあるのは万引き防止のためだろうか?万引き犯しか考え無さそうな考えが頭をよぎる。



入り口から奥に向かうとビジネスと書かれた本棚があった。今の俺に必要な何かがここにはあるかもしれない。そう思ってビジネス書の本棚に向かっていくことにした。


そこには平積みされたいかにもおススメの本や、売れてなさそうだけれど店長のおすすめとしてピックアップされているもの、投資や転職の本など様々な種類が揃っていた。その中でも俺の目がとらえた本はYouTuberピカルの「心配すんな全部うまくいく」だった。


昔からよく知っているYouTuberで最近も動画を見たことがある人だった。この人は発言に好感度を求めない。その好感度を無視したハッキリとした物言いが僕たち視聴者を楽しませる。逆にその発言で過去に何度も炎上を経験しているけれど彼に着いている熱狂的なファンの力もあり今もトップYouTuberとして君臨している。


ピカルは日本一のYouTuberになることを目標として掲げており、それを支持するファンとで驚異的なスピードで登録者数を伸ばしている。彼を知るきっかけになった「祭りクジを買い占める」動画は現在5000万再生を突破していた。俺は彼がいかにしてここまで到達できたのか気になった。


彼の一番初めはどこで何をきっかけにここまできたのか。どうしても読んでおきたいと思った。俺は迷わずその本を手に取ってレジに持って行った。1400円です。そう言われたので俺は財布から2000円を取り出して店員さんに渡す。


お釣りの600円を受け取ってから店を出た。店を出ると空はもう暗くなっていた。風もさっきより冷たい。肌寒さを感じる気温になっていた。本屋を出てから少し進むとバス停があった。そのバス停には俺の家まで向かうバスもあったのでそこでバスをしばらく待つことにした。


帰宅

家に帰るとすぐに本を出した。この本にはどんな事が書かれているのか楽しみで仕方なかった。本を開くと最初の文字に思わず笑ってしまう。ピカルらしいと思ったからだ。


この本を手に取ったあなたは実にセンスがいい。そう書かれていた。実にピカルらしい。さらに読み進めていく。そこにはピカルの人生が描かれていた。彼は田舎に生まれた。小さい頃から自信に溢れていて友達を見下していた。しかし高校3年生なると進路を迫られた。地元の工場で働くか、あるいはニートになるかと。


流石にニートはやばいと思いピカルは工場を選んだ。もちろん彼はその選択に納得していない。ニートか工場か迫られたから工場を選んだにすぎない。彼は自分の環境を恨んだ。


俺はここで終わる人間じゃない。俺がこんな田舎に生まれなかったなら…。俺はもっとやれたはずだ。彼は絶望した。結局工場も数ヶ月で辞めてしまい、毎日ゲーム漬けのニート生活を送ることになる。


ここまで読み上げた時点でなんとなく自分と似ている気がした。高校3年生になり進路を迫られて就職を選ぶ。でも納得はいかず、ここで終わる自分に絶望する。俺と同じだ。


ピカルはここからどう足掻いて今の地位まで上り詰めたのか。俺はこの本を読む必要があると思った。これを読んだ後はどうなるのか?自分でも想像できなかった。結局この本をご飯も忘れて読み込んだ。この本が何かヒントをくれる気がしたから。

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