ハリネズミのハリー第4話
@peacetohanage
第1話
キッチンに並んでいるのは幾つかのタルトの皮。
大きいサイズはタルト、一人分のサイズはタルトレット、一口サイズはタルトレットフールです。
そう…お客の気分によって、見合ったサイズのタルトを提供しようと思っています。
ハリネズミのハリーは、ストロベリーを繊細にハケで掃除していました。
今日のおすすめはストロベリータルトです。
オープン前には黒板にしっかりと記しましたよ?
今まさに小豚が一匹、店先から店内の様子を伺っています。
小豚はお客が誰も居ない事を知り、待たずに注文が出来ると確信をしました。
カランコロン!
ハリーはストロベリーをボウルに戻します。
「いらっしゃい!さぁ、ようこそ。どこでも好きな椅子に座って」
「やぁ、ありがとう!それじゃあ、こっちのロッキングチェアに座るね?」
小豚は左から二番目のゆらゆら揺れている椅子に座ります。
「ストロベリータルトを一つ!」
「はいはい、ただ今作りますからね?子豚さん、今のお腹の調子はどう?」
「お腹ぺこぺこだよ!今朝はコーンスープしか飲んでいないのさ」
「かしこまりました。それじゃ…」
ハリーは迷わず大きいサイズの皮を選びました。
そこへカスタードクリームを渦巻状に絞ります。
「古代ローマ時代、カトラリーが発展していなかった時代では、ジャムなどペースト状の食べ物を食べ易くする為に、タルト(器)が考案されたのですよ?」
「なるほど!こぼさず口まで運べるものな?」
小豚はとんとんと右手の拳を左手の器で受け止めます。
ハリーはヘタを切り取ったストロベリーを半分にカットし、カスタードクリームの上に並べて行きます。
「タルトは、ラテン語で丸いお皿のお菓子を意味するトゥールトが語源になっているのさ」
一杯のストロベリーでカスタードクリームが丸切り見えなくなってしまうと、それが置かれたお皿を持って、すぐ様小豚の座る席へと運びました。
「さぁ、どうぞ!たんと召し上がれ」
「わぁ!目が覚めるくらいに鮮やかだな?それにこんなに大きなタルトを一人占め出来るなんて、今日の僕はどんなについているのだろう?頂きます!」
小豚はとんとんと大きなタルトを一人で全部平らげてしまいました。
そうして苺の種一つ、残しませんでしたよ?
じゃあ、ハリー!また来月も来るよ。そう言って小豚も大抵のお客と同じ様に、通りに出払ってしまいます。
ハリーは真っさらなお皿を下げて、慣れた動作で蛇口を捻りました。
これから間も無くカトラリー達も、藤カゴの中でしばしの昼寝をする事になるでしょう?
ハリーは新しいストロベリーを手に取ると、繊細に掃除に取り掛かります。
すると「おっと、これはこれは青虫さん!」
「やぁ、ハリー!ごめんね。一番小さなストロベリーを一粒頂きましたから」
「それならカスタードクリームとタルトレットフールも付け加えるべきだよ?」
おわり
ハリネズミのハリー第4話 @peacetohanage
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