第16話 アタオカ集団に狙われるとか罪な男

「えぇ? 美少女は間に合ってるってぇ?」

「おうよ。俺みたいな超絶平凡高校生には知り合いの美女が一人でもいたらキャパオーバーなんだよね」


 理解不能とばかりに顔を顰めて首を傾げる謎の少女。

 俺はそんな相手に軽口を叩きながら、この状況を打破するために頭をフル回転させる。


 目の前の美少女。

 名前も年齢も分からないが、見た目的にまだ中学生……いってても俺と同じ高校生くらいだと思う。

 ただ、彼女の髪と瞳が異質だった。


 

 まるで色素が抜けた様に白かった。



 麗華先輩の様な美しく時に神々しい白銀とはまた違い、純粋に色が抜け落ちて結果白になった、という感じでの色をしているのだ。

 それが返って俺をビビらせ、何とも言えぬ不気味さと強さを補強していた。


 全身に気持ち悪いくらいの悪寒が走る。

 現に俺の本能が、今すぐ逃げろと警鐘を鳴らしていた。


 目の前の美少女は格が違う。

 恐らく麗華先輩や朱音さんなどの最高幹部クラス……と同じが少し下。

 いや、この生徒達全員をコイツがやったなら……最高幹部すら凌駕する力を持っているのかもしれない。


 まぁ、どっちにしろ俺は余裕で瞬殺されるんだろうけど。


「ターゲット君が超絶平凡高校生? 何寝ぼけたこと言ってんのぉ? もしかしてお馬鹿さんなのかなぁ? それに私以外は皆んなブスだよぉ。それ以外は許さない」

「ほぇ……そうなんだな。じゃ、俺はここで帰らせて頂———けるわけないよな」

「当たり前じゃないのぉ。私の目的はターゲット君を捕縛して連れて行くことだし?」


 この少女の口振りからして……つまり単独犯、それも突飛的な犯行ではないと言うことか。


 単独犯であるならば、俺と面識のない奴な訳がないし、突飛的な犯行ならば俺のことなど気にするわけもない。

 ならば……彼女は何かしらの集団に与しており、俺を上からの指示で捕らえにきたと考えた方が良さそうだ。


「君さ、何者なの? それに普通に俺、クソザコだから誘拐しても意味ないと思うんだけど」

「私の名前? 私の名前は……教えないよぉ。それに———誘拐される理由は貴方が一番分かっているはずだけどぉ?」

「っ!?」


 一瞬にして俺の真横に移動していたらしい少女が、耳元で囁いた。

 咄嗟に全力で横に飛ぶ。

 汗が更に滝のように流れてくる。


 おいおい……コイツ、速すぎだろ……!

 ずっと動きを観察してたのに一瞬で見逃したんだが?

 初動すら見えないとかヤバいな……。


 この前の朱音さんとの戦いを彷彿とさせるが……目の前の少女は朱音さんとは違う。

 前回は手合わせ、今回は俺を捕らえると言ったため殺さないと思うが……もしかしたら殺される。


 俺は全身を限界まで強化し、念力を飛ばす。

 しかし、少女は俺の魔力を鬱陶しいと言わんばかりに顔を歪めて傘を一振りして一瞬で消滅させた。

 

「もう……大人しく捕まってよぉ」

「それは無理なご相談ではあるな……せめて俺が連れて行かれる所を訊くまでは教えてほしいもんだよ」

「うーん……ま、別に良いよぉ、教えて上げる」


 少女は黒のひらひらとしたスカートの裾をつかんで礼をした。

 まるで中世の貴族のように。



「私の名前は———暗王。我が組織『創世』の幹部だよぉ?」













「くっ……」

「あはははっ! もっと私を楽しませてぇ! 私、弱者が生き残ろうと必死に足掻いているところで絶望を与えるのが大好きなんだぁ!」

「それは、中々モテない趣味だなぁ」


 俺はそう言いながら、放たれる無数の毒針を机で防ぐ。

 どうやら彼女は俺を麻痺的な状態にして抵抗できないようにしたいらしい。

 

「ほんと何なんだよクソッタレが……」


 俺は逃げ回りながら思わず愚痴る。

 

 『創世』という組織だが……俺はそんな組織知らない。

 ただ、ウチの組織とは仲が悪いのだろうことがヒシヒシと伝わってくる。

 過激な犯罪集団と考えておいた方が良さそうだ。


「———何を考えているのぉ?」

「っ、この……!!」


 俺は後ろで声がした瞬間に目眩ましに念力の魔力を全身から放出させ、俺は即座に距離を摂る。

 まぁ距離を取ったところで全く意味がないんだが。


 後コイツ……楽しんでやがる。

 俺が逃げ惑う姿を見ながら楽しんでいるアタオカである。

 こう言った奴の相手はモンスターなんか比じゃないくらいに面倒でもある。


「くそッ……どうにかして隙を突かねぇと……」


 俺はそこまで考えたところで……ふと思い出した。

 


 首長に教えてもらった、魔力の能力。



 俺の魔力って……いや、流石に無理か?

 てか身体持つ……わけないか。

 それにもし出来るとしても奴が俺を視界から外してくれないといけないんだよな。

 博打が強すぎる……が、まぁどのみち俺がヤツから逃げるにはコレしか無いわな。


「何をしている……?」


 突然魔力を放出させ、たちまちそれを霧に変化させる。そんな俺の行動を見て不思議そうにしていた暗王と呼ばれる少女。

 奴の目線が俺からズレる。

 この濃い霧によって見失ったらしい。

 俺は二つの意味で口角を上げた。


 一つは奴が俺を見失ったこと。

 そしてもう一つは———。



「———【存在を消して】———」



 ———願えば、魔力が案外何でも自動でしてくれるということ。


 俺の存在が限りなく希薄化した。

 

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