第15話 奇襲

「———で、どうするのかしら?」

「あ、まだその話続いてたんですね」

「勿論よ。今日中に聞かせて貰うわ」


 そんな無茶な。


 俺が麗華先輩の言葉に対して露骨に反応を示したのか、麗華先輩が少し恨めしげに言った。


「……何よ、少しくらい恋人らしいことしてみたいのよ……」


 俺はそんなことをいう麗華先輩に言った。



「それは、せめて先生に怒られた後に言ってくださいよ」



 そう、俺と麗華先輩は勝手に学校を抜け出したと言うことで先生に絶賛怒られている途中である。

 街を守った英雄が何で怒られないと行けないんだかと思ったが、そう言えばアイツらがこの地域で出現するのは俺のせいなので、ただ尻拭いをしているだけだと気付いた。


 これで感謝でもされたらただのマッチポンプじゃないか。


 因みに俺と麗華先輩が倒した後始末は『掃除屋』と呼ばれる部署の方々がやってくれるらしい。

 彼らは組織内でも特殊な部署で、非戦闘員や退役した戦闘員が自らの意思で入るか、持ち運びや掃除に適した異能力者が送られる。

 大変だが、その代わり物凄く給料が高く、休みも多いらしい。


 組織の中では掃除屋になりたい者が多数いるらしいが……俺も正直そっちになりたい。

 戦うの怖いんだもの。


「お前ら聞いているのか?」

「「聞いてますよ、佐々木先生」」


 俺達が揃って言うと、佐々木先生———四十代のふくよかな体つきの先生がため息を吐いた。


「次からは出るなら出るで予め誰かの教師に言ってくれ……お陰で二人を探すために十人の教師達が動いたんだぞ……」

「…………」


 俺は麗華先輩を見る。

 そして目で訴えた。

 

『先輩、確か先輩が居れば大丈夫的なこと言ってませんでしたか?』

『……今回は偶々よ』


 そうまで伝えてくる麗華先輩だが……正直言って関係が浅いからか全く信じられないんですけど。


 そんな俺の意思が俺のジト目で通じたのかスッと目を逸らす麗華先輩。

 更にジト目を強める俺と目を泳がせる麗華先輩を見ながら……。



「……お前ら、本当にちゃんと聞いているのか?」

「「勿論じゃないですか、佐々木先生」」



 訝しげに聞いてきた先生に再三同じ言葉を吐いた俺達だった。


 








「———なあ、何で麗華先輩と一緒にグラウンドにいたんだ!? ズルいぞ!!」

「そうだそうだ!! 朝も何故か麗華先輩と腕を組んでたな!? どう言う関係だ!?」

「おい、教えてくれよぉぉぉぉぉぉ!! 俺も麗華先輩に興味を持ってもらいたいんだよぉぉぉぉぉ!! だから教えて下さい、柚月様!!」

「「「「「そうだそうだ!! 教えてください、柚月様!!」」」」」


 俺が帰って来た時間はどうやら五時間目が終わった休憩時間だった様で、教室に入った瞬間に雪崩の様に男共が押し寄せて来た。

 ただ、何か午前中は嫉妬の嵐だったのに今では何かイジりと言うか尊敬の念すらも感じるんだが。


「えっと……」


 俺は皆の期待の視線を一身に受けながら困った様に頬をかいた。


 流石に異能力者になれ……なんて言ったって頭おかしい奴だって思われるし……。

 てか、異能力については一般人には教えてはならないルールなので教えれないのだが。

 

 俺が理由を足りない頭でこねくり回して考えていると———突然、物凄く危険な予感がして反射的に身体強化で全身を硬くする。

 同時に身体にカツンッという音が聞こえると同時に、足元に細長い針……それこそ暗殺者がよく使う毒針の様な形によく似た物が落ちていた。


「……何だよこれ……」


 俺はそれを拾おうとして……また背筋がゾクッとした感覚に襲われ、反射的に周りを見渡して気付く。

 

 

 教室内全ての生徒が意識を失っている。



 呼吸も鼓動もあるので死んでいないのは確かだが……確かにこのクラスの生徒全員が白目を剥いて意識を失っていた。


 いや、それだけじゃない。


 休憩中であるのに、何故か全く生徒達の話し声が聞こえない。

 足音も、笑い声も何もかも。

 

 俺は心臓が煩いくらい脈動する中、身体強化を続けたまま急いで廊下へと飛び出す。

 


「う、嘘だろ……!?」



 そこには、沢山の生徒と教師が俺のクラスメイト達と同じく白目を剥いて倒れていた。

 しかも皆んな死んでいないのが、逆に相手が何を考えているのか分からなくて不気味だった。

 

「れ、麗華先輩……!!」


 俺はこの状態をモンスターではなく他の異能力者であると断定し、急いで先輩のいるはずの三年四組の教室へ駆ける。

 そんな俺の前に———。




「ここは、通さないよ———【魔力】持ちのターゲット君?」

 



 ゴスロリ服を着て、廊下だというのに黒いレースの付いた傘をさした美少女が蠱惑的な笑みを浮かべて言った。

 俺はその見た目とは裏腹に痛い程伝わってくる格上の威圧感にあり得ない程の汗をかきながら笑みを浮かべて告げる。



「ふっ……すまん、美少女には間に合ってるんだ」



 さて、どう切り抜けようかな……。


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