第9話 もう一人の最高幹部と悪い知らせ

 この組織の最高幹部である麗華先輩と一緒にいるせいか、様々な人達に


「———此処が、私達最高幹部とこの『月光』の首長しか入れない部屋よ」

「……思ったより普通の部屋ですね……まぁこれも定番で好きなんですけど」


 最高幹部とか首長だけしか入れないならもっと物凄いテクノロジーが使われているのかと思ったが……簡単に言えば円型の机が真ん中に置かれ、一つだけ明らかに豪華そうな椅子があるのを合わせると、合計11個の椅子が円状に並べてあった。

 正直テクノロジーを期待していた身としては少し期待外れだった部分はあるが、これはこれで先程とはまた違ったカッコよさがあって非常に良い。

 異世界の秘密結社とかにありそうだ。


 俺が内心興奮していると……自分の席らしい所に座った麗華先輩が眉を顰めて不機嫌そうに呟いた。


「全く……あれ程集合時間に遅れずに来てと言っていたはずなんだけれど、誰一人居ないわね」

「ま、まぁ皆さん忙しいんじゃないですかね? 俺もいきなり入ってきたわけですし……」

「何言ってるの。柚月君は世界でもたった一人しか居ない物凄く貴重な異能力者なのよ? 絶対他に渡したらいけないのに……」


 どうやら俺の身に宿ったこの力は相当貴重らしい。

 しかし、覚醒してまだ2日しか経ってないので、自分の力とするにはイマイチ違和感がある。

 

 それに、貴重な異能力者らしい俺は、今時点だとあの知性無し雑魚スライムにすら負けそうなんですけどね。

 寧ろこんな俺のためにこの組織の偉い方々が全員集合するとか、普通に止めてほしいんだけど。

 緊張でどうにかなりそうだわ。


「———あ、やっと来たわね」

「え?」


 麗華先輩の言葉におれは扉に視線を向けるも……誰かが入って来る気配はなく、部屋を見渡しても特に何も変わったところはない。

 この先輩は何を言っているんだ……と訝しげな視線を麗華先輩に向けた瞬間。


「———へぇ、コイツが【魔力】に選ばれた人間なんだ?」

「っ!?!?」


 突如俺の肩に誰かの手が乗せられ、少し低めのハスキーな声が俺の耳元から発せられた。

 俺は驚きのあまり咄嗟に肩の手を振り払って声と手の主の方へと身体を向ける。

 

 そこには———173センチの俺と同じくらいのグラマラスな美女が立っていた。

 

 現実では初めてお目にかかる真紅の髪と瞳、麗華先輩とはまたベクトルの違う恐ろしく整った顔には男優りな勝ち気な笑みを浮かべている。

 そして何より……圧倒的ボン・キュッ・ボンを体現した姿は、アニメや漫画のヒロインとタメを張りそうなくらいであり、更に白の半袖シャツとスポーツ用っぽいショートパンツという地味な服装ゆえに、物凄い破壊力を秘めていた。


 俺は男子高校生には刺激の強い魅惑の肢体から目を逸らしながら尋ねる。


「えっと……最高幹部の方……ですよね?」

「おう、よく分かった……って此処には最高幹部以上しか入れねぇんだったな。どうも、新人。アタシは朱音あかねだ。歳は24だから……大分年上だな」

「あ、はい、よろしくお願いします、朱音……あ、因みに『様』って呼んだほうがいいですか?」


 流石に呼び捨てとかさん付けじゃどうかと思い訊いてみたのだが……何故か大爆笑された。


「ハハハハハハ!! おいおいこの新人おもしれーじゃんか! 『様』なんていらねぇよ。さん付けでも何でも好きに呼びな」

「……それじゃあ朱音さんでお願いします。俺の名前は石田柚月です」

「ハハハハハ!! 柚月って言うのか! おう、柚月!! これからビシバシ鍛えてやるから楽しみにしとけよ!」

「お手柔らかにお願いします」


 そう言って頭を下げた俺の背中を笑いながら結構な力で叩く朱音さん……ちょ、痛っ……や、やめ……。


 最終的に、俺が魔力を使って身体強化を発動させなければならない程の力で叩かれたのだった。









 


「———なあ、アタシ達以外来ねぇぞ」

「……そうね、後で凍えさせてやるわ」


 朱音さんが椅子に座って憮然と言うと、麗華先輩が全身からドス黒いオーラを放って笑みを浮かべながら呪詛の様に呟いた。

 そのおっかない姿に、俺は息を呑み、朱音さんは若干引き気味で見ていた。


「おー……それは流石にヤバそうだ。どうだ、柚月は耐えられるか?」

「いや、見たことないんで分かんないですけど、多分普通に速攻で死にますよ。俺弱いんで」

「自信が足りんなあ、柚月。アタシに付いて来れたらいつの間にか強くなってっから自信持て」

「まだ一回も何もしてないですけどね。それと……」


 俺は此処でやっと、ずっと気になることを指摘した。


「———何で麗華先輩も朱音さんもそんなに近いんですか……?」


 そう、二人の距離が何故か異様に近いのだ。

 何でも、わざわざ少し間隔を開けて設置された椅子を俺が座る椅子を挟むようにギリギリまで近くに寄せている。


 いや、超絶美人二人に挟まれるのは嬉しいよ?

 いい匂いするし、眼福だし。

 たださ……俺達全員初対面なんだよね。

 正直頭を撫でる麗華先輩といい、気軽に肩組んだり背中叩いたりしてくる二人の距離感バグり過ぎなんだが。


 そんな事を思っていた俺に、二人はハモりながら言った。


「「だって、弟みたいで可愛いんだもの」」

「……左様ですか」


 俺はもう何かツッコむのは諦め、話を変えることにした。


「ところでなんですが……俺が昨日戦ったスライムって異界の生物なんですよね?」

「あ? 何だよ、もうモンスターと戦ってんのか?」

「そう言えば朱音には言ってなかったわね」


 やっぱりそうだったのか……。

 いや、完全にこの世界の生き物ではないとは思っていたけど。


「でもモンスターって、こんな俺でも直ぐに会えるくらい頻繁に現れるモノなんですね」

「……っ、あのね、心して聞いてほしいんだけれど……」


 真剣な表情で麗華先輩が言った。



「———モンスターは、貴方……正確には柚月君の魔力を狙ってやって来るわ。それも沢山」



 ……………嘘だろ、おい……。


 俺は思わず天を仰いだ。

 

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