第3話 発動の条件
「…………あ~~くそ、疲れた……」
六時間目の国語の授業。
俺はツルツル頭の鶴先生の話を左から右へと聞き流しながら、ぐったりと机に体重を預けていた。
原因は勿論、身体強化。
どうやら使うと物凄い倦怠感に襲われるらしいことが分かった。
たった一分程度しか使ってないのにこんなに酷いのは、十中八九俺の筋力とか体力とかが足りないからだと思う。
てか普通に考えて、いつもの何倍もの出力で身体動かしたんだし疲れるのは当たり前なんだけどな。
あの時は興奮し過ぎて後先全く考えてなかったわ……。
「……しゃーなしだけど……身体、鍛えてみるかぁ……」
取り敢えず一ヶ月後に体力テストがあるので、それまでに十分連続で使っても何とか耐えられる様にするのが目標だ。
それと同時進行で身体強化の発動方法もしっかり研究しないといけない。
身体鍛えても発動できないんじゃ元も子もないからな。
俺はそんなことを考えながら……あまりの睡魔に襲われ一瞬で別世界へと旅立った。
待ちに待った放課後となり、俺はルンルンで家に帰ってきた。
「ただいま~~って誰も居ないんだったわ」
俺の両親は共働きだ。
他にも姉ちゃんが二人居るけど全員成人して家を出たので、二人が帰ってくる夜十時くらいまで家には俺一人。
つまり……。
「———夜十時まで魔力使い放題……!!」
と言うことで、早速やって行くとしよう。
取り敢えず念力はもうコツを掴んだのでいいとして、問題は身体強化だ。
二時間ぶっ通しで寝たお陰かは全く知らんけど、もう既に倦怠感は無くなっているので使っても大丈夫なはず。
「えっと……身体強化!」
名前を叫ぶも……残念ながら発動せず、ただただ高校生にもなって厨二病を拗らせている痛い奴になってしまった。
……恥っず。
やべ、全然発動しねぇわ。
これほど家族が居なくてよかったと思ったことはないかもしれない。
共働きで夜遅くまで働いている両親に感謝である。
「うーん……やっぱり魔力を身体に纏ってからじゃないとダメなんか?」
昼休憩に発動した時も、そう言えば魔力を纏ってたしな。
俺は試しに魔力を全身に纏ってみる。
まだまだ見慣れない青白いオーラが俺の身体を覆うも、昼休憩同様強化された感じはしない。
ふむふむ……やはり何か他に発動の条件があるのかもしれないな。
うーん……でも俺の足りない頭じゃ他の条件がさっぱりわっかんねぇ。
「あ、そう言えば……勝手に全身を強化してくれたらいいのにって願っ———おおぉ!」
突然青白いオーラが全身を薄い膜状になって覆い、全身が燃えるように熱くなった。
そして昼休憩の時の様に全能感が俺を支配する。
「キタキタキタキタキタァァァァ!! 何だよ、俺が願えば発動してくれるのか!」
何か物凄い俺に都合がいいのな。
まぁ……俺の力だし俺に都合が良いのは当たり前か。
「っとそんなことより……【腕だけ強くなればいいのに】」
俺が試しにそう願ってみると、腕以外の部分が熱くなくなった。
どうやら俺の仮説は間違って居なかった様だ。
「まぁ限度はあるだろうけど」
しかし幾ら限度なあろうと、この平和な現代日本に住む俺にとっては十分。
念力と身体強化さえ出来れば、今後の生活に大いに役に立つだろう。
「ふぅ……流石に家の中で身体強化は危ないよな」
これで何かを壊したとなれば、母さんにも父さんにも何を言われるか分かったもんじゃない。
それにあの強化率だった余裕で家も破壊してしまいそうだし。
俺は心の中で『元に戻れ』と願うと、腕にあった青白い薄い膜が消える。
十数秒しか使わなかったお陰で『少し疲れたかな?』程度にしか疲労感を感じなかったが……一つ、とんでもないことに気付いてしまった。
「……声に出さなくていいじゃん」
何ならさっきめっちゃ心で願ってたし。
そう、気付いたことは、わざわざ声に出さなくてもいいと言うことだ。
それに気付くと、さっきから大分無駄で恥ずかしいことしていたと分かり、更に羞恥心で顔が熱くなる。
本当に此処に家族が居なくてよかった。
「……よし、次は何しようかな……」
気持ちを切り替えた俺は、ソファーに座りながら片手を冷蔵庫の扉に向ける。
そして念力を使って扉を開けてジュースを取りながら、もう片方の手をテレビのリモコンに向けて同じく念力で使う。
どちらもふわふわとゆっくり移動して俺の手元に収まった。
ふふ……まだ一日も経ってないけど、我ながら結構扱いが上手い気がするぜ。
やっぱ俺って才能あんのかな?
なんて思ったら、どうしても身体強化も使いたくなるわけで……。
「———母さん達が帰ってくるまでに戻ればいっか」
俺は適当なジャージを着て家を出ると、始め使った時より大分弱く身体強化を発動。
淡い青白く輝く膜が全身を包み込む。
そして先程よりも弱く身体が熱を帯びる。
「よし、行くか」
俺は全速力で何処か見られない所まで向かうことにした。
「———は? え、何だよこれ?」
「「「ギュルルルルル~~!!」」」
———直ぐその選択を後悔することになると知らずに。
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