第6話 魚の傾向を探れ3
――手に残る黒川さんのパンツの残り香を嗅ごうとして失敗した。
顔を合わせるのが気まずくなるには十分すぎる理由だと思う。
それなのに、黒川さんは俺と会うや否や、
「それで、私の臭いはどうでしたか?」
と、問いかけてきた
「だから、嗅いでませんから!!」
学校帰りに偶然にもアパートの廊下で黒川さんに出くわした。
「そうですか。話しがあるので部屋に入っていいですか?」
「いいですよ」
黒川さんを部屋に上げると黒川さんは、なぜかスンスンと鼻を鳴らし始めた。
「――なにしてるんですか?」
「部屋の臭いを嗅げば、その人の体臭が分かるらしいので」
「俺が言ったやつじゃないですか! 多分の話ですよ!」
黒川さんは嗅ぐのをやめて一言、
「普通ですね」
もし、臭いといわれていたら俺は泣いていたと思う。
「ところで、沢村さん朗報です。魚が釣れました。沢村さんの読み通りでした」
「本当ですか!?」
「あれから一週間、毎日洗っていないパンツを干していたんですが昨日パンツがなくなっていました。やっぱり、月曜休みの人の犯行かもしれませんね」
「そこまで合ってましたか。推理がばっちりでしたね」
「全部、沢村さんのおかげです。ほら、こんな感じでメモ帳も埋まりました」
黒川さんがポケットから取り出したメモ帳を俺に手渡した。
――この人、そんなやばいメモ帳持ち歩いちゃってるの!?
メモ帳に目を通すと、一週間前のメモ帳と雰囲気が変わっていた。そのメモ帳には下着や下着泥棒の文字は一切なく。変わりに、魚や餌などの言葉が多く見える。
例の隠語だ。
「メモ帳をもう一冊作ってみたんです。――このメモ帳は私と沢村さんしか読めません」
ある魚の項目に目が止まる。
そこには、
――新鮮な餌のみを好む。月曜の朝から昼に掛けてよく出没。(釣り仲間より情報提供あり……餌の臭いが重要とのこと)
と、書かれていた。
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