第4話

「楽しそうだなぁ、おい」


 現れたのは夕焼けを背にカラスの群れを従えて、プラチナブロンドの髪をマントのように翻している、自分たちと同年代の女の子。

 ピンクの瞳を持つ愛らしい容貌は、侮蔑の感情で冷え切って、学生服に身を包んだ小さな体からは、周囲を威圧するほどの怒気があふれている。


「あ、お前は、伯爵家の」

「うるさい。だまって、つつかれろ!」


 ギャアアアアアッ!!!


 カラスと子供たちの悲鳴が夕日の中で混じり合う。

 あまりにも突然すぎる展開に、ウィリアムは呆然とした。

 そして。


「お前、私の婚約者になれ」

「え?」

「聞こえなかったか? 恩人に対する、態度じゃないぞ」

「え、あ、はい。ごめんなさい」

「私はシャーロット・カートレット。伯爵家の長女で、一応君と同じクラスメイトだ」

「ぼ、ぼくは、ウィリアム・Vヴォーン・バンテッド……です。あの、助けてくれてありがとうございます。お礼を」

「うん。そのお礼が、カートレット家への婿入りだよ。私は君を歓迎する」


――優しいシャリー。

 初めは同情だったのかもしれないけど、僕はとても救われたんだよ。

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