第3話

  バンテッド公爵家が長男【ウィリアム・Vヴォーン・バンテッド】は、不運な子供である。


 国で二番目に偉い公爵家の生まれであり、

 王位継承権も持っていて、

 長男だったにも関わらず、


「おまえ、公爵家なのにスライムテイマーなのかよぉ!」

「ザーコ、ザーコ、ザーコっ!」

「おい。泣いてないで、スライム呼び出せよ! 一気に蹴散らしてやるからさぁ」

「…………」


【テイマー】とは

――魔力でお互いの存在を結び付けて、対象を操る【操者そうしゃ】の意。


 その中でも【スライムテイマー】とは

――この世界における、底辺テイマーの代名詞。


 世界を救った勇者一行の一人、ドラゴンテイマー【リーテ】の直系であるバンテッド家の長男が、まさかの【スライムテイマー】である。

 弟であり、次男のチャールズが【ドラゴンテイマー】の素養があると知るや、公爵家は早々にウィリアムを見限り、チャールズを次期当主にするよう注心することになった。


 弟が生まれたよわい三歳にて、ウィリアムは大人たちに勝手に見放されて、六歳になって学校に入学するころには、【底辺】【最弱】【落ちこぼれ】のレッテルにガチガチに固められてしまった。


「……うっうううっ」


 まだ10歳にも満たないガキどもに囲まれて、ウィリアムは泣かされていた。

 国家権力が理解できない子供特有の残酷さでもって、ウィリアムを存分に見下し、配慮も遠慮もなく、放課後の校舎裏で小突きまわさる日々、それがある日を境に一変した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る