第22話 戦後処理


 ライリーは今回の戦後処理で、王権を強めようとしていた。王座の間で戦後処理の結果が伝えられていた。


「今回の内乱で敵方に組した貴族は、子爵以下の貴族を全て爵位剥奪の上で、財産を没収とする。伯爵以上の貴族は、内乱に積極的に参加した貴族は爵位剥奪の上に財産を没収とし、消極的だった貴族は、いくつかの領地を没収とする。主要人物となった貴族に関しては、公開処刑とする。」


 この時、王座の間にいた貴族達はあまりにも苛烈な仕置きに騒めきが起きていた。


 しかし、反対する貴族は出なかった。反対するという事は、反乱を起こした貴族を庇うという事になり、自分が罰を受ける可能性もあったからだ。


「今回の反乱に参加しなかった貴族には、没収した財産のほとんどを分配する事で報酬とする。なお、今回の件で活躍した者達には別途、報酬を与えることとする。」


 これには貴族から先ほどよりもどよめきが生まれたが、貴族の表情は笑顔であった。


「次に没収した領地についてだが、ジャルディアン、ミャンベリー、ウェルダン地方…………これらの領地を直轄地とする。他の土地は別途、他の場で発表する。」


 貴族は王権が強化されて少し苦々しく思っているが、王太子に悟られないように予想通りだろうというような表情を浮かべていた。


 ライリーは、没収した財産を貴族に分配する事で、懐を痛めずに貴族の王権が強まる事への反発を小さくしたのであった。 


 それから何個か発表があったり、ライリーの結婚式の日程や北部への対応についてを伝え今回の反乱での貴族の処理が終わったのであった。


「はあ〜〜疲れたな。イリスとの結婚まで残り3ヶ月か。レオの反乱から今日まで長かったな。これからは私がこの国を繁栄させていかなければならないな。」


「殿下なら大丈夫ですよ。私も隣で殿下の心に寄り添ってあげますから。」


 イリスはライリーの私室に居たのであった。内乱の時には、会えなかったがゴンドリー公爵に頼み込んで、今日会えるように連れて来てもらったのだ。


「イリスが居てくれるだけで充分だよ。次会う時は、3ヶ月後の結婚式だな。それからはずっと一緒に居てくれ。」


 イリスは少し困った表情をしていた。


「私はエルフですよ。ずっとは居られないのですよ。ですが私が生きている限り、私の事を大切に思ってくれているだけで幸せです。」


「ハイエルフになった事で一番の悲しみは、愛してる人が死ぬところを絶対に見なければいけない事だ。これほどつらい事はない」


 下を向きながら少し悲しげな様子であった。


「では、殿下が大切な人を私と沢山作りましょう。そして、楽しく悔いのない時間を私と過ごしましょう!殿下が世界に羽ばたく姿を私に見せてくださいね。」


 ライリーは、何か覚悟を決めた顔つきをして上を向いた。


「ああ!!私が退屈がしないような人生を送れるようにする事を約束するよ。私の夢は、いつか世界に人族、エルフ族、ドワーフ族など全ての種族がどこへ行っても差別がされない世界を目指すよ!」


 言い終わった後、ライリーは覚悟を決めた顔つきから少年のような無邪気な表情をしており、夢を現実に変えるのではないかというような思いを他人に与えるのであった。


「ええ、殿下なら絶対に出来ますよ。これからよろしくお願いしますね」


 イリスはライリーの私室を出たのであった。


………………………………………………………


    月光の誓い


 これは後世でライリー王の演説によって明かされているイリス王妃との誓いであると言われている。


 この誓いを立てた日は、月の明かりがいつもより明るかったと言われており、そこから月光の誓いという名前がついたとしており、彼の価値観が決定づけられた大事な誓いとされている。


 この誓いは演劇などでよく上演されており、イリス王妃とライリー王の仲の良さは、世界中の夫婦の模範とされている。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る