第10話 ドラマリ要塞攻防戦 初日


 ドラマリ要塞には、オストマン帝国軍側に5000、レオ王子側に3000を配置していた。


 まずは、オストマン帝国軍の魔法部隊から魔法が飛んできた。


 この時代では、魔法が使える人の割合は人族だと、3割ぐらいだがそこから戦争にも応用できる割合は極端に下がっていく。なので、オストマン帝国軍の魔法部隊は400名と少ない。



 しかし、エルフは魔法に優れており、魔法を使える人の割合は8割を超えており、戦争にも応用できる割合も5割を超えるという魔法に愛された種族なのだ。


 アクロフ中将は若いがゆえにその事を知らなかったのである。


 エルフの事を詳しく調べていなかった事が、この戦場にどのような影響を及ぼしていくのかは、まだ誰もわからない。


 「エルフ相手に魔法勝負か。相手はよほどエルフに対して無知なのであろうな。」


エレンジア王国軍の採用基準には戦争に使える魔法を持っている事が採用基準となっている。つまり、この要塞に籠っている全員が魔法を使えるのだ。



「城壁にいる4000で魔法を撃ち返してやれ!残りの1000は弓で突撃してきた、敵兵どもを射抜いてやれ!」


 ラインフェルト元帥は、堅実な戦いで知られており、これは防衛の時に1番の真価を見せるのである。


(この防衛戦負けるかと思ったが、これなら相手に有利に戦えるぞ)


魔法戦の結果は、防衛側がほとんど全てを打ち返し、逆にオストマン帝国軍は大ダメージを与えられてしまっていた。


 アクロフ中将はここで、魔法をこのまま使うのは愚策という事に気づき、8000の兵士を突撃させ、カタパルト(投石機)を用意した。


(カタパルトを組み立てておいてよかったな,

それにしても相手の魔法師がこんなに多いとは予想外だったな)


 オストマン帝国軍はカタパルトを6機用意しており、次々と発射させていった。


 しかし、相手の魔法により阻まれたりと城壁にダメージを与えられはしたが、そこまで大ダメージとはならなかった。


 オストマン帝国軍は、8000を突撃させ、1000を城壁の上にいる敵に向かって矢を放つようにしていたが、思ったより成果はどれも上がらず、オストマン帝国軍の士気が下がるだけであった。


 かくして、初日の攻防戦は終わったのである。


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   ドラマリ要塞防衛側


 初日を大した被害も出ずに乗り切った防衛側は歓喜に湧いていた。死者は12名と少なく、負傷者も50名も居なかった。


 このわけには、ラインフェルト元帥が考えた戦術によるものがあった。オストマン帝国側にいる5000を弓兵4000、魔法兵1000に分けていた。


 その上でまずは、城壁の上に弓兵2000、魔法兵500を配置して、常時エルフの得意魔法である風の魔法を体の周りに纏わせていた。


 そして、魔法が切れそうになったら予備の兵と変わっていくというスタイルをとったのである。


 その事により、矢が飛んできても跳ね返され、逆に自分が放った矢が風の影響により、速く飛んでいき、威力や距離が向上していた。


 この戦術はエルフだけにしか出来ない戦術だが、それにより少ない死者と負傷者だけで済んだのであった。


(このまま行けば、耐え切れるかもしれんが明日になったら反乱軍のやつらも参加するであろう。そうなったらキツイな)


ラインフェルト元帥は言葉にはしないものの、明日からの攻防戦は今日より、激しさを増すだろうと予想していた。

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   オストマン帝国軍側


 アクロフ中将は頭を抱えていた。


 今日だけの損失で、死者が魔法師26人、一般兵約700人、負傷者は魔法師43人、一般兵1023人になっていたからである。


 明日からは8000人を少し超えるぐらいしか戦場に動員出来ないことになっているのである。


 しかし、明日はレオ国王陛下の軍も参加するということでそこには安心していた。


 レオ国王陛下がエルフの事を話してくださり、それによって、なぜオストマン帝国軍の魔法師が負けたのかの理由がわかった。


「今日、破城槌を兵士どもに作らせた。明日こそは城門を破ってみせるぞ。」


アクロフ中将は明日、破城槌とカタパルトを同時に使う事を決心した。


 オストマン帝国軍の士気は少し下がっているが、敵に対する慢心が無くなったのは良い兆候だと感じたのであった。


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レオ陣営


「オストマン帝国軍は落とせなかったか」


レオ王子は少し嬉しそうに言った。オストマン帝国軍であろうと、エレンジア王国軍は破れないという事に優越感を感じたのである。


「そのようでございますね」


レオ王子の際側近であるベルモルド侯爵も笑顔でレオ王子の言葉に反応した。


「明日はどういたしましょうか?明日もオストマン帝国軍だけに任せるのですか?」


ベルモルド侯爵は明日の作戦を聞いてきた。


「明日は我が軍も攻撃する。そうしないと、ドラマリ要塞は落とせない。明日は、オストマン帝国軍が本気で来るようだしな。

我が軍も全力でここを落とし、一気に王都まで攻めてくれようぞ!」


レオ王子は明日で決着をつけ、その勢いで王都までを占領するつもりであった。


 かくして、ドラマリ要塞攻防戦の中で最大の激戦となる2日目の前哨戦となった、初日が終わったのである。


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    ベルモルド侯爵


 オストマン帝国軍との国境地帯に領地を持つ貴族である。爵位は侯爵となっており、エレンジア王国内では公爵につぐ、2番目の爵位となっている。

 国境地帯に領地を持っている事から、オストマン帝国との繋がりは深く、オストマン派のトップでもある。


 オストマン帝国の初日の失敗はベルモルド侯爵にとっては誤算であったが、レオ王子にはその姿を見せず、笑顔でいた。



   ドラマリ要塞


 東部最大の要塞にして、中央部へ繋がる道があるうちの1つである。


 今回、レオ王子の陣営は2万2000となっており、この軍勢が素早く中央部まで行ける道はここしか無い。他の道を通ると、道が細く中央部まで行くのに時間がかかってしまう。


 しかも、他の道を通るとドラマリ要塞にいる軍が東部へ攻める危険性もあり、レオ王子陣営には、無視できない要塞なのである。

 

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 ドラマリ要塞と王都オーエルの位置が分かる地図を送ります。


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