第9話 ドラマリ要塞攻防戦 開戦前
ドラマリ要塞 エレンジア軍
ヴェルナーの反乱から4日経ち、イザベラの反乱から2日が経ったこの日、東部最大の要塞、ドラマリ要塞に籠ったエレンジア王国軍に対して、レオ王子の反乱軍とオストマン帝国軍の攻撃が始まった。
「武器や防具の準備は大丈夫か?」
エレンジア王国軍の総指揮官はラインフェルト元帥と呼ばれる、「鉄壁」の二つ名を持つ大陸に名が轟いた名将であった。
ちなみに、東部に向かっているルーカス大将はラインフェルト元帥の息子である。
「はっ、しっかり整っております。」
(ここで私は終わりかもしれんな。だが、出来るだけ時間を稼いでやる)
「皆の者よく聞け!!我々は誇り高きエルフの民、オストマン帝国などと言う強欲な人間の国に我らの土地を奪われてもいいのか!…いや、良くないであろう!我々はここを守りきり、向かって来てるであろう、援軍を待つ。
これは、内戦ではない!人間に奪われるか、エルフに奪われるかの聖戦なのだ!皆の者、命を賭けよ!」
ラインフェルト元帥は声を張り上げ言い終わると、兵士達からの雄叫びや歓声が聞こえて来た。
(指揮はこれで3日は持つであろう、だがそれ以上持つかは微妙だな)
要塞の中には8000の王国軍の兵士が集まっていた。
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オストマン帝国軍とレオ王子
「レオ王子にお目どうし、願えますか?」
オストマン帝国のアクロフ中将は苛立っていた。初日にドラマリ要塞に攻撃するのはオストマン帝国軍だけということが決まったからであった。
アクロフ中将が今回のオストマン軍の総指揮を担当していたが、他の指揮官である貴族のコネで入って来た連中がライリー派の軍を侮っており、オストマン軍だけで攻略出来るなどと強硬に主張したからだ。
それをレオ王子が受け入れて、初日はオストマン帝国軍だけということになってしまっていたのであった。
「はい。アクロフ中将ですね。中へどうぞ。それと、レオ王子ではありませんよ。レオ国王陛下でございますよ」
「それはすまなかった。では中へ入らせてもらう」
アクロフ中将が中へ入ると、いかにも歴戦の武人の雰囲気を出しているレオ国王陛下がいた。
「アクロフ中将、今日のオストマン帝国軍の働き楽しみにしておるぞ」
そう言い、レオ国王陛下は笑っていた。
「オストマン帝国軍の力を敵のラインフェルト元帥に見せつけてやりますので、どうぞご覧ください」
アクロフ中将は苦虫を潰したような表情を浮かべていた。そこから、これからの戦略を話し合い、天幕から出ていった。
(レオ国王陛下は、力はありそうだがとても王の器とは思えないな。オストマン帝国軍の力を見たいだけにこの初日を使ってしまうなど、愚の骨頂だ。これでは、被害が増えるばかりであろうに)
日が登ってきた12時過ぎにオストマン帝国軍はドラマリ要塞への攻撃を始めた。
この日、戦史上名高い攻城戦と言われるようになる、ドラマリ要塞攻防戦が始まったのであった。
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アクロフ中将(26歳)
人族の中でも若いと言われる年齢ながら中将まで上り詰めた、若き名将である。人族は平均年齢60歳ぐらいと言われている。今回のドラマリ要塞攻防戦では、「鉄壁」ラインフェルト元帥に対して、苛烈な攻撃を仕掛けていく。
ラインフェルト元帥(326歳)
エルフの中でも初老に入ったと言われる時期になっている。20歳の頃に軍に入隊してから、300年以上も戦場に立ってきた名将である。
「鉄壁」の名に恥じない、堅実でミスがない巧みな用兵は、弟子にしてもらいたい軍人が大陸中から集まってくる。
ラインフェルトというのは姓であり、ジークムント・ウィン・ラインフェルトが本名である。伯爵の地位を賜っているが、領地は無い。
領地が無い貴族の事を宮廷貴族と言い、その内の1人である。
ルーカス大将(134歳)
エルフの中では、老化は始まっていない全盛期の体をしている年齢である。ラインフェルト元帥の次男であり、16歳で軍に入隊している。
エレンジア王国内にいる7人の大将の内の1人であり、その中では3番目に若い年齢となっている。
なぜルーカス大将と呼ばれるのかは、父がラインフェルト元帥と呼ばれており、ラインフェルト大将だと紛らわしい為、名であるルーカスで呼ばれ、ルーカス大将と皆に言われる。
貴族や軍人は、基本的に姓の方で呼ばれるが、親しい友人や爵位、階級で上の地位にある人と同じ場合、下の地位の人は名で呼ばれる。
レオ王子(30歳)
第二王子のレオ王子は30歳と若いが、武に関しては、この国で上位の力を示している。
特に、魔法を体にかけた身体能力を向上させる魔法が得意で、近接戦に持ち込むと厄介だ。
レオ王子の派閥の時には、レオ国王陛下と呼ばれているのは、レオ王子が国王なのに、リチャード国王が王を僭称しているというスタンスをとっているからである。
エレンジア王国軍(追加情報)
エレンジア王国軍は、全てエルフ族によって構成されており、他の人種は貴族軍の中には多数いるが、エレンジア王国軍の中には誰一人としていない。
その為、ラインフェルト元帥が発言した、「聖戦」という言葉は、要塞の中にいるのがエルフしかいない為である。
レオ王子の陣営には、人族も多くおり、エルフの方が少数である。しかも、オストマン帝国軍にはエルフが一人も居らないので、人族対エルフといった見方もできる。
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ドラマリ要塞の地図が近況ノートにあります。
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