第5話 エレンジア王国の亀裂


 誕生会から2週間経ち、その間にリチャード王はイリスとライリーとの婚約を発表した。その時はとても嬉しく執務に身が入らなくなってしまい、マーチェスに怒られてしまった。


 ライリーは今現在、執務室でこの国の大将ルーカスと対面していた。



「軍の様子はどうだい?」


 軍から離れて2ヶ月以上経っていたので、ライリーが居なくなってから変化したことがあるかどうかを聞こうとしたのだ。


「特に軍の中では変わった事は起きてないですね。」


 (何も起きてないか。それなら安心だな、しかし、軍の中ではの言い回しが気になるな)


「軍の中ではというと、それ以外で変化が起きているような感じがするけど?」


 ルーカスは少し困った顔をしながら、


「そうですね………隣国のオストマン帝国の国境沿いが少し、慌ただしいように感じましたね。武器も少しずつ国境の近くの要塞に運ばれているようです。」


その瞬間、ライリーは席を立った。


「まさか、オストマン帝国が攻めてくるのか!!」


 ライリーは列強の中では、軍事力に最も長けていると言われているオストマン帝国が攻めて来るのではないかと焦った。


「いえ、そこまでの武器は運ばれてませんでした。人員も増やされておらず、商人も自由に通行しているので大丈夫でしょう。ですが念のために監視を強化した方がいいかも知れません。」


ライリーはその言葉を聞き、席に座り、少し考えてから喋った。


「わかった。なら王家直属の[暴風]に監視させよう。」


[暴風]とは、王家直属の裏の軍だ。諜報から暗殺など色々な普通の表の軍では、出来ない事をしてくれる組織だとなっている。


 この国が生き延びられる理由の一つと言ってもいいほどに優秀な組織なのである。


「それなら、安心でしょう。ですが私たちも何かあったらすぐに動けるようにしておきます。」


「ありがとう。それは助かる」


ルーカスの報告はこれで終わりのようで最後に挨拶をして部屋を出て行った。


(近頃は、平和だったからな。暴風も余裕がありそうだったし、オストマン帝国については大丈夫だろう)


 ここから、エレンジア王国の歯車は少しずつ狂っていくのであった。



………………………………………………………


       オストマン帝国


 エレンジア王国の隣国の1つ。列強に数えられている軍事力に特化している国である。

 オストマン帝国の最大の凄さは、徹底的な規律により軍は統制されている。指揮官が例え無能であろうと、自分の手足のように動かす事ができる。

 皇帝に絶対的な忠誠を軍は誓っており、どんな命令でも受け入れて、行動する事ができる。


 宗教については、イルシア教という宗教を国教としており、その宗教では、オストマン帝国の皇帝は神の代理人であり、不可侵な存在であるとされている。それ以外の宗教については、宗教税を払う事により、この国に住む事が認められている。



         暴風



 エレンジア王家に絶対的な忠誠を誓っており、厳しい訓練を乗り越えた者しかなれない。主に、国が管理しているとある孤児院で、訓練を積み、成人と同時に暴風に加入する事になっている。

 

 人数はとても多く、全てを把握しているのは暴風のリーダーか、国王と王太子しかおらず、命令もそこからしか受け付けない。

 暴風は建国同時から存在し、大陸中に暴風の諜報網が張られていると言われ、大陸のほとんどの国々から警戒されている組織となっている。


 






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