第13話 恋は甘酸っぱく、超絶苦い思い出 Part2

「ねぇ、ダイナマイトビンゴ。私たち魔族と人間は、共存できるかな?

もちろん、トラブルがまったく無いという事は無いと思うけど、

本当に分かり合えれば、きっとうまく行くと信じているの。

でも、何だか自信無くて・・・」

「心配無いよシューラウド、僕と君の愛の力で、必ずうまく行く。

何も心配する事は無いよ」

「うん、ありがと。私、頑張ってみるよ」


2人はベッドで再びキスを交した。


5日目、シューラウドの美人秘書、アルテナが王室に来る。


「シューラウド様、あの人間を信用しすぎではありませんか?

私は、どうも怪しい気がします。

あと2日契約がありますが、早めに契約を切った方が良いかと」

「何言ってるの!?彼はそんな人じゃないわ。

とても素敵な人。むしろ、私は彼を正式にこの城へ招き入れようと思っているの」


周りの部下たちは、全員驚愕した。


「いやいや、魔王様、いくら何でもそれは・・・」

「私は魔王よ。決定権は、私にあるの!」


今までは嫌々やっていた仕事も、ダイナマイトビンゴの影響もあり

シューラウドは強気に部下たちを押さえつけた。


「大丈夫、安心して!

人間との共存を進めるためには、彼の力は絶対に必要よ!」


納得行かない部下は多々いたが、魔王が強く言う事ゆえ反論はできない。

強引ながら、シューラウドは自分の望み通りな方向へと進みだした。


6日目、この日は仕事が忙しく、ダイナマイトビンゴに会いに行ける時間は無かった。しかし、どうしても会いたい想いが抑えられない。


そして、その夜。


予定よりは早く仕事が終わり、他の部下もお休みモードだったため、

シューラウドはこっそり、ダイナマイトビンゴの部屋に行く事にした。


「こんな夜中にいきなり行ったら、ビックリするかな!」


シューラウドは、心をワクワクさせながら、ダイナマイトビンゴが寝ている部屋に向かう。

すると、部屋の方から声が聞こえる。


「ん、何の声だろう?」


部屋に近づくにつれて、その声は大きくなる。

しかも、2人の声。それも、男女の声がする。


「誰か、他にダイナマイトビンゴの部屋に来てるのかな?」


そう思い、そっと部屋の扉に近づき、少しだけ扉を開けて、中を覗く。


すると、中にいたのは裸でイチャつく、

ダイナマイトビンゴとアルテナの姿があった。

そう、2人はすでに男女の関係にあった。


「う、うそ・・・」


信じられない思いで、2人の様子を見る。

これは夢ではないかと、思いこもうとしている。


「ね、ねぇダイナマイトビンゴ、あんた、この短期間で

何人もの女の子に手を出してるだろ。

他のうるさい連中に、バレたりしてないのかい?」

「大丈夫だよ。そこはうまく口止めしている。俺が見つめて言えば、

女の子は誰でも言う事聞いてくれるさ!」

「悪い男だねぇ。しかも、魔王様までたぶらかして。

魔王様、本気になっているみたいよ」

「俺はかわいい女の子なら、誰であれ平等に本気さ!」


最低な会話をしながら、激しくイチャつく2人。


(うそだ・・・)

(信じられない・・・)

(裏切られた・・・)


それまでピュアだったシューラウドの心は、次第に邪悪なものに染まって行く。


「ゆ る せ な い」


先ほどまでの天使のようなカワイイ顔が、悪魔のような表情で怒りを爆発させる。

シューラウドの体から魔力が爆発し、部屋ごと吹き飛ばした。


「な、なんだ!?」

「ビンゴ、危ない!」


アルテナはダイナマイトビンゴを庇い、消滅した。

そして、ダイナマイトビンゴは吹き飛ばされ、城外に飛ばされる。

フルモンティーの状態で。


「な、何があった!?」


当然、城内は大騒ぎになる。多くの部下がかけつけた。

そこには、怒りで暴走するシューラウドの姿があった。


「な、何があったのですか魔王様?」


しかし、シューラウドの耳には届かない。

見渡す限りを、怒りまかせに破壊していく。

城も、部下も、片っ端から破壊していく。

もはや魔王ではなく、ただの破壊神だ。


「必ず、必ず殺してやるぞ、ダイナマイトビンゴ!」


目を血走らせながら、吹き飛んだダイナマイトビンゴを探す。


「ダイナマイトクラーッシュ!!!」


ダイナマイトビンゴの必殺技が、シューラウド目がけて飛ぶ。

シューラウドは,間一髪で避ける。


「そこにいたか、ダイナマイトビンゴ!」


ダイナマイトビンゴへの殺意丸出しのシューラウド。

それもそのはず、大切な初恋が、こんな形を迎えたのだから。

「シューラウド。いや、魔王!ついに正体を現したな。

もう遠慮はしない。お前を、この場で成敗する!」


「ダイナマイトビンゴ、死ね!」


2人は強大な力でぶつかり合う。ボロボロになった城、

他魔族達の残骸。

全てを吹き飛ばす勢いでぶつかり合う。


「やるな魔王。お前を調査して正解だった。やはり、お前は

今ここで倒さねばならない相手だ」

「ダイナマイトビンゴ、殺す!」


もはや会話になっていない。

ただただ、生死をかけた激しい戦いが、そこにはあった。


かれこれ、1時間ほど激しい戦いが続いた。

両者、一歩も譲らない。

周辺は、2人の戦いにより何も残っていなかった。


そして


「ぐふ・・・・・」


ダイナマイトビンゴの腹が、シューラウドの手で突き破られる。

口から大量の血を吐き、もはや立てる状態ですらない。

今にも事切れそうな状態だ。


「はあ、はあ、これで終わりだ、ダイナマイトビンゴ・・・」


シューラウドも、ボロボロで傷だらけの状態だ。

意識を保つので、いっぱいっぱいだった。


「こ、これまでか。無念・・・」


そのまま、ダイナマイトビンゴは倒れた。

そして、動かなくなった。


その瞬間、シューラウドの目から、大粒の涙が大量に流れ出した。

そして、大声を上げて泣きだした。


「うわあああああああああああああああああああああ」


裏切られた悲しみ、全てを失った悲しみ、

そして、初恋が終わった悲しみ。

全てが一気に押し寄せたのだ。

シューラウドは放心状態の中、ひたすら歩きだし、

暗い暗い、森の中へと消えていった。


----ダイナマイトビンゴさんの過去ストーリー 完----


「・・・いや、ちょっと待て。じゃ何か?そもそも、ダイナマイトビンゴが

魔族の女を片っ端から食い散らかすようなマネをしなければ、

今も平和な状態が続いていたという事か?

勇者でありながら、悪人そのものだったということか?

魔王と言われていたシューラウドは、ピュアで人間との共存を望んでいた

素敵な存在になる可能性があったということか?」


ハラユキは怒りがこみ上げてきた。

オリビアも怒りがこみ上げてきた。

そりゃそうだ。2人は、こいつらの痴情のもつれで苦労させられたのだから。


「この世界は何なんだ、イケメンはどいつもコイツもロクな奴がいない。

作者の恨みか?リア充爆発しろか?あいつはリア獣じゃねえか!!

だったら、俺の全力全快ギャグ魔法で、あのクソカップルを吹き飛ばしてやる!」


そして、ギャグ魔法を全力で唱えようとした次の瞬間。


「やめて、ハラユキさん!」


そう言ったのは、アスタロットンだった。


「どうしたアスタロットン、なぜハラユキを止めた?」


オリビアがそう尋ねると、


「だって、だって・・・あんなイケメンを消滅させるとか、もったいないじゃないですか!!」


・・・!?


アスタロットンまでもが、いつの間にかダイナマイトビンゴに魅了されていた。


「わかる、わかるぞアスタロットン。

私も、亡くなった彼氏の事を忘れられそうだ!」


彼氏(レイ)をあれほど愛してやまないと思われたルミーラも、

気がつけばダイナマイトビンゴに魅了されていた。

すると、街からたくさんの女の人が近づいてくる。


「もしかして、あれが本物の勇者様?」

「そうよ、きっとそうよ!」

「やだ、超イケメンじゃん!!」


多くの女性が、ダイナマイトビンゴに惚れていく。

どんだけモテるんだ、この男は。

そして、ハラユキの苦労など誰も知らぬまま、

ダイナマイトビンゴが世界を救ったヒーローとして崇められていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る