第13話 恋は甘酸っぱく、超絶苦い思い出 Part1

----ではここから、ダイナマイトビンゴさんの過去ストーリーをお楽しみください。----


2年前、魔王の城内。


「君が今日から一週間うちで働く、ダイナマイトビンゴ君だね。

城の隅々まで、ピカピカにしてくれよ!」

「はい、承知いたしました!」


1人のアルバイト清掃員がいる。

それは、ダイナマイトビンゴだった。

実は、王様に魔王偵察を命じられており、ダイナマイトビンゴは

住み込み式の清掃アルバイトとして潜り込んでいた。

停戦状態とはいえ、いつ魔王軍が暴れ出すか分からない状態だったため、

状況を探るためにダイナマイトビンゴを城へと派遣したのだった。


「魔王がどんな奴なのか、そしてどんな技を使うのか、

可能な限り調査しよう。そして、王様からたっぷりと報酬をいただこう!」


清掃を実施しながら、魔王の様子を確認しようとするも、

なかなか魔王に会えるタイミングが無い。

それどころか、姿を見る機会すらまったくない。


「魔王がまったく現れない。一週間で確認が出来るのか・・・」


バイトの期間もあり、ダイナマイトビンゴは焦っていた。

何とか遭遇したいと考えていたが、魔王は警戒心が高いのか、

姿をまったく見せない。

結果、まったく魔王の姿を見ないまま、1日が終わった。


2日目、清掃場所が城の裏庭になった。ますます、玉座から遠いところを

担当する事になり、魔王と遭遇するチャンスは遠のいた。


「くそ、このままじゃ、今日も無理か」


諦めモードになったその瞬間。


「いたい!」


誰かがぶつかった。

まるで、食パン加えた女の子が街角でごっつんこしたかのようなぶつかりだった。


「だ、大丈夫ですか!?」


慌ててぶつかった人を見てみると、

そこには男なら誰もが振り向くような美女がいた。

そして、ダイナマイトビンゴは一目で恋に落ちた。

本来の目的も、忘れてしまうほど。

恋とは、人を大きく変えてしまう。※重要な任務中です。


「ごめんなさい、急いでいたので」


美女は、申し訳なさそうに言った。

すると、後ろから魔族が2匹、追いかけてくる。


「お待ちください、魔王様!勝手に出られては困りますよ!」

「・・・魔王!?」


ダイナマイトビンゴは驚愕した。

魔王というから、てっきり見た目が恐ろしい魔物だという先入観があったが、

実際は180度回転したような美女だったのだ。


「いやよ、私はもう魔王なんて辞めてやる!!」


魔王という立場である以上、様々な問題もあるのだろう。

美女の気持ちは、分からなくもない。


「あの、魔王様。ただの清掃員の身でご無礼をお許しください。

私は、ダイナマイトビンゴと申します。

魔王様は、お仕事にお疲れのようですね。

よろしければ、気分転換になるよう、私と少しお話でもしませんか?」


魔王が美女と判明した事により、ダイナマイトビンゴは

いつも通り女性を口説くモードで接する事にした。


「貴様、無礼だぞ!清掃員ふぜいが、魔王様と話をするなど言語道断!

処刑にするぞ!!」


追いかけてきた魔族の1匹が、怒りをぶつけてきた。


「やめなさい!」


しかし、それを魔王が止める。


「あなた、悪い人じゃなさそうね。いいわ、あなたと話をするわ。

この人と話をしたら、仕事に戻るわよ」

「し、しかし魔王様、どこの馬の骨かも分からぬ者と・・・」

「魔王としての命令です。二人は持ち場に帰りなさい」


そう言われると、何も言えない。

2匹の魔族は、そのまま戻っていった。


「ありがとう。ダイナマイトビンゴ?だったかしら。

ずっと仕事詰めで嫌になってたから、城を抜け出そうと思って逃げてたんだけどね。

簡単には抜け出せなかったわ。

でも、あなたが優しく話しかけてくれたおかげで、いい気分転換になったわ」

「いえいえ。あなたのような美しい方に、少しでも喜んでもらえたら私は幸せですよ」


ダイナマイトビンゴの言葉に、魔王は顔を赤らめる。

まるで、恋する乙女のように。

※イケメンだけに許される行為です。NOイケメンの方はマネしないで下さい。


「あなた、面白い人ね!私はシューラウド。一応、ここで魔王をやっているわ。

正直、だるいんだけどね」

「どうして、魔王をしているの?」

「先代魔王の父を引き継いだだけよ。それ以外理由は無いわ」

「そうなんだね。魔王を辞める事は出来ないのかい?」

「誰かにパスしようと思ったりもしたけど、父が残した最後の言葉があるから、

どうしても迷いがあるのよね」

「迷い?」

「実は、人間と共存するための会議を連日開いているの。

もう、人と魔族の争いをする時代は終わるべきだと思うのよ。

いつまでも争っていれば、お互いに損害しかないから」

「そうなんだね。素晴らしいですよ魔王様は!

見た目だけじゃなく、心も美しい。

私、ダイナマイトビンゴは、あなたのためなら何だって出来ますよ!

私は人間ですが、あなたの味方です。全てをかけて、協力いたしますよ!!」


ますます、顔を赤らめるシューラウド。


それから、二人は色んな事を楽しく語りあった。

魔王に関する情報を聞き出すチャンスだと思い、

ダイナマイトビンゴは色んな事をシューラウドに聞いた。


幼少期の頃の話や、

好きな食べ物の事、

先代魔王の事や、仲の良い部下の事、


そして、好きな男性のタイプについても。※任務と関係ありません。



潜入開始から3日目、仕事の合間を利用しては、2人はひっそりと合っていた。

ずっと堅苦しい環境にいるシューラウドにとって、

それは限られた娯楽の時間であり、幸せな時間だった。


そして、4日目の夜には、二人は男女の仲になっていた。

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