第12話 派手すぎた祝勝パレード Part4

「では、行くか」


シューラウドは、そっと地面に降り立った。

その瞬間、すごい勢いでシャルルの兄に突進した。


「ぐあああああああああああ!!!」


一瞬で、シャルルの兄は吹っ飛んだ。

いくつもの壁を貫く勢いで吹き飛ばされた。


「役立たずの筋肉だな、その程度とは」


そして、アスタロットンを睨みつける。


「ひっ!!・・・」


アスタロットンは、恐怖で動けなかった。

だが、シューラウドは容赦なく殺気を向けて来る。


「みんな、逃げて!」


一緒に来た子供たちに、アスタロットンは叫ぶ。

そして、再びシューラウドの方を向くと、目の前にシューラウドが立っていた。


「よそ見はいかんぞ。魔族のアイドルよ」


そして、アスタロットンの腹部にひざ蹴りを入れる。


「ぐふっ!!」


アスタロットンはお腹をかかえながら、その場にうずくまる。


「お姉ちゃん!」


子供たちが、心配そうにアスタロットンを見つめる。


「あれはお前の兄妹達か?」


シューラウドは、子供たちを見る。


「このままだと、お前の兄妹達が私に好き勝手されてしまうぞ。

どうする?アイドル」

「お・・お願い、や・・めて・・・」

「ならどうする?

私を倒すか?

それとも、あのガキ共が惨殺されるシーンでも眺めるか?」


このままだと、子供たちが危ない状況だが、

アスタロットンはダメージで動くのも困難な状態。


そこに、何かが飛んできた。

その飛んできたものから、煙が出る。


「むっ!?」


煙がモコモコ出る中、ルミーラはアスタロットンを担ぎ出した。

そして、一目散に逃げ出す。


「あの魔王、思いのほかやっかいね」


しかし、ルミーラが逃げ出した先には、シューラウドがいた。


「なっ!?」


確実に逃げ出したと思っていたルミーラ。

しかし、シューラウドには読まれていた。


「それで逃げたつもりか?」


じわじわとルミーラに近寄ってくる。


「来るな!それ以上近づいたら、この強烈な毒入り爆弾をあんたにぶつけるよ!

この毒はね、最強の毒草、ハロンボットの草から取ったものさ。

食らえば、地獄の苦しみが待ってるよ!」


少しでもシューラウドをびびらせようと踏ん張るルミーラ。

その時、シューラウドは何かを服の中から取り出す。


「この草の事か?」


なんと、シューラウドの手に持っていたのは、ハロンボットの草だった。


「この草は猛毒なのか?では、試してみるか」


そう言うと、シューラウドはハロンボットの草をムシャムシャと食べだした。


「そ、そんなバカな・・・」


開いた口が塞がらなくなるほど、ルミーラは驚愕した。

それもそのはず、世界最強の毒を持つ草を、美味しそうに食べているのだから。


「う~ん、美味だ。これは人間にとって毒なのか?

私は大好物のおやつなんだがな」


人間だけではない。ほとんどの生物はこの草の毒で

死に至るレベルのダメージを受ける。

しかし、シューラウドの毒耐性はケタ違いだった。


「さて、その爆弾を私にぶつけるのか?なら、毒の巻き添えを食らうのは、

むしろお前の方じゃないのか?」


爆発はやや控えめに作っている爆弾だが、その可能性は十分ある。

いや、それ以前にシューラウドに毒が効かないなら、ただのオモチャに過ぎない。

目の前の恐ろしい敵を前に、ルミーラは足が震えだした。


「ずいぶんと震えているな。心配するな、すぐに震えを止めてやる」


じわりじわり、シューラウドはルミーラに近寄る。

ルミーラは、恐怖で逃げ出す事も出来ない。


「どうした?逃げないのか?まあ、逃げても無駄だがな。

これから、たっぷりと恐怖を味あわせてやる」


ルミーラは、この絶望的な状況に為す術が無い。


「ダメだ。終わった・・・」


目をつむり、死を覚悟したルミーラ。

その時。ルミーラの目の前を剣が振り下ろされる。


「くそ、外したか!」


そこにいたのは、かけつけたオリビアだった。

間一髪のところで、ルミーラを助けた。


「ルミーラ、こいつは私にまかせて、アスタロットンと一緒に

子供たちのところへ行け!」

「・・・わかった。オリビア、死なないでね」


そう言って、ルミーラは子供たちのいる場所へと走っていった。


「美しい友情だな、オリビア。そして勇ましい。

お前が男に生まれてこなかった事が悔やまれるな」

「本当に残念だ。私が男なら、お前を一瞬で私に惚れさせて、

私の従順なペットにでもしてやるがな」


軽口叩くオリビアだが、シューラウドの表情はより硬くなる。


「どうだオリビア、考え直す気は無いか?

お前の戦闘力は本当に素晴らしい。

私の部下になれば、その力を思う存分発揮する事が出来るぞ。

悪い話ではない、もう一度よく考えてみろ」

「私を飼うつもりなら、スーパーセレブ生活を保障してもらわんと

無理だな。毎日贅沢生活を約束してくれるなら、考えてやってもいいぞ」


数秒間、沈黙が走る。


「もったいないな。その勇ましさも気に行っているのだが、残念だ。

では、ここで死ぬがいい!」

「死ぬのはお前だ、クソ魔王!!」


オリビアは、シューラウドに向かって行く・・・のではなく、

高くジャンプした。

すると、オリビア後方から大きな光の球が飛んできたのだ。


「な、なんだこれは!?」


ふいを突かれたため、避け切れずに光の玉を受け止める。

しかし、その光の玉は想像以上に威力があり、シューラウドは徐々に

押されていく。


「いったい、何だこれは!?」


光の玉をどうにかしたいが、受け止めるのが精いっぱいな状態。


「かかったなシューラウド、他の奴に気を取られている間に、

ハラユキに光の魔法を詠唱させえていたのだ!」

「ふざけるな、たかがギャグ魔法に、これほどの威力など」


ではここで、ハラユキが光の玉を詠唱する様子をご覧ください。


「お日様ポカポカ良い天気!光が差し込み洗濯日和!

みんも笑顔でピクニック、広い野原で弁当食べたら

食あたりして即病院!お医者さん、頼む、オラに薬を分けてくれ!

もらった薬は胃腸薬。試しに飲むと頭痛薬。

おい、医者!薬が違うじゃねぇか!これじゃ回復出来ないよ!

医者は代わりの薬を渡す。これならきっと回復できる。

試しに飲んだら精力剤。ギンギンムラムラ大噴火!

おい、医者!ピンクなお店はどこにある?

我慢に我慢を重ねたら、最後に一つの薬をくれた。

試しに飲んだら強力下剤。

我慢は出来ずにケツからボーーーーーン!!!!」


以上。ハラユキの究極光魔法詠唱のコーナーでした。


「ふざけるな!光とほぼ関係無いだろ!!アホか!!!」


見事なツッコミを入れるシューラウド。しかし、光の玉の勢いは止まらない。


「く、くそーーーーー!!!」


そのまま光の玉に包まれ、高く吹き飛ばされて大爆発。

シューラウドの姿は消えた。

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