第11話 魔王はナルシストなクソ野郎 Part3

「くそっ、そんなもの、切り崩してやる!」


オリビアは再び、アンボニーに攻撃を仕掛けるが、剣がまったく入らない。

とても頑丈なバリアだった。


「くっくっくっ、これはクリスタルの魔力を利用し、強力なバリアを作る事が

出来るのだ。おかげで、こちらから攻撃は出来ないがな」

「攻撃が出来ない?それじゃ、お前はただ防御に全振りしただけじゃないか」


ハラユキの言う通り、攻撃出来ないのであれば、バリアの魔力が尽きるまで待てば

良いのではと考えた。しかし、


「確かに、このままではいずれクリスタルの魔力は尽きる。

だが、俺は保険をかけておいた。」

「保険だと?」

「ああ、俺がこのバリアを張ると同時に、この城内で大爆発が起きるよう

トラップを仕掛けておいたのだ」


すると、城が徐々に揺れ始めていた。

いや、城が崩れ始めたというのが正しいか。


「おい、どうゆうことだ?そんなことすれば、城も壊れるぞ!」

「ばかが、こんな城など潰れても、別に何も困りはせん。

かくまってくれる女も山ほどいるしな。

それに、貴様らこそ逃げられんぞ。

この城は正門以外出る所は無い。それに、正門もレメシスによって

完全封鎖してもらっている。だから、お前たちは絶対に脱出は出来ん。

そう、大爆発を起こせば、俺以外は絶対に助からんのだ」


城は、正門以外は窓も一切無い。特殊なブロックで作られた城のため、

剣や魔法では破壊出来ない。


「くそっ、どうすれば・・・」


オリビアは出来るだけ冷静に考えるが、打つ手を思いつかない。


「いや、まだ方法はある」


ハラユキが、いつになく真剣な顔で言う。


「俺の、全属性魔法なら、奴のバリアを吹き飛ばせる可能性がある」

「どういう事だ?」

「あいつは、かつての幼馴染を利用し、城を見えなくする仕組みを作った。

それは、奴の持つクリスタルの力だ。

そして、その仕組みのコアとなる黒い花に全属性魔法をぶつけて、封印は解かれた。

つまり、奴の持つクリスタルの魔力には、俺の使う全属性ギャグ魔法が

効果的なのかも知れない」


アバウトな発想だが、今は他に方法が無い。


「そうだな、バリアを張っている以上、あいつは攻撃出来ない。

今なら、全力のギャグ魔法を放てるはずだ。

まかせたぞ、ハラユキ!」


そして、ハラユキは大きく息を吸い込み、唱え始める。


「氷のまなざしで俺を見て!心と顔から火を噴いた!

胸キュンするよに稲妻が走り、股の間からスポポポポーーーン!!!!」


ハラユキの股下から、今までに見た事無いほどのすごい光のレーザーが

アンボニー目がけて放たれる。


「ばかめ、そんな攻撃など、俺のバリアでは無力なんだよ!!」


バリアは想像以上に強力だ。崩す事は不可能なのか・・・

と、思った矢先、アンボニーのバリアにヒビが入る。


「な。なに!?」


ビキビキ、ビキビキとヒビが立て続けに入り、

徐々にバリアは壊れ始める。


「バ、バカな、あり得ない。俺の、俺様の最強バリアが、

こんなふざけた魔法なんかにいいいいい!!!」


そして、ついにバリアが破壊された。


「ぐああああああああああああああ!!」


アンボニーは大ダメージをくらい、フラフラの状態だ。


「終わりだ。勘違いイケメン野郎!」


オリビアは、猛突進でアンボニーの胸に目がけて剣を突き刺す。

そして、そのまま城の壁まで押しつけた。


「ぐ、ぐはっ・・・俺が、こんなザコどもに・・・」


アンボニーはそのまま倒れ、完全に息を引き取った。


「やった、やったぞ、魔王を倒したぞ!!」


そう、ハラユキとオリビアは、ついに魔王を討伐し、最大の目的は果たされたのだ。

しかし、城の様子が変わらない。

徐々に、所々が爆発しだす。


「魔王を倒してもダメなのか!?」

「ハラユキ、すぐに入口へ戻るぞ!」


爆発を避けながら、入口まで向かうが、入口が完全に封鎖されている。


「くそっ、このまま死ぬのか・・・」


その時、レメシスが2人の前に現れた。


「レメシス、お前、生きていたのか!?」

「安心しろ、お前たちを攻撃したりしない」


そう言うと、レメシスは入口の扉に手をあて、力を込める。


「開門!」


すると、入口の扉が開いた。


「レメシス、お前・・・」

「行け、勇者たち。お前たちは、魔王を倒した英雄だ。

こんなところで、死んではいかん」


レメシスは、穏やかな顔で2人に言った。

そして、2人は城から脱出する。

しかし、レメシスは出てこない。


「何をやっているレメシス、お前も早く来い!」


しかし、レメシスは動こうとしない。


「いいんだ、私は。

魔王を愛したなどと言ったが、あれは嘘だ。

私はただ、魔王の力が怖かった。

私は、奴に従うしかなかった。

弱いんだよ、私は」

「レメシス・・・」

「私は、ここで魔王と共に眠ろう。

楽しかったよ、オリビア。最後にもう一度、お前を・・・」


そう言ったあと、レメシスは城の中へと戻って行った。


「よせ、レメシス!早く来い!!」


オリビアは必至でレメシスに向かって叫ぶ。


「よせオリビア、早く城から離れないと、爆発に巻き込まれるぞ!」


オリビアはうつむきながらも、ハラユキと共に城から距離を置く。

そして、城は大爆発を起こした。


「オリビア・・・」

「・・・ここから抜け出すぞ、ハラユキ」


エビルソイルから抜け出すため、

アンボニーの持っていたペンタブラックのクリスタルと

他3つのクリスタルを使い、このエリアを包んでいる力を解放した。

そして、無事に元の場所へと戻る事が出来た。


「やったな、オリビア。ついに、俺達の戦いが終わったんだな!」

「・・・ああ、そうだな」


オリビアの表情は、どこか悲しみに満ち溢れているように見えた。

アンボニーがクリスタルを拾っていなければ、

このような結果にはならなかっただろう。


「行こう、ハラユキ。みんなが待っている」

「そうだな、行こう!」


二人は、王のもとへ無事に魔王討伐が完了した事を報告した。

そして、国のみんなは大喜びした。


対象エリアを全て攻略し、これで平和が訪れる。

街の人々も、喜びに満ち溢れている。


その光景を見て、オリビアも笑顔を見せた。

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